DX(デジタルトランスフォーメーション)とは 定義や必要性・企業の課題を解説
目次[非表示]
- 1.DX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か
- 1.1.DXの定義
- 1.2.ビジネスにおけるDXの定義
- 1.3.経済産業省によるDXの定義
- 1.4.日本におけるによるDXの現状
- 2.DX実現に向けたプロセス
- 2.1.デジタイゼーションとは
- 2.2.デジタライゼーションとの違い
- 3.DXはIT化とどう違う?関係性について
- 3.1.IT化の意味
- 3.2.DXとIT化の違い・関係性
- 4.DX推進におけるポイント
- 5.様々な業界のDX成功事例
- 5.1.事例①:セブン&アイホールディングス
- 5.2.事例②:東日本旅客鉄道株式会社
- 5.3.事例③:アサヒグループホールディングス株式会社
- 6.DX成功のための共通点・ポイント
- 7.DX人材を育成する法人研修はリンクアカデミー
- 8.記事まとめ
近年、DXという言葉が広く社会に浸透するようになりました。ビジネスの領域でも大きなトレンドとなっており、「自社でもDXを推進する必要があるが、何から着手するべきかわからない」といった危機感を覚える企業も多くあるのではないでしょうか。
本記事では、曖昧になりがちなDXの定義から、企業がDX推進するにあたって必要なポイントや事例を紹介します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か
DXはDigital Transformationの略称で、「デジタルトランスフォーメーション」と呼ばれます。(TransformationはよくX-formationと略されるため、D「X」となります)
Transformationは「変化」「変形」「変質」といった意味を持つ言葉であるため、直訳すると「デジタルによる変化」となります。概ねは「デジタル技術による社会にあるシステムの抜本的な変化」だと言えますが、様々な定義の仕方があります。
DXの定義
まずはDXという言葉が提唱された当初の定義を見てみましょう。DXという言葉は、2004年にスウェーデンのウメオ大学の情報学・コンピューティング学の教授であるエリック・ストルターマン氏が提唱したと言われています。
当初彼はDXの捉え方を下記のように提唱しました。
The digital transformation can be understood as the changes that the digital technology causes or influences in all aspects of human life.
(人々の生活のあらゆる側面に、デジタル技術が引き起こしたり、影響を与える変化のこと)
この時点では現在主流になっている「良い影響」や「良い変化」というイメージではなく、あくまで「(良し悪しは関係なく)人々の生活が受ける変化」とされています。
ビジネスにおけるDXの定義
2004年にエリック・ストルターマン氏が提唱した後は、企業、自治体、行政のそれぞれで解釈がなされてきました。特にビジネスにおいては「デジタル・ビジネス・トランスフォーメーション」という括りも存在しており、スイスのビジネススクールIMDの教授でもあるマイケル・ウェイド氏はビジネスにおけるDXを
「デジタル技術とデジタル・ビジネスモデルを用いて組織を変化させ、業績を改善すること」
と提唱しています。
DXが提唱された当時に比べると、「DXは組織や個人が戦略的かつ主体的に引き起こすもの」というイメージが一般的になってきています。
経済産業省によるDXの定義
経済産業省が公開している「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」では、
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
と定義されており、日本におけるDXの対象は「社会」から「企業」がメインになっています。
日本におけるによるDXの現状
国を挙げてDXの推進が行われていますが、経済産業省が「DXレポート2」で公表した内容によると、DX推進自己診断に回答した企業約500社におけるDX推進への取組状況を分析した結果、実に全体の9割以上の企業が「DXにまったく取り組めていない(DX未着手企業)レベル」か、「散発的な実施に留まっている(DX途上企業)状況」であることが明らかになりました。
