離職率の定義・日本の離職率平均は?計算方法や改善のためにできることも解説
目次[非表示]
- 1.離職率の定義
- 2.なぜ離職率が注目されるのか
- 3.日本の離職率の平均
- 4.離職率が高いことによるデメリット
- 4.1.採用コストが無駄になってしまう
- 4.2.ノウハウがたまりにくい
- 4.3.既存社員の負担を減らしにくい
- 4.4.育成コストが大きくなる
- 4.5.企業のイメージダウンにつながる
- 5.離職率が高い職場の原因
- 5.1.評価・待遇が低い
- 5.2.ハラスメントが多い
- 5.3.教育体制が整備されていない
- 5.4.柔軟な働き方ができない
- 5.5.残業が多い
- 6.離職率改善のためにできること
- 6.1.従業員満足度調査
- 6.2.評価制度改善
- 6.3.業務プロセスの見直し
- 6.4.コミュニケーションの最適化
- 6.5.採用時のミスマッチの減少
- 7.離職率改善に繋げる法人研修ならリンクアカデミー
- 8.リンクアカデミーの研修導入事例
- 9.離職率に関するよくある質問
- 10.まとめ
企業経営において、優秀な人材が離職せずに長い期間活躍してくれることは事業成果を創出するために大切なことです。一方で、「離職率は低いほど良い」という意見を目にすることがありますが、本来注目すべきポイントは、「適切な離職率であるかどうか」です。離職率が高すぎる場合も、低すぎる場合も問題があります。離職率の平均やその改善方法などを学ぶことで、自社の離職率を適切なものにする方法を検討しましょう。
離職率の定義
離職率の定義として、「ある時点で勤務していた従業員のうち、一定期間後に退職した人の割合」という著し方をすることができます。離職率を計算する式としては、以下のようなものが一般的です。
「離職率」=「離職者数」÷「一定期間の従業員数」×100
分母となる「一定期間の従業員数」は、「1年間」や「数年ごと」、「入社後3年間」、「新卒入社者」といったように、見たい離職率に応じて変更されます。
なぜ離職率が注目されるのか
離職率が注目されている背景として、労働者の意識の変化やそれに関する企業の評価のされ方の変化があります。
日本企業、特に高度経済成長期では雇用形態として年功序列・終身雇用が一般的でした。当時は、”労働者は1つの企業に定年まで在籍して勤め上げる”という考え方が主流であり、企業も従業員に対してお金やポストといったものを提供していました。企業と個人は相互に拘束しているような関係性であったと言い換えることができます。
しかし、市場のグローバル化や仕事に対する意識の変化によって、徐々に転職や独立といった会社で勤め上げること以外の働き方が個人にとって身近なものになってきました。その中では、1つの会社に長期間在籍するのではなく、何度かの転職を通じてキャリア形成を行う人が増えてきています。そのため、企業にとって従業員は一度採用したら長期間働いてくれる存在ではなく、会社にいる意味や目的が変われば外に出ていく可能性がある存在に変化しています。
以上のことから、これまでは企業と個人は相互に拘束していた関係から、相互に選び合う関係になっていると言うことができます。選び選ばれる関係の中では、個人は企業に雇用してもらう立場であることはもちろん、企業も個人に選ばれる立場になっています。
相互に選択する立場であるため、企業は従業員に選ばれる存在であり続けなければ、転職や独立などの理由で離職が増えることになります。すなわち、離職率は「どれだけ従業員に選ばれる企業であるか」を評価する指標であると考えられます。離職率が業界平均などと比較して高すぎる場合には、魅力的な企業ではないという判断をされることになるでしょう。
また、働き方の多様性が増している現在は、離職率は「各人材の状況に合わせた働き方の実現にどれだけ力を入れているのか」といったことを判断する材料にもなっています。例えば、出産や育児をする必要がある人材が職場に復帰して仕事と家庭を両立できる制度やサポートが充実していない場合は、結果として離職をすることになることが多いでしょう。
企業の魅力や制度の充実度合いを示す要素が強くなっていることから、離職率は注目されていると考えることができます。
日本の離職率の平均
では、実際に日本国内の離職率の状況はどのようなものなのでしょうか。厚生労働省が発表している「令和3年雇用動向調査結果の概況」によると、離職率は以下のように推移しています。
