リカレント教育とは?必要性やメリットは?企業の導入事例も紹介
目次[非表示]
- 1.リカレント教育の意味は?
- 1.1.リカレント教育で学べる内容
- 1.2.リカレント教育の対象者について
- 1.3.リカレント教育と生涯学習の違い
- 2.リカレント教育の必要性と注目される理由
- 3.リカレント教育のメリットとは
- 3.1.従業員にとってのメリット
- 3.2.企業にとってのメリット
- 4.リカレント教育の課題
- 5.企業がリカレント教育を導入するには?
- 5.1.リカレント教育の目的や内容を明確にする
- 5.2.リカレント教育の学習環境を整備する
- 5.3.振り返りの機会を設ける
- 6.リカレント教育の支援制度
- 6.1.教育訓練給付金
- 6.2.高等職業訓練促進給付金
- 6.3.キャリアコンサルティング
- 6.4.ハロートレーニング
- 7.リカレント教育を導入している企業事例を紹介
- 7.1.企業事例:ソニー株式会社
- 7.2.企業事例:サントリーホールディングス株式会社
- 8.スキル・知識を身につけるならリンクアカデミー
- 9.記事まとめ
- 10.リカレント教育に関するよくある質問
顧客のニーズの変化や働き手の意識の変化など、企業と個人を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。そのような市場の変化や社会的な意識の変化に対応するために、「リカレント教育」が注目されています。「生涯教育」といった言葉とも共に使われているものですが、実際に内容をご存じではない方もいるのではないでしょうか。本記事ではリカレント教育の基本的な意味や必要性、メリット、企業での導入方法などをご紹介します。
リカレント教育の意味は?
リカレントとは、「繰り返し」や「循環」を意味する英語である「recurrent」から来ており、リカレント教育は「義務教育や大学などの教育機関を出た後にも、必要に応じて仕事と教育を繰り返す教育方法」のことを指しています。日本では「学び直し」とも呼ばれており、社会人が仕事に関する知識やスキルを学ぶ方法として認知されています。
リカレント教育はスウェーデンの経済学者であるレーンが提唱した教育方法であり、スウェーデンの文部大臣であるパルメが言及し、1970年に経済協力開発機構(OECD)が取り上げたことで注目を集めました。
リカレント教育で学べる内容
リカレント教育で学ぶことができる内容は様々なものがあり、多くの場合はそれぞれの仕事内容に関する知識やスキルを身につけるための学び直しが実施されています。リカレント教育で学ばれている内容としては、下記のようなものが挙げられます。
■英語や中国語などの外国語習得
■ソフトウェアやAIを扱うためのITリテラシーの理解
■社会保険労務士やMBAといった資格取得
■法律、会計や財務などの経営ノウハウの習得
この他にも、リカレント教育では観光業や福祉、産業などの科目を学び直すこともできます。
リカレント教育の対象者について
リカレント教育は、主に義務教育や高校、大学、専門学校などで教育を受けた人が対象者となります。学校教育を受けた社会人全員がリカレント教育の対象になるため、教育を受けた後の年齢制限や期限などはありません。また、現在働いている人だけではなく働いた経験がある人も対象になります。そのため、「新しいことを学びたい」「学び直しをしたい」といった意欲があり、会社や家族などの協力を得ることができればリカレント教育を受けることができます。
リカレント教育を受けるタイミングは本人の意向に依りますが、一般的には結婚や出産などのライフイベントに伴って離職をしたタイミングや、定年退職をしたタイミングなどでリカレント教育を活用してスキルアップや再就職が行われています。
リカレント教育と生涯学習の違い
リカレント教育と共に学び直しという背景で用いられる言葉として、「生涯学習」があります。人生100年時代に対する意識が強まっている昨今で特に注目が高まってきた言葉であり、大学でも生涯学習とリカレント教育を同様の扱いで講義に盛り込んでいる所も出てきています。
リカレント教育と生涯学習は近い意味を持っていますが、リカレント教育は主に「仕事に活用するための知識やスキルを身につけること」が目的であるのに対して、生涯学習は「人生を豊かに送るための教養を身につけること」を目的としている点で違いがあります。昨今で言うと企業の戦略、ビジネスモデルの変化に合わせて学び直しを行うという意味で「リスキリング」という言葉が使われることも増えております。
リカレント教育の必要性と注目される理由
近年はリカレント教育の必要性を理解し、実施する企業が増えてきています。その理由として、下記のように「市場の急速な変化」「労働者の流動化」「人生100年時代」への対応が主に挙げられます。
市場の急速な変化
