オンボーディングとは?用語の意味やプロセス、成功事例を解説!
目次[非表示]
- 1.オンボーディングとは何か
- 2.オンボーディングが注目されている背景
- 3.オンボーディングと一般的な入社者研修の違い
- 4.オンボーディングとOJTの違い
- 5.オンボーディングの目的・メリット
- 5.1.コストの削減
- 5.2.より早い即戦力
- 5.3.定着率の向上
- 5.4.エンゲージメントの向上
- 5.5.チームワークの向上
- 6.オンボーディングを導入する方法
- 6.1.目標を設定する
- 6.2.プランを作成する
- 6.3.実行する
- 6.4.振り返り・改善を行う
- 7.オンボーディングの施策とポイント
- 7.1.新入社員のプラン・ゴールを設定する
- 7.2.企業情報や仕事の情報を一元管理する
- 7.3.コミュニケーションの場を設ける
- 7.4.期待値をすり合わせる
- 7.5.教育体制を整備する
- 8.企業のオンボーディングの成功事例
- 9.法人向けの研修ならリンクアカデミー
- 10.まとめ
- 11.オンボーディングに関するよくある質問
多くの企業では、新入社員を対象に入社時の研修を実施してビジネスマナーや基本的な業務スキルの習得を促しています。これは初期教育を適切に行うことで、その後のパフォーマンスの向上を目的とした取り組みですが、更に人材の定着率やスキルアップを図るための方法として、「オンボーディング」が注目されています。オンボーディングはカスタマーサクセスの分野でも使われていますが、実際はどのような内容なのでしょうか。
本記事では人材のパフォーマンスを向上するオンボーディングについて、その意味やプロセスなどをご紹介します。
オンボーディングとは何か
オンボーディングは、「船や飛行機に搭乗する」という意味を持つ「on-board」に由来している言葉であり、「参加する状態」「加入するタイミング」といった使われ方をしています。元々は、船や飛行機に新しく乗ることになったメンバーに対して、適切なサポートを実施することで船内・機内での環境に慣れてもらうプロセスのことを、オンボーディングと呼んでいました。
ビジネスシーンでは、「新規入社者や新規顧客が、自社の組織や商品・サービスにスムーズに慣れるためのプロセス」としてオンボーディングは活用されています。また、オンボーディングは入社やサービス導入当初のオリエンテーションや説明会の実施といった単発の施策だけではなく、ある程度の期間で継続して行われます。
人事におけるオンボーディングの特徴
人事領域におけるオンボーディングは、新しく採用して自社に入社する人に対して、職場に慣れてパフォーマンスを発揮できるようになるまでのサポートを行うことを指します。一般的に、オンボーディングは入社時の研修だけではなく、一定期間のプログラムとして実施されます。そのため、研修やOJTといった様々な方法を組み合わせて実行されることが多いでしょう。
カスタマーサクセスにおけるオンボーディングの特徴
人事領域だけではなく、カスタマーサクセスにおいてもオンボーディングという言葉はよく用いられます。カスタマーサクセスの領域では、新しく自社商品やサービスを利用することになった顧客を対象に、商品・サービスの効果を実感できるサポートを行うことを、オンボーディングと呼びます。オンボーディングを通して、顧客の満足度を向上させて継続的な利用を促すことができます。
オンボーディングが注目されている背景
少子高齢化により、労働人口が減少して企業の人手不足が続く中で、人材の定着率の向上や早期戦力化を図るために、オンボーディングは注目されています。特に、帝国データバンクが公表している「人手不足に対する企業の動向調査(2022年4月)」のデータを見ると、新型コロナウイルスのパンデミック当初を除いて人手不足が続いていることが分かります。
(出典:人手不足企業の割合(2022年4月時点))
人材が不足している中では、採用した人材ができるだけ早く仕事を覚えられる環境を整え、パフォーマンスを発揮してもらうことが重要になっています。その中で、より効果的な育成を行うためにオンボーディングへの注目が高まっていると考えられます。
オンボーディングと一般的な入社者研修の違い
オンボーディングに近いものとして、入社者研修があります。入社者研修では、入社して1ヶ月〜3ヶ月程度の期間でビジネスマナーや基本的な業務知識などについての研修やOJTなどが行われます。多くの場合は入社者研修が終了した後に、各部署へ配属されることになります。
