アンラーニングとは?メリット・デメリットや実践方法について解説
目次[非表示]
- 1.アンラーニングの意味は?
- 1.1.アンラーニングと経験学習の関係
- 2.アンラーニングが重視される背景
- 3.企業がアンラーニングを推進するメリット
- 3.1.人材育成を促進できる
- 3.2.生産性が向上する
- 3.3.変化に対応できる組織づくりに繋がる
- 4.企業がアンラーニングを推進するデメリット
- 4.1.自分の考え方が否定されたと感じる
- 4.2.最新の情報を集めるコストがかかる
- 5.企業内でのアンラーニングの推進方法
- 5.1.アンラーニングの目的や方法を共有する
- 5.2.個人で振り返りを行う機会をつくる
- 5.3.新しい知識提供や意見交換の場をつくる
- 5.4.効果測定を行う
- 6.アンラーニングを活用する際の注意点
- 6.1.チーム単位で実行する
- 6.2.モチベーションの低下を防ぐ
- 7.企業の人材育成ならリンクアカデミー
- 8.リンクアカデミーの研修導入事例
- 9.記事まとめ
- 10.アンラーニングに関するよくある質問
情報社会の発展や人々のニーズの多様化などにより、企業や個人を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。仕事に求められるスキルや知識についても従来のものだけではなく、新しいものが求められるようになっています。その中で、新たな知識やスキルを学ぶための方法として、「アンラーニング」が注目されています。本記事では、アンラーニングの意味や企業にとってのメリット・デメリット、アンラーニングの推進方法などをご紹介します。
アンラーニングの意味は?
アンラーニング(unlearning)は一般的に「学習棄却」と呼ばれており、「それまで学んで身につけてきた知識のうち、有用でないものを捨てて新しく学び直すこと」を指しています。アンラーニングは「学びほぐし」とも表現されることがあり、固定観念を捨て去ることを指す際にも用いられます。
アンラーニングは「完全に知識やスキルを忘れる」ということではなく、意図的に現在の行動や仕事などに対して使用を停止することを意味しています。そのため、アンラーニングを適用した知識やスキルがまた必要になった場合には、それに応じて使用することができます。
よくリスキリングと混同されることが多いですが、アンラーニングの方がより知識やスキルの「使用停止」の色が濃いですが、リスキリングは変化に応じた新しい技術・スキルを「獲得する」という意味合いが強い表現と言えるでしょう。
アンラーニングと経験学習の関係
アンラーニングは経験から学びを得る学習方法である「経験学習モデル」と関係があります。経験学習モデルとは、アメリカの教育理論家・組織行動学者であるデービッド・A・コルブが提唱した学習方法の概念であり、下図のように「経験」「省察」「概念化」「実践」を繰り返しながら学習をしていくものであり、経験を繰り返しながら学びを得て次に活用していくモデルです。
参考:経験学習モデルのイメージ
経験学習モデルの中でも、経験したことを分析して学びを抽出する「省察」と、省察した内容を他のシーンや機会でも応用できるものにする「概念化」の段階で特にアンラーニングが必要とされます。従来のやり方やスキルのみに囚われていると、新しい発想や本質的な解決策に至らない可能性があります。経験学習モデルに対してアンラーニングを活用することで、より学習効果を向上することが期待できます。
アンラーニングが重視される背景
先述したように、アンラーニングは現在有用ではなくなった知識やスキルを一度捨てた上で、新しく必要な知識やスキルを身につけることを指しています。昨今は顧客ニーズの多様化や、働き手の意識の変化、DX推進に伴うデジタル技術の進化などが進んでおり、企業や個人を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。そのため、それまでの固定観念ややり方のみに固執していると、その変化に対応することができずに成長や発展が難しくなってしまいます。アンラーニングを意識して実行することで、変化に対応できる新しいアイデアや手法を取り入れやすくなることが期待できるため、アンラーニングは注目されています。
企業がアンラーニングを推進するメリット
人材育成を促進できる
アンラーニングを推進することで、企業は自社の人材育成を促進することができます。既に持っている知識やスキルを活用してもらうことは大切ですが、市場や環境の変化に応じて適切な知識・スキルの取捨選択を行わないことで、効果的ではないやり方を続けてしまう可能性があります。特に、勤続年数や経験が長い従業員になるほど、過去の成功体験が影響して変化に対する意欲が低くなってしまう傾向があります。
アンラーニングを推進することで、それまでのやり方に固執せずに、新しい手法を学んで身につけることを促すことができます。また新しい技術の便利さに触れていただくことで、新しい分野への興味を感化することも出来ます。その結果、従業員の知識やスキルのアップデートを行うことができ、成長を実現することが期待できます。
生産性が向上する