これに加えて、自己診断結果自体を提出していない企業が多数存在していることも示唆されているため、日本企業全体の「DXの推進度合い」と共に「DXへの関心自体」も高まっていないことが分かります。
また、総務省は「情報通信白書」の中で、国際経営開発研究所によるデジタル競争力ランキングの結果を公開しています。対象である63カ国・地域の中で日本の順位は低下傾向にあり、2020年時点では27位という結果になっています。一方で、同年でシンガポールは2位、香港は5位、韓国は8位であり、他のアジアの国が上位に位置していることから日本はアジア諸国の中でもデジタル競争力が低いことが分かります。
(出典:デジタル競争力ランキングにおける我が国の順位の推移)
DX実現に向けたプロセス
経済産業省が公表した「DXレポート2」では、DXは「組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化、“顧客起点の価値創出”のための事業やビジネスモデルの変革」と位置付けられています。
そしてDX実現のプロセスとして、「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」があります。これらの言葉は、似ているため混同されがちですが、それぞれの意味合いを正確に理解することで、DX実現に向けたプロセスをより明確にすることができます。
(参考:DXの構造)
デジタイゼーションとは
DX化に向けた最初の段階であるデジタイゼーションとは、「アナログ・物理データのデジタルデータ化」です。ここで、「データ」は「情報」という意味で使われています。
例えば、
・紙にペンで書いた文章をWordにすること
・フィルムカメラで撮った写真をデジタルの画像データにすること
などがデジタイゼーションに当てはまります。
デジタライゼーションとの違い
次の段階であるデジタライゼーションとは、「個別の業務・製造プロセスのデジタル化」です。例えば、
・紙の本を店頭で販売するしてたのを、電子書籍をウェブストアで販売する。
・紙の契約書を郵送して印鑑を貰っていたのを、電子契約サービスを利用してインターネット上で契約する。
というようなものがデジタライゼーションと言えます。
これらから段階を進めて、
作者の作品タイプと顧客の指向性のデータを蓄積し、広告業者を介さずに直接マーケティングを行えて、作者が顧客の好みを直接知ることができる仕組を作る
というように、デジタル技術を利用して、ビジネスの転換を実現したり、新たな価値を想像することで、DXが実現されます。
DXはIT化とどう違う?関係性について
デジタイゼーション、デジタライゼーションと並んで混同されているのが、「IT化」です。こちらについてもその意味とDXとの違いを見ていきましょう。
IT化の意味
そもそもITとはInformation Technologyの頭文字を取ったものであり、「インターネットやコンピュータを駆使した情報技術」を意味します。そのため、IT化とは「既存のアナログなプロセスを、デジタル化すること」を指します。
IT化は、業務プロセスやビジネスモデルを大きく変えるのではなく、既存のプロセスをデジタル技術により効率化することが主な目的になっています。
そのため、
・連絡手段が手紙からメールになる
・紙でとっていた顧客アンケートを、アンケートアプリでとるようになる
といったことが当てはまります。
DXとIT化の違い・関係性
IT化の意味からも分かる通り、特に企業において考えると、IT化は「既存の業務プロセスの効率化」であり、DXは「ビジネスモデルや企業のサービス自体の変化」という違いがあります。また、「IT化はDXを実現するための手段である」といった「手段」と「目的」の関係が両者にはあると言えるでしょう。
「DXを目指さなければ、IT化に意味は無い」ということは決してありません。既存の業務プロセスでいつも時間・工数がかかっているものを特定し、IT化することで従業員の業務の負担は減り、他の必要な業務に時間を割くことができるでしょう。これは企業にとっても従業員にとっても大きなメリットです。