近年はIT技術の発展により情報社会化が急速に進んでいます。これまでは車や家電製品など、企業が開発した商品はブランド化して売れ続けていましたが、高度経済成長期以降は情報を得やすくなっていることでより安価な類似品や模倣品が流通することが多くなっています。そのため、商品・サービスの寿命は従来よりも短くなり、市場は急速に変化するようになりました。
その中で、市場の急速な変化に対応するために、従来の知識やスキルだけではなく最先端の技術や顧客のニーズに対して有用な知識・スキルを学び直すことが求められています。
労働者の流動化
多くの日本企業はこれまで「終身雇用」を採用してきており、従業員も1社で勤め上げるということが当たり前でした。しかし、近年は転職や独立がより身近になっており、複数の企業で勤めることは珍しくありません。転職に加えて副業も広まってきており、これまでに比べて労働者が流動的に働くようになるといった変化が起きています。
勤続年数が短くなっていることや、従業員が必要とするスキルが多様化していることなどにより、1つの企業の中で必要な知識やスキルを提供し切ることは難しくなっています。
そのため、今いる会社内でのみ活用可能な汎用性の低いスキルの習得だけではなく、様々な場面で汎用的に活用が可能なスキルや世の中の流れに合わせたスキルを身に着けるためのリカレント教育のような従業員の自主的な学びの幅を広げる取り組みが注目されています。
人生100年時代
人生100年時代とは、人々の寿命が100歳を超えることで生じる生き方の変化を指したものです。これまでは「学校で学ぶ」「企業で働く」「引退する」といったステップでライフステージが進んでいくことが一般的でしたが、人生100年時代では様々なステージを組み替えながら生きていくことが求められるようになります。
定年退職後の再就職やライフイベント前後での職場復帰などを実現するために、リカレント教育による新しい知識やスキルの習得が重要になっています。
リカレント教育のメリットとは
従業員にとってのメリット
リカレント教育によって、従業員にとっては下記のようなメリットが生まれます。
■収入のアップ
リカレント教育により、新しい知識やスキルを身につけることで、従業員は収入をアップすることが期待できます。内閣府が発表している「平成30年度 年次経済財政報告」では、自己啓発や学び直しを行っている人については、「自己啓発を実施した人と実施しなかった人の年収変化の差額は、1年後には有意な差はみられないが、2年後では約10万円、3年後では約16万円でそれぞれ有意な差がみられている」と言及されています。
(出典:自己啓発とその効果)
■スキル向上
職場の中での実務を通しても知識やスキルを身につけることはできますが、社内での育成だけでは最新の技術開発やノウハウの確立などに対する感度が低くなってしまう可能性があります。リカレント教育により定期的に学び直しを実行することで、情報のアップデートを行うことができるため、結果として時代に即した業務対応スキルを身に着けられることが期待できます。
企業にとってのメリット
リカレント教育によって、企業にとっては下記のようなメリットが生まれます。
■生産性の向上
従業員がリカレント教育を通して学び直しを行うことで、従来のやり方だけではない新しいアイデアや工夫が生まれやすくなります。その結果、現在の業務の見直しや業務効率の向上に繋がり、企業全体の生産性向上することが期待できるでしょう。
■変化への対応力向上
リカレント教育を推進することで、より変化に対して柔軟な組織風土をつくり上げることができます。従来のやり方や考え方に固執しない風土があることで、市場や社会情勢で変化が生じた時にも、現状に捉われることなく対応することができるようになるでしょう。
リカレント教育の課題
制度の整備
リカレント教育に対する注目は高まっていますが、リカレント教育に対する公的な支援制度は現在整備が進んでいる段階です。また、リカレント教育のために企業での勤務を一度辞めるということや働きながら教育機関に通うことなどはまだ一般的ではないため、情報が少ないという点もリカレント教育の課題として挙げられます。
費用の負担
リカレント教育を行う際には、学習をする人が基本的にはその費用を支払うことになります。企業によっては奨励金や手当を支給している場合がありますが、今後教育のための費用が増大した際には学習者が負担する費用が大きくなってしまうことが懸念されます。
教育機関の対応
社会人に向けて公開されている講座やカリキュラムについて、対応している教育機関が少ないということもリカレント教育の課題として挙げられます。そのため、リカレント教育によるスキルアップやキャリアアップを希望している人にとって、限られた選択肢しかないことでリカレント教育に対するハードルが上がってしまっていると言えるでしょう。
企業がリカレント教育を導入するには?