(出典:厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概況」入職率・離職率の推移)
■直近3年間の離職率の推移
・2019年:15.6%
・2020年:14.2%
・2021年:13.9%
日本国内の離職率は直近3年間では減少していることが分かります。全体的には14%程度で推移しており、リーマンショックや新型コロナウイルスの蔓延のタイミングでは若干離職率が増加しています。
また、新卒入社をした大学生が3年以内で離職する割合は、以下のように推移しています。
(出典:厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概況」学歴別就職後3年以内離職率の推移)
■直近3年間の新卒入社者(大学卒)の離職率の推移
・2017年:32.8%
・2018年:31.2%
・2019年:31.5%
大学卒の新卒入社者の3年以内での離職率は、直近10年間でもほぼ横ばいであり、概ね30%程度で推移していることが分かります。1年目、2年目、3年目での構成比についても、大きな変動はありません。
離職率が高いことによるデメリット
採用コストが無駄になってしまう
離職率が高い状態が続くと、採用コストが無駄になってしまうというデメリットが生じます。新しく採用を行う場合には、その費用は平均で90万円〜100万円程度かかっていると言われています。せっかく採用活動に注力したとしても、すぐに離職されてしまうとかけた採用コストがそのまま無駄になってしまいます。
金銭的なコストだけではなく、採用活動に投じた時間や人員といった面でのコストについても無駄になるため、事業活動に対して大きな影響が生じることになります。
ノウハウがたまりにくい
離職率が高く、長期間活躍してくれる従業員がいない場合には、企業内にノウハウがたまりにくくなります。一般的には、ある程度経験を積んだ従業員がそれまでに学んだ知識や身につけたスキルを整理することで、部下や後輩がスムーズに業務を遂行できるノウハウが蓄積されていきます。
離職率が高い場合には、従業員が自身のスキルをノウハウとして落とし込んで共有するタイミングが少なくなってしまうため、ノウハウが効率的に蓄積しづらくなるでしょう。
既存社員の負担を減らしにくい
組織やチームで仕事をする際には、適切な役割分担や業務の仕分けを行うことで従業員同士の負担を減らすことが大切です。しかし、離職率が高い場合にはそもそも業務を分担する従業員の人数が少ないため、役割分担を行うことが難しくなります。
その状態が続くと、1人1人の従業員の負担は大きくなってしまいます。新しく人材を募集して採用したとしても、すぐに退職してしまう場合には分担が中途半端になってしまい、かえって引き継ぎのコストが大きくなるでしょう。
育成コストが大きくなる
離職率が高くなると、育成にかかるコストも大きくなる傾向があります。人材育成は1日2日で行えるものではなく、ある程度長い期間を通して計画的に実施するものです。1年目で身につけてほしい知識やスキルと2年目以降で身につけてほしいものは異なることが多いため、その都度研修やOJTといった機会を通して育成・教育を行います。
離職率が高い場合には、育成を行っている最中に退職が発生することが多くなるため、それまでの育成計画やコストが無駄になってしまいます。また、新しく採用した場合でも再度1から育成・教育を行うことになるためその分大きなコストがかかることになります。
企業のイメージダウンにつながる
高い離職率が続いている場合には、企業のイメージダウンにつながることもデメリットとして挙げられます。近年は「ブラック企業」といったワードが広く認知されており、求職者は応募を検討している企業がブラック企業ではないかを調べることが増えています。
したがって、数年続けて業界平均よりも離職率が高くなっている場合には、「この会社は従業員に厳しいのではないか」といったイメージがつくことになります。離職率の高さは、企業のイメージにつながると言えます。
離職率が高い職場の原因
評価・待遇が低い
離職率が高い職場の原因として、評価・待遇が低い、悪いといったものが挙げられます。自分が行っている仕事内容や労働時間に対して十分な報酬が支払われなかったり、納得できる評価がなされなかったりする場合には、より条件が良い企業への転職を検討するようになります。
また、評価の公平さや報酬への納得感は、会社への愛着心や相互理解の度合いであるエンゲージメントにも影響しています。評価・待遇が低いことが原因でエンゲージメントが低くなることにより、その会社で働く意味を感じられなくなり、離職につながることが多くなります。
