OJTとは?目的・メリット・デメリットとOFF-JTとの違いを解説
目次[非表示]
- 1.OJTとは
- 2.OJTを活用する目的
- 3.OFF-JTとの違い
- 4.OJTのメリット
- 4.1.実践的な知識やスキルが身につく
- 4.2.従業員同士のコミュニケーションが増加する
- 4.3.対象者に合った育成を実施できる
- 5.OJTのデメリット
- 5.1.体系的な研修は行いにくい
- 5.2.指導側に負担がかかる
- 5.3.習得する知識やスキルにムラができる
- 6.OJTがうまくいかない理由
- 6.1.十分な指導時間が確保できていない
- 6.2.指導スキルを習得できていない
- 6.3.OJTの目的が伝わっていない
- 7.OJTを成功させるポイント
- 7.1.目的を明確にする
- 7.2.全体の計画を設計する
- 7.3.定期的に振り返りを行う
- 8.リンクアカデミーの研修サービス
- 9.リンクアカデミーの研修導入事例
- 10.記事まとめ
- 11.OJTに関するよくある質問
人材育成は企業にとって成長に不可欠なものであり、多くの企業が「どうしたら効果的な人材育成ができるか」や「従業員が早く独り立ちする方法」などを共通の課題として抱えています。人材育成には様々な方法がありますが、代表的なものの1つが「OJT」です。OJTは一般的な育成方法として企業の多くが導入していますが、慣例的なものになっている所もあるのではないでしょうか。改めてOJTの基本的な知識やOFF-JTとの違い、OJTを成功させるポイントなどを確認しておきましょう。
OJTとは
OJTは「On the Job Training」を略したものであり、通常の業務を通じて先輩社員や上司から指導を行う育成方法です。
厚生労働省が公表している「令和3年度能力開発基本調査」では、「計画的なOJTについて、正社員に対して実施した事業所」は調査対象企業全体の59.1%だと示されています。正社員以外にもOJTを実施している企業もあり、多くの企業が育成方法の1つとして採用していることがわかります。
OJTを活用する目的
多くの企業が採用しているOJTですが、どのような目的で活用されているのでしょうか。代表的なものをご紹介します。
・生産性の向上
まずOJTが実施される目的の1つとして「生産性の向上」が挙げられます。生産性の向上はOJT以外の育成全般の目的ではありますが、特にOJTでは実際の業務を通じて指導を受けることができるという特徴があります。基本的には1人1人に担当の先輩社員や上司が就くことになるため、詳細な業務の流れやそもそもの業務の目的などを深く知ることができる機会が増えます。
他の研修・育成方法と比べて日常の業務と密接に直結しているため、実践的な知識やスキルを身につけて生産性を向上することが期待できます。
・離職の防止
従業員が離職をする主な理由として、「人間関係の不和」や「コミュニケーション不全」が挙げられます。特に入社して間もない従業員については、周囲と馴染めない状況が続くことは大きなストレスとなります。OJTは業務的な指導と共に、日常的なコミュニケーションを取ることができます。そのため、コミュニケーション量を維持・増加して、離職を防止することを目的としてOJTを採用する企業も少なくありません。
OFF-JTとの違い
OJTとOFF-JTの特徴を、「内容」「効果」「コスト」の3つの観点から表にまとめました。それぞれの特徴を理解しておくことが、研修体系構築の第一歩となります。
項目 |
OJT |
OFF-JT |
---|---|---|
内容 |
|
カリキュラムの標準化や品質コントロールがしやすいが汎用的な内容になってしまう |
効果 |
実際の業務の流れの中で適宜指導を受けるため、すぐに実務で実践できる |
学習すべきポイント(概念・フレームワークなど)を研修カリキュラムに組み込めるため、全員が身に着けておくべきスキルが一律で学べる |
コスト |
業務の一環として現場社員が行うため、金銭コストは低く済むことが多いが、育成側の時間コストがかかる |
外部ベンダーなど教育専門の指導者が行うため、金銭コストはかかるが、指導者の時間的コストへの影響が少ない |
OJTのメリット
実践的な知識やスキルが身につく
OJTは実際の業務を通して直接先輩社員や上司から指導を受けることができるため、他の研修方法と比較して実践的な知識やスキルを身につけることができます。中にはプロジェクトや共通の業務を一緒に行う場合もあるため、現場で求められる業務のスピードやクオリティを身近で学ぶことができるでしょう。
指導を受ける側だけではなく、指導をする側についても実際に後輩や部下を育成する担当者として指導方法やマネジメントの手法を学ぶことができます。
従業員同士のコミュニケーションが増加する
OJTのメリットとして、従業員同士のコミュニケーションが増加することも挙げられます。直接指導が行われるため、従業員同士が話す機会が自然と増えて関係性が深まることが期待できます。また、業務を通じて上司や先輩社員、同僚と関わる機会が増えることで、それぞれの得意領域や専門分野なども理解することができます。そのため、必要になった時にスムーズに連携・相談ができるようになるでしょう。