リカレント教育の目的や内容を明確にする
リカレント教育を導入する際には、その目的や定義を明確にすることが大切です。ある程度必要性を感じて導入を検討することが多いですが、改めて「リカレント教育がなぜ必要なのか」「リカレント教育を通してどのような成果を得たいのか」といったことを整理しましょう。目的が不明確な場合には、リカレント教育の効果や成果を測定することができなくなってしまうため、このステップを飛ばさないことに注意が必要です。
また、目的に応じてリカレント教育の内容を考えることが重要です。一般社員に対してリカレント教育による学び直しを行いたい場合には、実際の業務に繋がる内容にすることで、より学習効果を高めることが期待できます。また、管理職など一定の経験がある従業員に対してリカレント教育を行う場合には、将来のキャリアステップや経営への参画などを見越した内容にすることで、現状維持ではなくより発展的な知識やスキルを身につけることができます。
リカレント教育の学習環境を整備する
リカレント教育の目的や内容に合わせて、学習環境を整備することも大切です。学習環境の整備の方針としては、下記のようなものが挙げられます。
■学習ツールの整備
研修の実施やセミナーへの参加などによって新しい知識やスキルの習得を促進することができます。また、隙間時間を活用した日常的に学習をする環境を整えることも重要です。eラーニングを活用して学習をいつでもどこでもできるようにすることで、よりそれぞれのペースや習熟度に合った内容を提供することができます。
一方で、eラーニングは学習が習慣化する前に挫折することも多く、ただ環境を整えただけになってしまったという声も度々上がる課題であることも事実です。そのため、学習習慣が定着する前の段階では、セミナーや研修などのリアルタイムで参加可能なコンテンツを導入し、活用することで学習意欲向上のきっかけを促すことをおすすめします。
■勤務形態の柔軟化
業務時間で1日の可処分時間が逼迫してしまうと、学習に充てる時間がなくなってしまいます。そのため、従業員が学習と仕事を両立できるような時短勤務やフレックス制など柔軟な勤務形態を導入すると良いでしょう。
■費用の補助
学習する内容によっては、費用が発生することがあります。費用がネックとなって必要な学習ができなくなることを避けるために、できる範囲で学習費用を補助できる制度を充実させると良いでしょう。
振り返りの機会を設ける
リカレント教育では、「仕事に活かすことができる知識やスキルを身につける」ことを目的としています。そのため、リカレント教育を奨励、推進していたとしても、それがどのような効果を生み出しているかを測定しなければいけません。学習の成果に対してしっかりと評価やフィードバックを行うことで、学習者本人も学習に対するモチベーションを維持・向上しやすくなります。
一般的には、「評価制度に学習による成果を評価する項目を入れる」「学習ツールでフィードバック機能を活用する」「業務効率や生産性を測定する」といったことが方法として挙げられます。
リカレント教育の支援制度
教育訓練給付金
教育訓練給付金は、教育訓練給付制度で定められている「主体的な能力開発やキャリア形成の支援」や「雇用の安定と就職の促進」を目的とした給付金です。厚生労働大臣が指定している教育訓練を終了すると、その受講費用の一部が支給されます。該当する教育訓練として、下記のものが挙げられます。
■専門実践教育訓練
・特に労働者の中長期的キャリア形成に資する教育訓練が対象
・受講費用の50%(年間上限40万円)が訓練受講中6か月ごとに支給
・資格取得等をし、かつ訓練修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合は、受講費用の20%(年間上限16万円)が追加で支給
・失業状態にある方が初めて専門実践教育訓練(通信制、夜間制を除く)を受講する場合、受講開始時に45歳未満であるなど一定の要件を満たせば、別途、教育訓練支援給付金が支給
■特定一般教育訓練
・特に労働者の速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する教育訓練が対象
・受講費用の40%(上限20万円)が訓練修了後に支給
■一般教育訓練
・その他の雇用の安定・就職の促進に資する教育訓練が対象
・受講費用の20%(上限10万円)が訓練修了後に支給
(出典:厚生労働省「教育訓練給付制度」)
高等職業訓練促進給付金
高等職業訓練促進給付金は、ひとり親の方が看護師等の国家資格やデジタル分野等の民間資格の取得のために修学する場合に給付される給付金です。概要は下記のようになっています。
■対象者
母子家庭の母又は父子家庭の父であって、現に児童(20歳に満たない者)を扶養し、以下の要件を全て満たす方
・児童扶養手当の支給を受けているか又は同等の所得水準にあること