(こちらもチェック:「【事例あり】エンゲージメントとは?ビジネスでの意味や高める為のポイントを解説」)
ハラスメントが多い
ハラスメントが横行している職場についても、離職率は高くなる傾向があります。パワハラやセクハラはコンプライアンスに違反するものであり、企業として敏感に注意するべきポイントです。そのようなハラスメントが日常的に行われている場合や、それに対する意見を申し立てられない場合には、職場でのいづらさを感じることが多くなるでしょう。
ハラスメントが多い職場は離職率が高くなるだけではなく、企業のブランドやイメージ自体も大きく低下させることになります。
教育体制が整備されていない
離職が多い職場の原因として、社内の教育体制が整備されていないことが挙げられます。特に新規入社者にとっては、仕事ができるようになるまでは職場での居心地の良さや貢献実感を感じにくいものです。その状況に対して、教育プログラムが整っていない場合や、育成をできる人がいない場合などは、従業員は成長実感を感じられないままになってしまいます。
一方で、昨今では国際規模でDX化に伴うリスキリングも推奨されています。日々変化する世の中に対応した育成研修を導入していくことによって、従業員のエンゲージメントを高めることができます。また、研修の結果として各企業のDX化に向けた促進も期待できるでしょう。
(こちらもチェック:「社員教育とは?重要性・メリット・おすすめの方法・事例まで」)
柔軟な働き方ができない
自分に合った働き方を選びにくい場合についても、離職率が高くなると言えます。特に、近年は新型コロナウイルスの影響や働き方への意識の変化などにより、仕事の仕方を柔軟に変えることへの意識が高まっています。
リモートワークの実施や出産、育児との両立などがしにくい環境が続く場合には、柔軟な働き方ができる企業の方が働きやすいと感じやすくなります。時代に合わせた働き方への対応ができていない職場、企業は魅力を感じられなくなっているのが現実です。
残業が多い
残業が多い職場についても、離職が多くなる傾向があるでしょう。残業をすることが必ずしも悪いということではありませんが、適切な業務プロセスの見直しや業務の再分配が行われないまま長時間労働が慢性化している場合には、離職率が高くなります。
特に、長時間労働が続いて業務負荷が大きくなっていくと、身体的・精神的な不調者が出てしまうことがあります。不調者が多く出ることで、従業員は職場に対する危機感を感じて離職を判断することになるでしょう。
離職率改善のためにできること
従業員満足度調査
離職率をむやみに高めないためには、従業員との認識のミスマッチを防ぐことが大切です。多くの場合、離職の原因となっているのは期待と満足のすれ違いです。従業員が会社に対して期待していることが満たされない状態が続くと、より良い環境を求めて離職を検討・実施することになります。
そのため、まずは従業員が会社に対してどのような認識や感情を抱いているのかを把握することが重要です。把握する方法として、従業員満足度の調査の実施や従業員エンゲージメントサーベイの実施などが挙げられます。
評価制度改善
離職率を改善するためには、現行の評価制度を改善することが有効です。離職の主な原因の1つとして、評価への不納得感や給与に納得できないことが挙げられます。評価制度を改善して公平な評価や納得できる報酬を提供することで、離職率を適切な値にすることができるでしょう。
(こちらもチェック:「フィードバックとは?本来の意味や目的は?効果的な方法も解説」)
(こちらもチェック:「コンピテンシーとは?意味や活用シーンは?メリット・デメリットも紹介」)
業務プロセスの見直し
業務プロセスを見直すことも、離職率の改善のためには大切です。業務プロセスが最適なものになっていない場合には、残業の増加や業務負荷の増加といった問題が生じやすくなります。自社のビジネスプロセスを改めて整理して、お客様に対して価値を発揮するために「やるべきこと」と「やめること」を決めることが重要です。
特に、現場で業務がカスタマイズされる中では「やるべきこと」が多くなりすぎる傾向があります。そのため、「やるべきこと」の取捨選択をするといった意識で業務プロセスを見直すことでムダやムラを無くすことが期待できます。
コミュニケーションの最適化