オンボーディングは、入社者研修よりも長い期間で行われる育成プログラム全体のことを指しており、入社者研修もオンボーディングの一環であると言えます。オンボーディングでは、配属後にも定期的な研修や面談などによるサポートが行われるため、入社者研修とは異なると覚えておきましょう。
オンボーディングとOJTの違い
OJTとは、「On the Job Training」を略したものであり、実際の業務を通して先輩社員や上司から指導や教育を行う育成方法を指します。一般的に、新規入社者に対しては先輩社員や上司がOJT担当者として、業務の指導・サポートを行います。入社者研修と同様に、OJTもオンボーディングの一環として実施されることが多いでしょう。
オンボーディングの目的・メリット
コストの削減
適切なオンボーディングを実施することで、採用や育成のコストを削減することができます。離職率が高い場合には、比較的短期間で採用や育成を実施することになるため、その分採用費用や研修費用といったコストが多くかかることになります。オンボーディングにより離職率を低下させることができれば、新たに採用をすることが少なくなりコストの削減に繋がるでしょう。
より早い即戦力
オンボーディングを実施することで、新規入社者のより早い戦力化を実現することができます。
昨今はデジタル化によって、専門的な業務知識だけでなく、PCスキルやITナレッジを早期に習得する必要性が高まってきています。
オンボーディングは、そのようなスキル習得に必要な研修実施と、その後の定期的なサポートを組み合わせて実施されます。そのため、一方的な知識提供になることが少なく、適宜振り返りを行いながら業務に必要な知識を覚えることができるため、より早い業務知識やスキルの習得が期待できます。
定着率の向上
オンボーディングにより、入社後の定着率を向上することができます。オンボーディングは研修だけではなく、周囲の従業員とコミュニケーションを取りながら進めることになるため、チーム全体の連帯感を感じることができるようになります。その結果、退職の理由となることにもいち早く把握して対応することが可能になります。
エンゲージメントの向上
オンボーディングを実施すると、会社や職場への愛着心や方針への共感度合いであるエンゲージメントが向上します。オンボーディングでは、業務内容だけではなく理念や行動指針といった会社の価値観を学んだり、一緒に働く人との相互理解を深めたりといったことも行うため、会社や職場への理解の深まりや共感の高まりが生まれます。
特に、新入社員は、金銭報酬(経済的利得)でモチベーションを下げることは考えにくいため、感情報酬を周囲から与えることによって、効果的にエンゲージメント向上を図ることができます。
チームワークの向上
チームワークが向上することも、オンボーディングの大きなメリットです。オンボーディングは人事だけではなく、職場内外の従業員同士が協力して行うものです。そのため、相互の関わりやコミュニケーションが活発になることになります。オンボーディングを通して、それぞれが信頼関係を構築することでチームワークが更に良くなることが期待できます。
オンボーディングを導入する方法
目標を設定する
オンボーディングを導入する際には、オンボーディングを実施することで、新規入社者にどのような状態になって欲しいのかを明確にしておきましょう。自社の求める人材像や、現場で必要な業務スキルといった要素を考慮して、「いつまでに」「どのようなことができているか」といったように具体的な目標を設定します。
プランを作成する
オンボーディングの目標を設定した後は、それを実現するためのプランを作成します。プランを作成する際には、最終的な目標に対する小目標、いわゆるマイルストーンをおいてそれぞれに応じて必要な施策を検討すると良いでしょう。プランは研修の実施だけではなく、研修と研修の間にどのような関わりを行うかまで考えるのがポイントです。
実行する
オンボーディングのプランが固まったら、実際に実行します。この際、「なぜオンボーディングを行うのか」や「オンボーディングの全体像」を現場の従業員に対して共有することが大切です。「定期的に面談をしてください」「OJTをしてください」といった指示だけでは、従業員はその理由や意図を理解できないため、オンボーディングの効果が無くなってしまいます。
振り返り・改善を行う