・養成機関において1年以上(令和3年4月1日から令和5年3月31日までに修業を開始する場合には6月以上)のカリキュラムを修業し、対象資格の取得が見込まれること
・仕事または育児と修業の両立が困難であること
■支給額
・月額100,000円 (市町村民税非課税世帯)
・月額 70,500円(市町村民税課税世帯)
ただし、養成機関における課程修了までの期間の最後12ヶ月については、
・月額140,000円(市町村民税非課税世帯)
・月額110,500円(市町村民税課税世帯)
(出典:厚生労働省「母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業の実施について」)
キャリアコンサルティング
キャリアコンサルティングとは、自身のキャリアステップや職業生活設計、能力開発などに対して相談に乗り、助言や指導をすることを指しています。厚生労働省から委託されているキャリア形成サポートセンターでは、「ジョブ・カード」を活用したキャリアコンサルティングを在職者や企業・団体、学校関係者向けに無料で実施しています。
支援の内容としては、職場定着やキャリアアップに対する支援、自己理解・仕事理解を深めるための支援、キャリアプランの作成支援などがあります。
(出典:「キャリア形成サポートセンター」)
ハロートレーニング
ハロートレーニングとは、公的職業訓練とも呼ばれており、キャリアアップや就職を実現するために、必要な職業スキルや知識を習得することができる公的制度です。基本的に費用はかかりません。概要は下記のようになっています。
■対象
離職者や在職者、学卒者、障がい者といった「働こうとする人」「働く人」の全般
■訓練内容
事務系をはじめとして、IT、建設・製造、サービス、介護、デザイン、理美容に至るまで多種多様な訓練分野を網羅しており、住宅リフォーム、OAシステム開発、Web設計、3DCAD等の昨今の時代のニーズに即したコースや女性向けコース等も設定しています。また、第一種電気工事士、宅地建物取引主任者、介護職員初任者研修等の資格取得をめざすコースもあります。
(出典:厚生労働省「ハロートレーニング」)
リカレント教育を導入している企業事例を紹介
企業事例:ソニー株式会社
ソニー株式会社では、2015年から「フレキシブルキャリア休職制度」を導入することで、社員の学び直しのサポートを行っています。
「自分のキャリアは自分で作るもの」という創業以来の考え方の元、休職をキャリアの低下ではなく、キャリアを広げる機会と捉え、多様なキャリアを応援するために必要なものはどんどん制度化、浸透させることで、新しい技術やサービス開発の原動力としています。
企業事例:サントリーホールディングス株式会社
サントリーホールディングスでは、自己啓発プログラム「SDP(Suntory Self-Development Program)」としてリカレント教育を推進しています。
「従業員一人ひとりが自分らしく、いきいきと働き、自己成長していくためには、自らの仕事人生に自ら責任をもって前向きに主体的に努力し続けることが必要である」という考えの元、応募型研修・英語力強化・eラーニングなど、前向きに主体的に努力し続ける従業員を支援することで、経営の元も重要な基盤としている「人」に対する様々な投資を行っています。
スキル・知識を身につけるならリンクアカデミー
あなたのキャリアに本気のパートナーを
株式会社リンクアカデミーでは、「学び」を通じ、自らのキャリアを磨き上げる場を目指し様々な教育・学習コンテンツを、対個人様向け、対法人様向けに展開しています。
人材の流動化が進み、企業と個人の”相互選択型”が当たり前になってきている現代において、リカレント教育、昨今で言えばリスキリングのような「個人のキャリアを向上させていくための機会」は今後さらに重要になってくるテーマでしょう。社員の自主性に任せるのではなく企業側が主導して社員に対して教育の機会を提供することが当たり前になりつつあり、企業様からのご相談も非常に増えております。
自律型人材の育成に必要なことは「きっかけ作り」と「自走できるまでの伴走」です。
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記事まとめ
リカレント教育とは、義務教育や高校、大学、専門学校などの教育機関を出た後の社会人が、新しい知識やスキルを「学び直す」ことを指しています。リカレント教育では仕事の内容や身につけた知識、スキルに応じて、幅広い内容を学び直すことができるため、ライフステージの変化やキャリアアップなどに対応することができます。企業においてはしっかりとリカレント教育の目的の明確化をすると共に、学習ができる制度や体制を設けておくことが重要です。
リカレント教育に関するよくある質問
Q1:リカレント教育への注目が高まっている理由は?
