人事評価制度とは?メリット・評価項目・解消すべき課題について
目次[非表示]
- 1.人事評価とは
- 2.人事評価の種類
- 3.人事考課との違い
- 4.人事評価の目的
- 4.1.従業員の成長を促進
- 4.2.従業員のモチベーション向上
- 4.3.人員配置の最適化
- 4.4.企業理念の浸透
- 5.人事評価の評価基準
- 6.職種別人事評価項目の例
- 7.人事評価制度に関する課題
- 7.1.企業理念と接続されていない
- 7.2.等級制度・評価制度・報酬制度がつながっていない
- 7.3.人事評価の背景が共有されていない
- 7.4.評価者によってバラつきが出る
- 7.5.そもそもスケジュールが守れていない
- 8.法人研修ならリンクアカデミー
- 9.リンクアカデミーの研修導入事例
- 10.人事評価に関するよくある質問
- 11.まとめ
従業員の成果や行動を評価し、報酬の内容を決定するための基準をつくるのが人事評価です。多くの企業が様々な仕組みやシステムを導入して、公平で納得感のある人事評価を行おうとしています。人事評価は経営から従業員に向けたメッセージでもあるため、その背景や内容をしっかり整えておく必要があります。本記事では、人事制度の構築や見直しに役立つ人事評価の特徴や例についてご紹介します。
人事評価とは
人事評価とは、従業員の報酬を決定するためにその成果や行動を評価することを指します。人事評価はお金に関することであるため、公平性や納得感がない場合には従業員からの不満があがりやすいものでもあります。
そのため、人事評価を行う際には点数をつけるだけではなく、その背景や理由についてもしっかりと検討をするとともに、従業員に対するフィードバックや説明を行うことが不可欠です。良い人事評価を行うことができれば、従業員エンゲージメントが向上し、人材育成にもつながります。
人事評価の種類
等級制度
等級制度とは、役割や職務、能力などで従業員の段階分けを行う制度を指します。等級制度は単なる序列付けではなく、従業員のキャリアや成長のステップを示すものです。等級制度が整備されることで、従業員は自分にはどのような成果や行動が求められており、次のステップに進むためにはどの部分を伸ばせば良いのかといったことが明確になります。
また、昇格や降格の基準についても設定することになるため、会社として求める人材像を伝えることにも等級制度は役立ちます。
評価制度
評価制度は、従業員の成果や行動に対してどのような基準で評価を行うのかについて定めたものです。仕事内容や目標に対する達成度合い、バリューや行動指針の体現度合いといった様々な項目の中から、自社の目指す組織像や求める人材像を育むために必要なものを評価項目に設定します。
評価制度は、従業員の成績や点数を決定するものではなく、従業員の成長サイクルを回す仕組みであると言えます。目標設定・アクション・評価・フィードバックといったサイクルを回すことで、従業員とともに成長を実現します。
報酬制度
報酬制度とは、従業員の給与やボーナスといった報酬の内容を決定するためのルールです。等級制度と紐づいた基本給や、評価制度をもとにした昇給、昇格など、従業員の頑張りにどのように報いるのかについて定めています。
報酬制度は、「何に対してどのような報酬を支払うのか」を分かりやすく整理することが大切です。昇給の金額やボーナスの計算方法などは、数字先行になるのではなくなぜその報酬になるのかといった、理由や背景をしっかりと説明できるようにします。
人事考課との違い
人事評価と似ている言葉として、「人事考課」があります。人事考課とは、従業員の実績や能力、勤務態度について定期的に評価を行うことを指します。企業によっては人事評価と人事考課の区別を特に行わず、同じものとして扱っています。実際に、人事評価と人事考課には大きな違いはありません。
厳密に言うと、人事考課は従業員と上司、人事の間でしかその内容や評価を共有しないのに対して、人事評価の中には従業員同士で目標や進捗などを共有するものがあるというように、その公表範囲などで違いがあります。人事評価の1つの形として、人事考課があるという捉え方をすると良いでしょう。
人事評価の目的
従業員の成長を促進
人事評価を行う目的として、従業員の成長を促進することが挙げられます。人事評価では会社として目指す組織像や求める人材像といったものをもとにして、等級制度や評価制度、報酬制度が定められます。そのため、人事評価の運用を通じて従業員には望ましい成果や行動を伝えることができます。