一方で、IT化においてもDXにおいても手段先行になることはおすすめしません。「DXをするためにとりあえずツールを導入する」という行動をとってしまうと、それを使うことにむしろ時間や労力を取られてしまい、全体的な生産性は停滞ないしは低下してしまう可能性があります。きちんと目的を定めて検討することが大切です。
DX推進におけるポイント
それでは、企業がDXを推進するために、具体的にどの様なアクションが大切になってくるのでしょうか。「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」や「DXレポート」を参考にしながら、ポイントを紹介していきます。
経営戦略の明確化
まず、「経営戦略の明確化」が必要になることが挙げられます。企業経営においては時間や人員、お金といった資源は有限です。そのため、目的が曖昧なまま施策を講じてしまうと、投資した貴重な経営資源に対する効果が薄くなってしまう可能性があります。
そのような事態を防ぎ、DXを効果的に推進するためには
・市場の動向を調査し、今後起こりそうな変化や生じてくる脅威を見極める
・その状況の中で、自社のビジョンから照らしてどのような状態になっていたいかを明確にする
・どの事業分野で、どのような価値を生み出すことを目指すかを決める
・それを実現するためにはどのようなビジネスモデルが必要か
・ビジネスモデルの構築にはどのようなテクノロジーが必要か
といった経営戦略をしっかり考え、経営層や幹部、従業員で共通認識をとることが不可欠です。
また、DXは企業の変革であるため、リーダーである経営トップの強いコミットメントが重要です。経営トップのコミットメントが無い変革は多くの場合上手くいきません。そのため、上記のことを考えることで意志が固まり、それを社内で伝えることでコミットメントは伝わっていくでしょう。
システムの構築
また、DXを実現する上で基盤となるシステムの構築も課題になります。10年、20年以上前に導入したシステムがある場合も少なくありません。業務を遂行するためにカスタマイズを重ねたり、様々なシステムを導入したりした結果、全体のシステムの構造が大変複雑になっているケースもあります。
加えて、「いつも使ってはいるけど、どんな仕組みになっているかは誰も知らない」「このシステムを作った人はすでに退職してしまった」というように、そのシステムの中身がブラックボックス化してしまっているため改修が困難であることも多く見受けられます。
1つ1つのシステムを見直したり、必要に応じて外部の専門家のサポートを得たりしながら一貫性のあるシステムを構築することが重要です。
DX人材の育成
企業がDXの推進を実現するためには、そもそもシステムの刷新やテクノロジーの活かし方を考えられるDX人材が必要とされています。DX人材とは「ITに強い人材」というだけではなく、
・DX推進部門におけるデジタル技術やデータ活用に精通した人材
・各事業部門において、業務内容に精通しつつ、デジタルで何ができるかを理解し、DXの取組をリードする人材
だと言われています。
これまで、このようなDX人材を中途採用することによって、カバーする企業も多くありました。一方で、IT関連人材の中途市場の相場が高止まりしており、中途採用してもカルチャーフィットするのに時間がかかるという課題が発生しているのも現状です。企業がDXを推進するためには、一部の人材だけでなく、全体的なリスキリングが必要です。
そのなかで、個人の役割やレベルを正確に把握したうえで、企業が主導となり、それに応じたレベルや内容の学習機会を提供することが求められてきます。
2025年の崖
企業のDX推進には多くの課題がありますが、これらが解決されないままだと日本では大きな損失が生じると考えられています。経済産業省ではこれを「2025年の崖」と名称しており、
・既存システムの複雑化・ブラックボックス化
・経営者がDXを望んでも、経営改革に対する現場サイドの抵抗の発生
を解決できないことによって、2025年以降「最大12兆円/年」の経済損失が生じると指摘しています。
様々な業界のDX成功事例
企業における課題は様々であり、それが解決しないことによる損失も大きなものです。しかし、着実にDXを推進している企業も存在します。そのような企業の事例を参考にしつつ、DXのイメージを少しずつつけていきましょう。
事例①:セブン&アイホールディングス