オンボーディングの実行が始まってからは、放っておくのではなく定期的な振り返り機会を設けましょう。実際にプランを実行していると、当初は予定していなかったことが起こったり、従業員から質問や相談が来たりするため、しっかり対応や改善を行う体制を整えておくことが重要です。全体のオンボーディングが終了した後には、効果検証を行って次の機会に活かすことも忘れてはいけません。
オンボーディングの施策とポイント
オンボーディングの施策を検討し、実行する際にはいくつかのポイントがあります。代表的なものをご紹介します。
新入社員のプラン・ゴールを設定する
オンボーディングを効果的に実施するためには、新入社員ごとにプランやゴールを設定することが大切です。全体的なオンボーディングのプランは設定しますが、新入社員はそれぞれ特性や価値観が異なります。特に、最初から画一的な指導や教育を行ってしまうと、行動の基準は揃うかもしれませんが、それぞれの強みの喪失やエンゲージメントの低下に繋がります。
また意識・行動変化を促すうえで、人は未知のものや変化を受け入れず、現状維持を望む「現状維持バイアス」という心理作用が働きます。研修対象者に「こう変わりなさい!」と変化を促す前に、その行動を実行する必然性やその行動の先にある未来に対する動機付けを行うことで、現状維持バイアスを効果的に解きほぐすことが出来ます。
メンターとのコミュニケーションや研修での様子を把握するなどして、対象者にとって納得感のあるプラン・ゴールを設定しましょう。
企業情報や仕事の情報を一元管理する
オンボーディングの効果を高めるためには、新入社員の学習体験の向上も大きく影響します。良い学習体験とは、何かを学ぶ中で「スムーズに学べる」「分かりやすい」といった感覚を増やすことが該当します。その一環として、新入社員が知っておくべき自社の情報や、仕事に関する情報などをバラバラではなく、1つの場所に集約しておくことが大切です。
「ここを見ればすぐに確認できる」といった環境を整えておくことで、学習体験が向上すると共に、学習効果も大きく高めることができます。
コミュニケーションの場を設ける
オンボーディングの設計・実施の際には、できるだけコミュニケーションの場を設けることを意識しましょう。しばしばオンボーディングの設計が、「インプット計画」になってしまうことがあります。しっかり会社の中での居場所を作ったり、心理的安全性を高めたりするために、上司や先輩、同僚とのコミュニケーション機会を設けることが重要です。手間に感じるかもしれませんが、充実したコミュニケーションは結果としてスキルアップや戦力化に繋がります。
期待値をすり合わせる
育成が上手くいかない場合や、エンゲージメントが高まらない場合には、従業員との期待値がすり合っていないケースが多く見受けられます。特に、新入社員は会社に対する期待値が抽象的であることが多く、「こんなはずじゃなかった」と感じることもあります。期待値のズレは長い期間影響を及ぼすことになるため、オンボーディングの段階で解消しておくことが重要です。
「周囲から提供できること」と共に「提供できないこと」を伝えておき、期待値を適切に調整しておきましょう。
教育体制を整備する
オンボーディングは様々な育成方法を組み合わせて実施することになるため、全体の教育体制を整備しておくことが重要です。教育体制は、デバイスやインプット資料、人事制度だけではなく周囲の協力者の意識やスキルといった面でも整備することが必要です。教育体制が整っていない場合には、オンボーディング自体を進めることが困難になってしまうため、注意しておきましょう。
必要に応じて、育成担当者や周囲の従業員に対してオンボーディングに関する研修や説明会を実施することも効果的です。
企業のオンボーディングの成功事例
サイボウズ株式会社
ソフトウェア開発会社であるサイボウズ株式会社では、営業部門において「3ヶ月で1人で提案ができるようになること」をゴールとしたオンボーディングが行われています。同社では、以下のように月毎にオンボーディングの内容を設定しています。
■1ヶ月目
・サイボウズの組織、製品についての学習
・適宜テストによる習得度の確認
■2ヶ月目
・提案のパターンの学習
・商談同席によるOJTの実施
■3ヶ月目
・サイボウズのパートナーについての学習
・顧客先での提案体験
・3ヶ月間の学びを基にした課題発表
オンボーディングにより、営業経験の有無やそれまでのキャリアに関わらず1人立ちを実現しています。
(参考:「働き方だけじゃない!サイボウズ100人100通りの学びの機会 ~営業本部オンボーディング研修編~」)
株式会社メルカリ
