OKRとは?Googleの目標管理手法の活用方法・KPI・MBOとの違いを解説
目次[非表示]
- 1.OKRとは?
- 2.OKRの要素と仕組み
- 2.1.Objective:定性目標
- 2.2.Key Result:定量指標
- 3.OKR設定と運用のポイント
- 3.1.ムーンショット水準で設定する
- 3.2.指標を分解し、組織全体で共有する
- 3.3.目標の自信度を設定する
- 3.4.振り返りを高頻度で行い、スコアリングを活用する
- 4.Googleも活用するOKRの6つのメリット
- 4.1.社員の方向性の統一
- 4.2.従業員エンゲージメントの向上
- 4.3.柔軟な軌道修正が可能
- 4.4.コミュニケーションが活発になる
- 4.5.人材の成長につながる
- 4.6.組織のノウハウやナレッジを蓄積できる
- 5.他の目標管理手法であるKPI・MBOとの違い
- 6.OKRを人事評価と結びつけてはいけない背景
- 7.OKR導入・運用のステップ
- 7.1.全社のOKRを設定する
- 7.2.フィードバックをもとに全社のOKRを調整する
- 7.3.部署や部門のOKRを設定する
- 7.4.部署や部門のOKRを調整する
- 7.5.個人のOKRを設定する
- 7.6.個人のOKRを調整する
- 7.7.週次でのチェックインを行う
- 7.8.中間の振り返りを行う
- 7.9.最終的な振り返りや評価を行う
- 7.10.次のOKRを設定する
- 8.OKRに適した組織とは
- 9.OKRの導入事例
- 9.1.株式会社メルカリ
- 9.2.株式会社ユーザベース
- 10.目標達成する組織のための法人研修ならリンクアカデミー
- 11.リンクアカデミーの研修導入事例
- 12.OKRに関するよくある質問
- 13.まとめ
目標設定や評価の方法には様々なものがありますが、企業の成長スピードを早める目標管理の手法として、OKRが注目されています。OKRという言葉は広く知られている一方で、その具体的な内容や活用方法については詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。本記事では、OKRに対する理解を深めるために、その内容やKPI・MBOとの違いなどについてご紹介します。
OKRとは?
OKRとは、「Objectives and Key Results」の略称であり、直訳すると「目標と重要な結果」といった意味になります。OKRは目標設定や管理方法の1つであり、目的・目標とそれらを実現する重要指標を定める方法です。元々、シリコンバレーで誕生したものであり、GoogleやFacebookといった有名企業が採用していることで注目を集めました。
OKRを上手く活用することで、従業員同士で目指す方向性を一致させ、スピーディーな計画の進行を実現することができます。
OKRの要素と仕組み
Objective:定性目標
OKRのOである「Objective」は定性目標とも呼ばれており、組織やチームとしてありたい姿や目指す方向性のことを指します。KGI・KPIやMBOといった他の目標設定・管理方法では、最終的な目標として定量的なものを設定することが多いですが、OKRでは最終的なゴールを「状態」としていることが特徴です。
例えば、「地域で最も顧客志向の店舗になる」といった定性的な状態をObjectiveではゴールとして設定します。定性的な目標を設定することで、「なぜこの目標を追っているのか」といった目標に関する意味やその背景について共通認識を持つことができるようになります。
良いObjectiveの特徴として、以下のようなものがあります。
■目指す状態や方向性といった定性的なゴールである
■必ず達成できるものではなく、挑戦的な目標である
■ミッションやビジョンと紐づいたものである
■メンバーが普段から意識がしやすく、覚えやすいキャッチーな言葉である
Key Result:定量指標
OKRのKRである「Key Result」は定量指標のことを指します。Key ResultはObjectiveに紐づいて、定性目標を達成するための重要指標、定性目標を達成した際にあるべき定量的な状態といったものが設定されます。
Key Resultは、「定性目標をどのように達成するのか」や「目的とどの程度の距離があるか」について把握するためのものであるため、Objectiveが定性的な状態を設定するのに対して、Key Resultは定量的な目標を設定します。