どのようなことを期待されているかや、求められていることの明確化を行い、創出した成果や行った行動に対する評価とフィードバックを行うといった、一連の成長サイクルを人事評価の中で回すことができます。成長サイクルを回していくことで、従業員の成長を促進することができるでしょう。
(こちらもチェック:「人材育成とは?人材育成の目標・考え方・設計方法を解説」)
従業員のモチベーション向上
人事評価は、従業員のモチベーションを向上するものでもあります。従業員のモチベーションを高めて、より高いパフォーマンスを発揮してもらうためには、「金銭報酬」と「感情報酬」のそれぞれを提供することが大切です。金銭報酬とは、給与やボーナスといったお金による報酬のことを指しており、感情報酬は感謝や信頼といった感情的な報酬のことを指しています。
人事評価では、金銭報酬はもちろん感情報酬の提供を行うことができます。成果や行動に対する評価を行った上で、日々の頑張りへの労いや感謝をフィードバックのタイミングで伝えたり、表彰制度を活用したりといった工夫が考えられます。このような工夫で、従業員に対して感情報酬を提供し、モチベーションを高めることができます。
(こちらもチェック:「エンゲージメントとは?ビジネスにおける意味や高める方法を紹介」)
人員配置の最適化
会社の中での人員配置を最適化し、組織体制を整えるためにも人事評価は活用されています。人員配置を行う際には、従業員のスキルや能力、それまでの経験、本人の特性など様々な要素について考慮して、その検討が行われます。多面的な要素に対して、うまくバランスをとることで従業員の才能や能力を引き出すことが可能です。
そのため、まずは従業員の特性やスキル、実績などを把握することが必要となります。その点では、人事評価は一定の期間の中での従業員の成果や行動について、評価の基準を設けて確認することができる仕組みとなります。従業員のスキルや能力を把握するには「見える化」も重要です。企業理念やビジョンに紐づいた戦略的な人員配置をするためにも、従業員のスキルを可視化し、特性などを考慮した人員配置することで、従業員がより一層活躍することができると考えられます。
企業理念の浸透
人事評価は、企業理念の浸透ツールとしても活用されています。人事評価は、「経営から従業員に向けたメッセージである」と表現することができます。人事評価にはミッションやビジョン、行動指針といった会社として大切にしている理念が反映されていることが多く、人事評価で具体的にその体現方法を伝えることができます。
等級制度では、具体的にどのような人材を求めているのかについて伝え、評価制度ではどのような基準を求めているのかについて伝えています。また、報酬制度では求める人材に対しての処遇を伝えているため、一貫して企業理念の体現を求めることができます。
人事制度で定めている基準や行動などをもとにして日々の業務にあたることで、自然と企業理念を体現することにつながると言えるでしょう。
人事評価の評価基準
成績による評価
人事評価の方法として、「成績による評価」を行うことは一般的でしょう。成績による評価では、定めた目標に対してどの程度達成できたのかについて、その達成率などをもとにして評価を行います。
多くの場合は、期初に設定した業務目標に対する達成度合いである「業務目標達成度」による評価が行われます。また、業務目標を達成するためにクリアするべき課題について設定した、「課題目標」についての達成度についても評価の項目として採用されることがあります。
■業務目標達成度の例
・売上目標○円に対して、どの程度達成したか
・顧客満足度○%に対して、どの程度達成したか
■課題目標達成度の例
・売上の増加に向けた新規アポイントの獲得数
・顧客満足度向上に対する調査の実施件数
能力による評価
成績による評価とともに、従業員の能力による評価もよく行われています。能力に対する評価では、従業員が元々保有している能力にはどのようなものがあるかといった「保有能力に対する評価」と、実際に能力を発揮することができているかといった「発揮能力に対する評価」などが行われます。
保有能力に対する評価は、業務を遂行するために必要となる知識やスキルといったものを評価の対象とします。勤続年数や経験業務、保有資格なども参考にしつつ、その従業員がどのような能力を保有しているのかといったことを考えます。
発揮能力に対する評価では、実際にどのような能力が発揮され、業務の推進や課題の解決が行われているのかについてを評価の対象とします。成績による評価と併せて、発揮した能力についての評価が行われます。