また、業務だけではなく普段働く中で感じていることや不安に思っていることなども聞くことができるため、職場に対する信頼感を増すこともできます。
対象者に合った育成を実施できる
集合型研修のようなOFF-JTでの育成は体系的に知識やスキルを提供することができる一方で、育成対象者のそれぞれのペースには合わせにくい面があります。昨今では、研修前に事前にテストを行うことでクラス分けを行い、個々人のスキルレベルに合わせた施策を導入する企業も増えていますが、OJTでは1人1人に対して指導・育成を行うため、それぞれのタイプや特性、習得スピードに合わせてサポートを行うことができます。対象者に合った育成を実施することは、結果として習熟度を効果的に上げることに繋がります。
OJTのデメリット
体系的な研修は行いにくい
OJTは業務を通じて指導を実施することができますが、その分全体像から体系的に教えることが難しい場合があります。社内の教育プログラムが整っていない場合には、必要になったタイミングでしか指導を行うことができない可能性があります。その結果、全体像を理解しないままOJTが終了してしまい、上手く業務を遂行することができなくなることが懸念されます。
OJTで実践的な指導を実施する前段階として、社内の業務の全体像や基礎的な知識を学ぶ機会を提供することが必要です。そのような機会が提供できないという場合は、OJT以外の選択肢も視野に入れておく必要があるでしょう。
指導側に負担がかかる
OJTで指導する側は自身の業務に加えて、後輩や部下の指導をする必要があります。そのため、サポートが不十分である場合には負担が大きくなってしまうことがあります。指導側に対するサポート内容や支援体制を整えないままにしておくと、自身の業務が滞ってしまい長時間労働やストレスの増加に繋がります。
指導側が不安定な状態が続くと、指導内容も不十分になり結果的に育成ができないことにもなりかねません。適切に現場の状況確認や指導側の悩みの解決を実施して、無理のないOJTを実施することが大切です。
習得する知識やスキルにムラができる
指導する従業員の全員が指導スキルが高いことはあまりないでしょう。加えて従業員のタイプや特性、それまでの経験、得意な領域は様々であるため、指導する内容や基準にはムラができやすくなります。習得する知識やスキルにムラができると、業務を遂行する上でミスやトラブルが発生することが多くなる可能性があります。
その点、多くの企業で導入されている一斉研修であれば、同時に受講者の時間を一定割く必要はあるものの、「同一の基準で」知識やスキルを身に着けることが可能です。
一斉研修のような同一基準での研修実施がどうしても難しい、OJTでないと対応ができないことがあるという場合は、OJTで指導を受ける側、指導をする側のどちらに対してもフィードバック内容や業務への理解度の確認・すり合わせを行うことが必要です。
OJTがうまくいかない理由
十分な指導時間が確保できていない
OJTは通常の業務に加えて指導を行う必要があります。そのため、場合によっては普段の業務に多くの時間を取られてしまい、そもそも指導をする時間を確保できていないケースも見受けられます。「時間が空いたら教える」「気になったら聞く」というように指導するタイミングが不定期になると、結果として後回しになってしまうことが多くなるでしょう。
定期的に指導の時間を抑えておくと共に、指導側に対する適切な業務配分を行って負担を軽減する必要があります。また、業務量を鑑みて内部でのOJTがそもそも現実的なのかという観点もしっかり議論できていないままに現場任せにしてしまうことは避けるべきです。
指導スキルを習得できていない
OJTで十分な指導を実現するためには、業務の知識やスキルと共に指導スキルも必要です。自分がやっていることを、言葉にして伝わるように伝えることは訓練せずにできる人ばかりではありません。自身の業務内容を整理して伝えるスキルや、相手の意見をきちんと聞いて良い方向に促すコミュニケーションスキルなど、指導に必要なスキルをしっかりと身につける機会を提供しない場合は、OJTが上手くいかないことが多いでしょう。
研修対象者に同じ基準で身に着けてほしいスキルに関しては「一斉研修」、現場・配属先によって対応方法が異なる事象に関しては「OJT」という様に、適切に研修方法を組み合わせて実施する必要があります。
OJTの目的が伝わっていない
OJTが上手くいかない理由として、「そもそもなぜOJTを実施しているか」や「OJTでどのような状態にしたいのか」が従業員に伝わっていないことも挙げられます。目的が不明瞭なままでは、実際にどのようなポイントを意識するのかが分からなくなってしまいます。
「大体新入社員にはOJTを実施するもの」「これまでやってきたから」という理由ではなく、しっかりとOJTを実施する目的を共通認識として持つようにしましょう。
OJTを成功させるポイント
目的を明確にする