アンラーニングを推進することで、個人の知識やスキルを新しくすると共に、企業の生産性を向上することに繋がります。これまでのやり方を一度捨てる過程で、既存の業務に必要なスキルや業務プロセス、活用しているツールなどを見直すことになるため、より成果創出に対して効果があるものを選ぶことができるようになります。
業務のやり方やプロセスなどを最適化することで、それまで生じていた業務のムリ・ムダ・ムラを削減することができます。アンラーニングを推進して新しいやり方を実行すると、最初は慣れないことにより効率が下がったように感じますが、徐々に変化に対する抵抗を少なくすることでそれまでよりも大きな成果を生み出すことができるようになるでしょう。
変化に対応できる組織づくりに繋がる
組織変革をする際に大切な考え方として、「やることを増やすだけではなく、やめることを決める」というものがあります。必要に応じて「やること」を増やすのみになると、業務のプロセスが煩雑化して、全体の整合性や効率が低下してしまうことはよく起こっています。そのため、アンラーニングにより知識やスキルの取捨選択を行い、「やめること」を明確にすることで、全体のバランスを取りつつ成果に繋がるものを残すことが大切になります。
アンラーニングを推進し、組織の中で定着すると、変化が求められる際にも「やること」と「やめること」をそれぞれ決めて柔軟に対応できる組織になることが期待できます。
企業がアンラーニングを推進するデメリット
自分の考え方が否定されたと感じる
アンラーニングを推進することで生じるメリットとして、「従業員が自分のやり方や考え方が否定されたと感じることがある」ということが挙げられます。アンラーニングはその過程の中で、それまでの知識やスキルを捨てるということが必要になるため、特に経験が長く自分のやり方に自信を持っている人にとっては、「自分のやり方は無駄だった」ないし「退職を促す肩たたき」という受け止め方をしてしまう可能性があります。
企業側の意図とは異なる受け止められ方をしてしまうと、業務へのモチベーションが低下してしまうことがあるため、「今後の事業戦略において必要な変化である」ことなど目的や内容をしっかりと説明して正しい理解を得ることが必要です。
最新の情報を集めるコストがかかる
アンラーニングは知識やスキルを新しいものにアップデートすることが求められますが、実際に今の知識・スキルの取捨選択や新しい知識・スキルを身につける際などには、「最新のものを参照して、効果が高まると判断できるか」といった検討が必要になります。
アンラーニングで身につけるものは最新のものでなければならないことではないですが、業界や職種の中でどのような知識やスキルが採用されているかを俯瞰して確認することは大切です。そのため、アンラーニングの効果を高めるために情報収集や判断をするために時間や労力がかかることもデメリットとして挙げられます。
企業内でのアンラーニングの推進方法
アンラーニングの目的や方法を共有する
アンラーニングを企業内で推進するためには、しっかりとアンラーニングの目的や方法を共有することが大切です。目的の共有や納得感醸成が行われないままだと、先述したような「自身のスキルややり方への否定」としてアンラーニングが受け止められる可能性があります。
そのため、いきなり変化を促すのではなく「自社は今後どのような状態になりたいのか」や「そのためになぜアンラーニングが必要なのか」、「なぜその方々がアンラーニング施策の対象者に選ばれたのか」といった目的と内容を従業員に対して伝えましょう。手法として、全社員向けの説明会の実施や職場ごとでの説明会、社内インフラを活用したメッセージ発信などが挙げられます。
個人で振り返りを行う機会をつくる
アンラーニングの目的を共有した後には、まずは個人で自身の経験やスキルなどを振り返る機会をつくりましょう。自身の知識やスキルなどを振り返ることで、古いものと新しいものに整理することに加えて、自分で持っているこだわりや思い込みなどを確認することができます。
固定観念であるかどうかを判断するためには、「なぜ行っているのか?」「なぜ必要なのか?」といった「なぜ」を自分で考えることが有効です。明確な理由が浮かばない場合には、「必要だと思い込んでいた知識やスキル」であり、新しいものへアップデートが必要な知識やスキルの可能性があります。
機会の作り方としては、定期的に業務を振り返る時間を設けることや、日報などでの振り返りを設けることなどが挙げられます。
新しい知識提供や意見交換の場をつくる
個々人での振り返りを行うと共に、研修などで新しい知識の提供や意見を交換する機会を設けることもアンラーニングの推進には効果的です。アンラーニングをするためには、1人で考えるのには限界があります。またe-ラーニングのような個人の自主性や意識の高さの違いによって効果に差が出るもので機会を提供するよりは、外部の研修サービスや講師を活用して、新しい知識やスキルの提供を行うことで、よりアンラーニングに伴う学習効果が高まるでしょう。
また、研修や自身での振り返りの中で得られた気づきや生まれた意見を従業員同士で交換する機会を設けることで、気づきのシェアやアイデアの具体化を行うことができます。
効果測定を行う