姿勢による評価
成績や能力だけではなく、仕事に対する姿勢といった面でも評価が行われます。姿勢による評価では、日常的な勤務態度や周囲とのコミュニケーションの取り方といったものが評価の対象となります。
成績や能力と比較して、主観的になりやすい評価項目ではありますが、組織風土の醸成やヒューマンスキルの育成などを行うことが期待できます。特に、新入社員については高い専門性やスキルの発揮を期待しないほうが成長を促進できる場合が多いため、基本的に会社の中で必要とされる態度や姿勢といったことを人事評価の中で伝えることが大切です。
姿勢による評価を行う際には、上司からの評価だけではなく実際に業務で関わっている周囲からの評価についても加味することで、より実態に即した評価を行うことができるでしょう。
職種別人事評価項目の例
事務職の人事評価
事務職の人は、営業職の人のように明確な売上目標がないことが多いため、中にはその目標の設定の仕方や評価の方向性について迷っている方もいるのではないでしょうか。
事務職の人事評価の項目を考える際には、「○%達成」といったような定量的な目標を立てやすい「社内での事務処理のミスやクレーム減少」や「業務プロセスや業務内容の効率化」といったものを成績目標として検討すると考えやすいでしょう。また、「○ヶ月以内に達成する」といった期日内に完了できたかといった目標を設定することで、人事評価が行いやすくなります。
また、能力評価については事務職として必要な正確性や効率性といったものに加えて、周囲とのコミュニケーションといった協調性や協働性といったものが評価の対象になると考えられます。
営業職の人事評価
営業職は期内での売上目標の達成に取り組むことになるため、比較的目標を設定しやすいと言えます。
営業職の目標を設定する際には、売上金額といった最終目標に加えて、売上目標を達成するための中間目標についても設定することで、評価を行いやすくなります。例えば、新規アポイント設定数や受注率といったものを中間目標として設定することで、人事評価とともに日常でのPDCAも回しやすくなることが期待できます。
営業職の能力評価としては、お客様に対する提案を進めるために必要な企画力や提案力、交渉力といったものを設定するのが一般的でしょう。また、商談から契約までをスムーズに進めるための正確性や契約に関する知識といったものや、自らデータ分析しデータを軸に判断していることも能力評価の対象とすることができます。
技術職の人事評価
現場の施工やシステムの開発・管理などを行う技術職の人は、事務職の人と同様に比較的目標を設定しにくい職種であると言えます。
技術職の場合は、納品や施工をしっかりと遂行できるかといったことが評価のポイントとなります。例えば、「現場の施工を納期内に実施できたか」や「システムの開発を○ヶ月以内に行えたか」といった、期日や進捗に関する目標を設定します。
また、スピードに加えてクオリティについても人事評価の対象とすることで、仕事の質を向上することが期待できます。この場合は、「納品の中でトラブルが発生していない」や「お客様からのクレームがない」といったような指標を設定することで、定量化することができます。
能力については、保有している技術力や専門スキルといったものが評価の対象となります。また、スムーズな納品を行うためのコミュニケーション能力といったものについても、重要な評価項目です。
人事評価制度に関する課題
企業理念と接続されていない
人事評価制度が上手く運用されない場合に生じている課題として、「企業理念と接続されていない」といったことが考えられます。人事評価制度は従業員に点数をつけるためのツールではなく、企業理念の体現や従業員の成長を促すための仕組みです。
そのため、人事評価制度が独立して設計・運用されるのではなく、企業理念やそこに込められている想いが反映されていることが大切です。人事評価制度を設計する際には、まずは企業理念をどのように反映するのかについて考えるようにしましょう。
等級制度・評価制度・報酬制度がつながっていない
等級制度、評価制度、報酬制度といった、人事評価制度を構成している要素がつながっていない場合にも、人事評価制度の運用はうまくいきません。例えば、等級制度では「前例のないチャレンジを行う人」が望ましい人材として設定されているにも関わらず、評価制度や報酬制度が年功序列的な考え方をベースにして設計されている場合には、3つの制度がつながっていないと言えます。