コンビニエンスストアや総合スーパーを中心としたホールディングスである、セブン&アイホールディングスでは、その幅広い事業のシステムやデータを有効活用し、包括的な業務変革を目指しました。
・「グループ共通のプラットフォームの構築」や「エンジニアの採用・育成」を推進するDXを推進する組織を立ち上げ
・グループ横断でのDX施策をまとめた「グループDX戦略マップ」の策定
に取り組み、「グループ各社のECビジネスにおける配送効率の最適化」を実現するための「ラストワンマイルDXプラットフォーム」を構築しました。
(出典:「DX銘柄2021」に初の選定」)
事例②:東日本旅客鉄道株式会社
略称である「JR東日本」の名で親しまれ、鉄道事業や商業施設の運営、不動産事業などを展開している東日本旅客鉄道株式会社では、新型コロナウイルスの蔓延に伴い「生活における「豊かさ」を基点とした新たな価値創造」を目指しました。
移動のための検索・手配・決済をオールインワンで行うことができる「モビリティ・リンケージ・プラットフォーム」を構築することで、列車の遅れを加味した「リアルタイム経路検索」や「リアルタイム列車混雑状況」を提供しています。
社会の意識の変化に伴い、「移動が当たり前であり、必ず利用される立場」から、「いかに自社での移動が魅力的かを伝えて、選ばれる立場」へとDXを実現している事例だと言えます。
(出典:「JR東日本ニュース」)
事例③:アサヒグループホールディングス株式会社
大手飲料・食品メーカーであるアサヒホールディングス株式会社では、「稼ぐ力の強化」「新たな成長の源泉獲得」「イノベーション文化情勢」のための成長エンジンと位置付けてDX推進を行いました。
・DXを推進する組織の新設と、グループ全体の経営戦略と連携させたDX戦略の策定
・国内536名の従業員が受講する「新規事業計画」「データ活用による具現化」「テクノロジーによるビジネス課題の解決」をテーマにした教育プログラムの実施
・各事業会社で保有する顧客データの統合によるデータ分析基盤の最適化
に取り組んでおり、システム構築とDX人材の育成を推進しています。
(出典:「「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2021」選定」)
DX成功のための共通点・ポイント
ご紹介した事例でも共通点を感じられたかもしれませんが、DX成功のためにはいくつかのポイントがあります。代表的なものをご紹介するので、これらをご参考にして自社のDXで抑えることをご検討ください。
・DXの目的の明確化:自社のビジネスモデルを加味した上で、DXで何を実現したいかを明確にしている
・DX人材の育成・採用:デジタルを活用できる人材育成に力を入れており、推進者を増やしている
・DX人材の定義:デジタルに関するスキルだけではなく、ビジネススキルも同時に重視している
・DX専門の組織づくり:推進するための組織を作り、企業としてのDX推進力を高めている
・システムの構築:システムを見直し、既存のデータを有効活用できる手段を講じている
特にご紹介した3社においては、「DXの目的の明確化」「DX人材の育成」「システムの構築」が共通しています。
DX人材を育成する法人研修はリンクアカデミー
リンクアカデミーは「あなたのキャリアに、本気のパートナーを」をミッションに掲げて個人が「学び」を通じ自らのキャリアを磨き上げられる場を目指しています。
そのために
・㈱アビバが提供してきたパソコンスキルの講座提供
・大栄教育システム㈱が提供してきた資格取得を支援する講座
・ディーンモルガン㈱が提供してきた「ロゼッタストーン・ラーニングセンター」のマンツーマン英会話レッスン
といったキャリアアップに関するサービスをフルラインナップで展開してきました。
この実績と経験を活かして、
・内定者・新入社員の育成
・生産性向上
・営業力強化
・DX推進
といった幅広い課題に対してもソリューションを提供しています。
記事まとめ
DXとは特に企業においては、「デジタル技術とデジタル・ビジネスモデルを用いて組織を変化させ、業績を改善すること」をさします。そして、このようなビジネスモデルの変化に、いかにスピーディーに対応できるかが今後の企業の競争力を左右すると言われています。企業がこのような変化を乗り越えるためにも、企業が主導となり①経営戦略の明確化 ②システムの構築 ③DX人材の育成に注力する必要があります。