アンラーニングは比較的難しいものであるため、一度実施しただけでは望んでいる効果を全て得られることは少ないでしょう。アンラーニングを組織の中で習慣化し、繰り返し行うことで少しずつ成果が得られていきます。そのためには、毎回のアンラーニングについて「どのような結果になったか」といった効果測定を行うことが大切です。定量的・定性的にアンラーニングの効果を確かめることで、軌道修正の方針を立てることができます。
アンラーニングの効果測定の方法としては、新しい知識・スキルの習熟度の把握や労働生産性の測定などが挙げられます。
アンラーニングを活用する際の注意点
チーム単位で実行する
アンラーニングを活用する際には、チーム単位で実行することが大切です。アンラーニングのために現場の知識やスキルを個々人で振り返ることは重要ですが、その実行までバラバラに行ってしまうと、個人の主観によって全体のアンラーニングの方向性や基準にムラが生じる可能性があります。また、全ての知識やスキルを刷新することは時間や労力の観点からも効果的ではありません。個人の意見を基にして、全体の意識や考えをチームで統一することで、対応するものの優先順位をつけるようにしましょう。
モチベーションの低下を防ぐ
アンラーニングを活用する際には、従業員の学習に対するモチベーションを維持・向上する仕掛けが必要です。株式会社リンクアンドモチベーションでは下図のように、モチベーションの高さには「目標の魅力(やりたい)」、「危機感(やらなきゃ)」「達成可能性(やれそう)」が関係しています。
参考:モチベーションの公式
(リンクアンドモチベーション,モチベーションとは?定義やモチベーションを維持、向上させる方法)
「今の知識やスキルを新しいものにしなければならない」というように、「やらなきゃ」という危機感だけでは、「やりたい」や「やれそう」という意識が薄いとモチベーションは向上しません。チーム単位、個人単位でどの要素が足りないかを把握して、適切なアプローチを検討しましょう。
企業の人材育成ならリンクアカデミー
リンクアカデミーでは、昨今のDX推進の中で必要なアンラーニングに対して、モチベーションの公式を意識したスキル研修を実施させていただいております。
企業の事業と組織戦略に基づいた研修プランの設計、独自の診断技術により個別性の高い研修プランをご提案させていただきます。また、グループ会社の組織コンサルティング会社の知見を活かした、実行性の高い研修をご案内させていただいております。
その方法に
・パソコンスキルの講座提供をしてきた㈱アビバ
・資格取得を支援する講座を提供してきた大栄教育システム㈱
・マンツーマン英会話レッスンを提供してきたディーンモルガン㈱
といったキャリアアップに関するサービスをフルラインナップで展開してきました。
この実績と経験を活かして、
・内定者・新入社員の育成
・生産性向上
・営業力強化
・DX推進
・アンラーニング推進研修
といった幅広い課題に対してもソリューションを提供しています。
リンクアカデミーの研修導入事例
・ネットワンシステムズ株式会社様
・東京建物株式会社様
・株式会社フロム・エージャパン様
・株式会社トーコン様
記事まとめ
顧客ニーズの多様化や、働き手の意識の変化などにより企業や個人を取り巻く環境が大きく変化している中で、アンラーニングによる学習が注目されています。アンラーニングとは、現在の知識やスキルなどを捨てた上で、新しいものを学び直すことを指しています。アンラーニングを推進することで、企業は人材育成や変化に強い組織づくりを促進することができます。従業員のモチベーションの低下への対応や外部からの情報収集などに気をつけながら、自社でのアンラーニングの定着をしていきましょう。
アンラーニングに関するよくある質問
Q1:アンラーニングの定義とは?
A1:アンラーニング(unlearning)は一般的に「学習棄却」と呼ばれており、「それまで学んで身につけてきた知識のうち、有用でないものを捨てて新しく学び直すこと」を指しています。アンラーニングは「学びほぐし」とも表現されることがあり、固定観念を捨て去ることを指す際にも用いられます。
アンラーニングは「完全に知識やスキルを忘れる」ということではなく、意図的に現在の行動や仕事などに対して使用を停止することを意味しています。そのため、アンラーニングを適用した知識やスキルがまた必要になった場合には、それに応じて使用することができます。
Q2:アンラーニングを利用する際の人材育成方法は?
A2:アンラーニングを利用する際の人材育成方法として、下記のようなものが挙げられます。従業員のモチベーションの低下を防ぐために、アンラーニングの目的や内容をしっかりと共有した上で実施しましょう。
■学びの機会を提供する
アンラーニングは必要に応じた新しい知識やスキルを身につけることを目的としているため、定期的に学びを得られる機会を提供することが大切です。学びの機会としては、研修やeラーニングといったOff-JTの実施が一般的ですが、知識提供だけではなくOJTを活用した実践の機会を提供することも大切です。
■評価制度への反映を行う
アンラーニングを利用した人材育成を促進するためには、アンラーニングの効果や成果に対して評価やフィードバックを行うことが大切です。アンラーニングの実行や実践度合いを評価するための仕組みを導入すると良いでしょう。