フリマアプリ「メルカリ」を運営する株式会社メルカリでは、エンジニア向けに「信頼関係の構築や早期の戦力化」をゴールとしてオンボーディングを実施しています。同社では、以下のようなオンボーディング施策を実施しており、離職の防止や採用コストの削減に繋げています。
■エンジニアオリエンテーション
・エンジニア組織の説明
・現状の課題や展望の共有
■オンボーディングポータルの活用
・企業情報や仕事に関する情報の集約
■メンター制度の採用
・知識が豊富なエンジニアのアサイン
・技術領域ごとのオンボーディングの型化
・メンターランチによる相互理解
■オンボーディングサーベイの実施
・サーベイによるオンボーディングの進捗管理
・サーベイ結果に基づいたKPI設定やサポートの実施
(参考:「すべての新入社員に素晴らしいオンボーディング体験を」リモートオンボーディングを成功させる施策 #メルカリの日々」)
コネヒト株式会社
家族を支えるWebサービスやアプリケーションの開発・運営を行っているコネヒト株式会社では、「コネヒトのカルチャーを理解して、早期に活躍できる状態にすること」をゴールとして、3ヶ月間のオンボーディングを実施しています。以下のような施策を実施することで、コミュニケーションの活性化や視界のすり合わせなどを行っています。
■ビジョンとバリューの理解
・ビジョンの共有
・バリューの理解
■仲間との相互理解
・それぞれの仕事理解
・自分自身について発信する
(参考:「新入社員向け「オンボーディングツアー」のご紹介」)
法人向けの研修ならリンクアカデミー
リンクアカデミーではオンボーディングから即戦力に繋がる研修をご用意しております。
弊社の研修サービスでは、個人のスキル可視化を目的としたサーベイを使用し、適切な育成プラン・ゴールを設定した上で、新規入社者に対し、昨今のDX化に伴って必要とされている、PCスキルやITナレッジ、社会人としての基礎知識であるビジネスマナーまで、総合的にご支援させていただいております。
また、多様化する個人のキャリアニーズに応えるべく、
・㈱アビバが提供してきたパソコンスキルの講座提供
・大栄教育システム㈱が提供してきた資格取得を支援する講座
・ディーンモルガン㈱が提供してきた「ロゼッタストーン・ラーニングセンター」のマンツーマン英会話レッスン
といった、キャリアアップに関するサービスをフルラインナップで展開してきた実績と経験を活かし、幅広い課題に対して、お客様のご状況に合わせた最適なソリューションを提供しています。
まとめ
新規入社者が会社や職場に慣れて、早期に戦力化するためにオンボーディングは有効な手段です。オンボーディングは研修の実施といった短期的な関わりではなく、研修やOJTなどを組み合わせた中長期的な育成プログラムです。そのため、全体のゴールやプランをしっかりと設定し、適宜振り返りと軌道修正を行うことが必要になります。適切なオンボーディングを実施することで、パフォーマンスの向上や採用コストの削減、チームワークの向上といったメリットを得ることができるため、ぜひ実施をご検討ください。
オンボーディングに関するよくある質問
Q1:オンボーディングとは?
A1:オンボーディングは、「船や飛行機に搭乗する」という意味を持つ「on-board」に由来している言葉であり、「参加する状態」「加入するタイミング」といった使われ方をしています。ビジネスシーンでは、「新規入社者や新規顧客が、自社の組織や商品・サービスにスムーズに慣れるためのプロセス」としてオンボーディングは活用されています。
Q2:オンボーディングに関連する用語は?
A2:オンボーディングに関連する言葉として、「入社者研修」や「新入社員研修」、「OJT」などが挙げられます。詳しくは以下の記事をご参考にしてください。
・「新入社員研修の内容とカリキュラムの作り方と研修の成功ポイントを解説」
・「OJTとは?目的・メリット・デメリットとOFF-JTとの違いを解説」
Q3:オンボーディングとポイントは?
A3:オンボーディングを効果的に実施するためには、以下のようなポイントを意識すると良いでしょう。
■新入社員がどのような状態になって欲しいかといった、具体的なオンボーディングのプラン・ゴールを設定する
■新入社員がすぐに情報を確認できるように、企業情報や仕事の情報を一元管理する
■上司や先輩、同僚とのコミュニケーションの場を設ける
■関わり方や制度のように、周囲が「提供できること」と「提供できないこと」について期待値をすり合わせる
■ツールや制度、人の意識やスキルといった、オンボーディングに関連する教育体制を整備する