離職率を改善するためには、コミュニケーションを最適化することも有効です。コミュニケーションの量と質が不足している場合には、会社と従業員の間で認識の不一致が起こりやすくなります。認識の不一致やズレが大きくなったり、長期間にわたったりすることで、従業員の会社に対する不信感は強まりやすくなります。
経営陣からのメッセージの発信や、管理職から積極的にコミュニケーションをとるなどの工夫を行うことで、従業員とのコミュニケーションを改善することができます。
採用時のミスマッチの減少
採用時のミスマッチを減少することは、入社後の離職率を改善するためにも大切な取り組みです。採用時に風土や働き方などの面で期待とのズレが生じてしまうと、入社後のパフォーマンスの低下にもつながります。
入社後に「こんなはずではなかったのに」といった気持ちを会社も従業員も感じることを少なくするためには、スキルや能力だけではなく理念や風土との相性、共感度合いといった面でも採用基準を設けることが大切です。
離職率改善に繋げる法人研修ならリンクアカデミー
離職率を下げるためには、会社に愛着心や帰属意識を持って日々の業務に臨める社員を育てていく必要があります。一方で、その時々の企業や人員の状況によっては、必ずしも満足な時間や育成環境を確保できるとは限らないのも事実です。環境を整えていく上では、育成に必要な工程と、かける時間や内容、既存社員の皆様の業務とのバランスを保ちながら計画していく必要があります。
弊社リンクアカデミーでは、基本から応用までExcelの正しい使い方を体系的に習得できる「基本研修・応用研修」から、業務効率化を実現させるための「Excel活用研修」、データから正しく根拠を導くための「データ分析・原因究明研修」など、幅広いソリューションをご用意しています。
また、DX化が進む中では欠かせない、ITスキルやITナレッジを定量的に可視化させるサービスもご用意しております。
周囲に助けて貰う機会が多く貢献実感を抱きにくい新卒においては特に、なにか一つ「できた」という実感が自信へと繋がり、仕事へのモチベーションにも大きな影響を及ぼすことが予想されます。
まずは日々の業務に身近なExcelから着手することで、若手の実務スキルレベルとともに帰属意識や成長欲求を育成を目指して参りましょう。
(詳しくはhttps://linkacademy-business.com/service/0015)
リンクアカデミーの研修導入事例
・ネットワンシステムズ株式会社様
・東京建物株式会社様
・株式会社フロム・エージャパン様
・株式会社トーコン様
離職率に関するよくある質問
Q1:日本の平均離職率は?
A1:日本の平均離職率は、直近3年では以下のように推移しています。
■直近3年間の離職率の推移
・2019年:15.6%
・2020年:14.2%
・2021年:13.9%
日本国内の離職率は直近3年間では減少していることが分かります。全体的には14%程度で推移しており、リーマンショックや新型コロナウイルスの蔓延のタイミングでは若干離職率が増加しています。
Q2:離職率が高い原因は
A2:離職率が高くなる原因としては、様々なものが考えられます。原因として、「評価や給与への不納得感」や「ハラスメントの横行」などが挙げられます。この他にも、充分な教育体制が整っていないことや、残業が多すぎることなども離職の原因として考えられます。総じて、企業として基本的に守るべきことが守られていない場合や、従業員が抱いている期待とのミスマッチが生じている場合には、離職率が高くなると考えることができるでしょう。
Q3:離職率改善のためにできること
A3:離職率を改善するためには、まずは従業員との間で期待と満足のズレが生じていないのかを把握することが大切です。期待していることが把握できていない場合には、従業員が求めていないことに対する対応が多くなってしまい、結果として会社に対する満足度は高まりません。従業員がどのようなことを求めているのかをしっかりと確認した上で、評価制度の改善や業務プロセスの見直しなどといった施策を実行することが大切です。
まとめ
離職率は、高いことだけが問題ではなく、高すぎる、ないしは低すぎるといったことが問題となります。適切な離職率ではない場合には、慢性的な人材不足や組織としての新陳代謝不足といった課題が生じることになります。適切な離職率にするためには、まずは国内や業界の平均を把握しておき、それと比較して現状を知っておくことが大切です。また、離職率を改善するためには施策を先行させるのではなく、まずは従業員の意識や期待を確認することで効果的な活動をすることができます。