まずはOJTを実施する目的を明確にしましょう。この段階では、「OJTを通じて従業員にどのような状態になって欲しいのか」や「どのような成果を得たいのか」といったことを言葉にして整理します。実際の手順としては、下記のように目指す姿と共に、自社の現状と課題を洗い出すことから始めると良いでしょう。
・自社の目指す姿やビジョン、求める人材像から考える
・実際に現場の従業員の声を聞く
・社内の現状を正しく把握するためにアンケート等による「定性データ」、定性データの根拠となるファクトとして「定量データ」を取る
全体の計画を設計する
業務の状況に応じて柔軟に対応することは大切ですが、行き当たりばったりな状況が続くとOJTは上手く機能しません。現状把握や議論を通じて目的を明確にした後は、それを実現するための計画を設計することが大切です。OJTの目的やテーマ、指導側に対する研修の内容、OJTのサポート体制などの全体像を整理してスケジュールに落とし込みましょう。
最終的なゴールと共に、週単位や月単位で達成したい目標を細分化することで、し、その実現のために適切な方法は何かということを戦略的に考えることで、更に全体の計画を見通すことができます。
定期的に振り返りを行う
効果的な施策を実施するためには、「定期的に効果測定を行う」ことが重要です。OJTにおいても、「計画を実行してから放置」では本当に効果が出ているのかを確認することができないのに加えて、生じている問題を察知することができません。
指導される側の理解度の確認や疑問点の解消と共に、指導する側のフィードバック内容の確認やノウハウの共有などを含めて、定期的に振り返りを行うことをおすすめします。
リンクアカデミーの研修サービス
リンクアカデミーは「あなたのキャリアに、本気のパートナーを」をミッションに掲げて個人が「学び」を通じ自らのキャリアを磨き上げられる場を目指しています。
独自の「診断技術」と「変革技術」を用いて数多くの企業様を支援させていただいてきた実績を元に、人材育成を共に行いたいと考えております。
そのために
・㈱アビバが提供してきたパソコンスキルの講座提供
・大栄教育システム㈱が提供してきた資格取得を支援する講座
・ディーンモルガン㈱が提供してきた「ロゼッタストーン・ラーニングセンター」のマンツーマン英会話レッスン
といったキャリアアップに関するサービスをフルラインナップで展開しております。
この実績と経験を活かして、
・内定者・新入社員の育成
・生産性向上
・営業力強化
・DX推進
といった幅広い課題に対してもソリューションを提供しています。
リンクアカデミーの研修導入事例
・ネットワンシステムズ株式会社様
・東京建物株式会社様
・株式会社フロム・エージャパン様
・株式会社トーコン様
記事まとめ
OJTは多くの企業で採用されている人材育成の方法です。しかし、一般的な方法である反面慣例的に行われているケースも見受けられます。目的やサポート体制が整っていないままでOJTを実施すると、現場従業員の負荷の増大やOJTの効果の低減に繋がる可能性があります。OJTの特徴やメリット・デメリットをしっかりと把握し、成功させるためのポイントを確認しておきましょう。現状の組織状態と照らし合わせた上で、指導側・指導される側にとって長期・短期の視点で見た時にOJTが適切であるのかを確認しておきましょう。
OJTに関するよくある質問
Q1:OJT研修では何をする?
A1:OJT研修では下記のような内容を実施することが一般的です。
・ティーチング
実際に業務をする中で生じた問題や疑問に対して、先輩社員や上司がそれまでの経験や知識を基にして指導を行います。指導する側が教えることができる場合にはそのまま指導しますが、専門的な知識や経験したことがないことに対しては無理に指導する必要はありません。答えられる範囲で答えた上で、知識や経験のある人に助言やサポートを仰ぐことも重要です。
・コーチング
やり方や答えを全て教えるのではなく、自分の意見を引き出します。そもそも教えていないことに対して「なぜ分からないのか」と聞くことは効果的ではありませんが、それまでに伝えたことや学んだことを基にしたら分かることは一度考えてもらうことも良いでしょう。その過程で仕事に対する姿勢を育てると共に、思考をする訓練や癖づけを行うことが期待できます。
・悩みや不安の解消
業務的な内容以外にも、普段会社で働く中で感じていることや、キャリアについての悩みなどを解消することもOJTの内容の1つです。業務と関係が無いように見えますが、パフォーマンスと心理状態は密接に関係しています。ご機嫌をとって甘えさせるというわけではなく、「思考を邪魔しているもの」を取り除く関わりをすることは生産性や育成効果を高めるために重要です。
Q2:OJT研修は誰が担当すべき?
A2:ある程度業務を独り立ちして実施できる従業員が指導することが一般的です。多くの場合では3年目〜5年目の従業員がOJTの指導担当者を担っています。また、組織の状態次第ではそもそもOJTが研修方法として適切ではないという場合もあるため、OJTに拘るのではなく、社員の効果的な育成のためには何が適切な方法なのかを根本から考えるこが必要になることもあります。