A1:リカレント教育の注目が高まっている理由として、下記のようなものが挙げられます。
■市場の急速な変化
これまでは車や家電製品など、企業が開発した商品はブランド化して売れ続けていましたが、高度経済成長期以降は情報を得やすくなっていることでより安価な類似品や模倣品が流通することが多くなっています。そのため、商品・サービスの寿命は従来よりも短くなり、市場は急速に変化するようになりました。その中で、市場の急速な変化に対応するために、従来の知識やスキルだけではなく最先端の技術や顧客のニーズに対して有用な知識・スキルを学び直すことが求められています。
■労働者の流動化
近年は転職や独立がより身近になっており、複数の企業で勤めることは珍しくありません。転職に加えて副業も広まってきており、これまでに比べて労働者が流動的に働くようになるといった変化が起きています。勤続年数が短くなっていることや、従業員が必要とするスキルが多様化していることなどにより、1つの企業の中で必要な知識やスキルを提供し切ることは難しくなっています。そのため、社内の教育だけではなく、リカレント教育のように従業員の学びの幅を広げる取り組みが注目されています。
■人生100年時代
これまでは「学校で学ぶ」「企業で働く」「引退する」といったステップでライフステージが進んでいくことが一般的でしたが、人生100年時代では様々なステージを組み替えながら生きていくことが求められるようになります。定年退職後の再就職やライフイベント前後での職場復帰などを実現するために、リカレント教育による新しい知識やスキルの習得が重要になっています。
Q2:企業におけるリカレント教育の手法は?
A2:企業においてリカレント教育を推進する際には、下記のようなステップが適しています。
■リカレント教育の目的や内容を明確にする
リカレント教育を導入する際には、その目的や定義を明確にすることが大切です。ある程度必要性を感じて導入を検討することが多いですが、改めて「リカレント教育がなぜ必要なのか」「リカレント教育を通してどのような成果を得たいのか」といったことを整理しましょう。目的が不明確な場合には、リカレント教育の効果や成果を測定することができなくなってしまうため、このステップを飛ばさないことに注意が必要です。
また、目的に応じてリカレント教育の内容を考えることが重要です。一般社員に対してリカレント教育による学び直しを行いたい場合には、実際の業務に繋がる内容にすることで、より学習効果を高めることが期待できます。また、管理職など一定の経験がある従業員に対してリカレント教育を行う場合には、将来のキャリアステップや経営への参画などを見越した内容にすることで、現状維持ではなくより発展的な知識やスキルを身につけることができます。
■リカレント教育の学習環境を整備する
リカレント教育の目的や内容に合わせて、学習環境を整備することも大切です。学習環境の整備の方針としては、下記のようなものが挙げられます。
・学習ツールの整備
「教育」となると、一般的には研修の実施やセミナーへの参加、eラーニングの活用などがイメージされます。eラーニングを活用して学習教材をいつでもどこでも利用することができるようにすることで、よりそれぞれのペースや習熟度に合った内容を提供することができますが、学習習慣が形成される前の状態だと特に、なかなか活用されにくいという事実も理解しておく必要があります。学習開始のきっかけとしては研修の実施など、学習開始の導入として適切な環境を選ぶことが必要です。
・勤務形態の柔軟化
業務時間で1日の可処分時間が逼迫してしまうと、学習に充てる時間がなくなってしまいます。そのため、従業員が学習と仕事を両立できるような時短勤務やフレックス制など柔軟な勤務形態を導入すると良いでしょう。
・費用の補助
学習する内容によっては、費用が発生することがあります。費用がネックとなって必要な学習ができなくなることを避けるために、できる範囲で学習費用を補助できる制度を充実させると良いでしょう。
■振り返りの機会を設ける
リカレント教育では、「仕事に活かすことができる知識やスキルを身につける」ことを目的としています。そのため、リカレント教育を奨励、推進していたとしても、それがどのような効果を生み出しているかを測定しなければいけません。学習の成果に対してしっかりと評価やフィードバックを行うことで、学習者本人も学習に対するモチベーションを維持・向上しやすくなります。
一般的には、「評価制度に学習による成果を評価する項目を入れる」「学習ツールでフィードバック機能を活用する」「業務効率や生産性を測定する」といったことが方法として挙げられます。