3つの制度を設計する際には、それぞれ独立して成り立たせるのではなく、企業理念やポリシーといった軸に沿って一貫性を持たせることが大切です。
人事評価の背景が共有されていない
従業員に対して人事評価の背景が共有されていない場合にも、人事評価制度がうまく運用できないことが多くなります。人事評価制度は、経営から従業員に向けたメッセージであるため、評点の付け方や報酬の支払い方だけではなく、「なぜこの内容になっているのか」といった意図や背景も含めて共有することが大切です。
人事評価制度の説明会の実施に加えて、評価のタイミングでしっかりと評価の理由や背景についてフィードバックを行うことで、徐々に従業員の理解を促すことができます。
評価者によってバラつきが出る
近年は人事評価のツールの活用を行っている企業が多くなっていますが、人間が人間を評価するといったことには変わりありません。そのため、人事評価を運用する中で評価者によって従業員の評価の仕方にバラつきが生じることがあります。同様の成果や行動に対して、あるひと人は厳しく評価を行い、ある人は優しい評価を行うといったことが続くと、人事評価制度が上手く運用できません。
この場合は、「厳しめにする」といったニュアンスだけではなく、しっかりと見るべき観点について評価者に共有することが大切です。
そもそもスケジュールが守れていない
人事評価制度の運用が上手くいっていない企業で、意外と起こりがちなケースとして「そもそもスケジュールが守れていない」といったことが挙げられます。ここで言うスケジュールとは、期初の目標設定から期末の評価までの一連の流れのことを指します。
目標設定面談や中間面談、評価面談、フィードバックといった流れをしっかりと実行できていない場合には、人事評価制度の効果を高めることが難しくなります。ここで大切なのは、上手く実行できない場合には他のやり方を模索するということです。上手くいかないままにするのではなく、業務負荷や求める効果などを加味して軌道修正を行いましょう。
法人研修ならリンクアカデミー
昨今、DX推進やデジタル化が企業の戦略において必要不可欠になっています。企業はこの戦略に基づいた人員配置をすることが急務ですが、適切な人員配置には従業員のスキルの可視化が重要ですし、ひとりひとりがデータ軸に判断できる能力が求められる時代となっています。
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人事評価に関するよくある質問
Q1:人事評価制度とは
A1:人事評価とは、従業員の報酬を決定するためにその成果や行動を評価することを指します。人事評価はお金に関することであるため、公平性や納得感がない場合には従業員からの不満があがりやすいものでもあります。
そのため、人事評価を行う際には点数をつけるだけではなく、その背景や理由についてもしっかりと検討をするとともに、従業員に対するフィードバックや説明を行うことが不可欠です。良い人事評価を行うことができれば、従業員エンゲージメントが向上し、人材育成にもつながります。
Q2:人事評価の目的
A2:人事評価は、従業員の報酬を決定するためだけではなく、様々な目的のために活用されています。例えば、人事評価を活用することで、従業員に対して求める成果や行動について意識をしてもらい、人材育成を実現することも目的の1つとして挙げられます。また、人事評価は企業理念の浸透や人員配置の最適化といったことに対しても活用されており、人事評価の有効活用によって企業経営の最適化を行うことが期待できます。
Q3:人事評価の項目
A3:人事評価の項目として、「成績」「能力」「姿勢」が代表的なものとして挙げられます。成績は、売上目標や顧客満足度など一定期間の中でどのような成果を創出したのかについて評価が行われます。また、能力は、業務を遂行する上で必要な専門知識やスキルといったものについて評価が行われます。そして、姿勢は勤務態度や周囲との関わり方といった日常で仕事に臨む姿勢・態度などについて評価が行われます。
まとめ
人事評価制度は賃金や報酬を決めるためのルールではなく、経営からメッセージを伝えて従業員の成長を実現するための仕組みです。そのため、人事評価制度を設計する際にはミッションやビジョンといった企業理念との接続性を考慮し、等級制度・評価制度・報酬制度がつながっているかを確認することが大切です。また、運用する中では従業員に対して人事評価制度に込めている想いや、評価の基準について共有することなどが重要です。