OKRではスピーディーに進捗確認や軌道修正を行うことが求められるため、Key Resultの数は増やしすぎるのではなく、可能な限り絞ることが必要です。Key Resultが多すぎる場合には、本当に重要な指標は何であるかが分かりづらくなってしまうといった問題も生じる可能性が高くなります。そのため進捗確認の際には、適切なマイルストーンを設定し、進捗の度合いを可視化することが重要となってきます。
良いKey Resultの特徴として、以下のようなものが挙げられます。
■測定可能な定量的な目標である
■本当にObjectiveの達成に重要なものに絞ってある
■短期間で測定することが可能である
■必ず達成できるものではなく、チャレンジングな目標である
OKR設定と運用のポイント
OKRによる目標設定や管理を行う際には、上手く運用するためのポイントがあります。ここでは、OKRを上手く設定して運用するためのポイントについてご紹介します。
ムーンショット水準で設定する
OKRによる目標設定を行う際には、「ムーンショット水準で目標を設定する」といったことがポイントとなります。ムーンショットとは、「月(moon)に向けたショット」といった意味で使われており、現状の延長線上ではなく挑戦的で達成が困難な目標を設定することを指します。
OKRでは、ObjectivesやKey Resultsを設定する際には「100%必ず達成できるものではなく、挑戦的で魅力的なもの」を考えることでその効果を高めることができます。簡単に達成することはできないが、チャレンジすることで達成に近づく目標を設定することで、挑戦する過程や達成に向けた努力により組織やチームの力を高めることができます。
そのため、ムーンショット水準での目標は、60%〜70%程度の達成ができれば成功という評価がされます。これは「達成しなくても良い」といった意味で考えられるものではなく、「全力を尽くしてギリギリ達成できるかどうか」といったチャレンジングな目標を設定することを奨励するといった意味合いで考えられています。
ムーンショットとともによく用いられる言葉として、ルーフショットがあります。ルーフショットとは、「屋根(roof)に届くショット」といった意味で使われている言葉です。ルーフショット水準では、達成は簡単ではないが可能なものが目標として設定されます。
ムーンショット水準で考えた目標の実現可能性があまりにも低い場合にはメンバーのモチベーションが低下することがあるため、ムーンショットとルーフショットの両方の水準で目標を検討・調整することをおすすめします。
指標を分解し、組織全体で共有する
OKRでの目標設定を行う際の大切なポイントとして、「指標の接続性を保ったまま分解し、組織全体で共有すること」があります。OKRは、全社のObjectiveとKey Resultsと、部署や部門でのObjectiveとKey Results、個人のObjectiveとKey Resultsといったように全社からチーム、チームから個人へと細分化されていきます。
この際に、全社の目標とチームの目標、個人の目標の接続性が失われてしまうと、全体として同じ方向に向かって行動することが難しくなり、結果として目標の達成度合いが低下する可能性があります。そのため、全体のObjectiveとKey Resultsの繋がりを意識して目標設定を行うことが求められます。
また、設定した目標の透明性を高めることも同様に重要です。OKRは、メンバー同士のコミュニケーションが活発になることで成功に向かうことができます。そのため、全体のObjectiveとKey Resultsについて全員が理解や意識ができるように、組織全体でその内容や背景を共有することが大切です。
目標の自信度を設定する
OKRで目標設定を行う際には、目標に対する「自信度」を設定します。自信度は一般的に、5段階や10段階といったレベル分けを行います。自信度を設定する理由として、「ストレッチゾーンで目標を設定する」といったことが挙げられます。
ストレッチゾーンとは、「達成や実現は簡単ではないが、努力することで到達することが期待できる状態にいること」を指しています。ストレッチゾーンでの目標設定を行うことで、それまでの延長線上ではなかった結果を得ることが期待できます。また、挑戦をする過程で生まれた工夫や努力といったものは、その後、組織のパフォーマンスを高めるための有用な武器となります。
ストレッチゾーンよりも簡単な目標設定を行うと、「コンフォートゾーン」に組織やチームがいることになります。コンフォートゾーンとは、「居心地の良い状態にいること」を指しており、この状態ではそれまでになかった結果や努力が生まれる可能性が低くなります。
一方で、あまりにも高すぎる目標を設定すると、「パニックゾーン」に入ることになります。文字通りパニックを起こしてしまう状態であり、パニックゾーンになるとかえって組織のパフォーマンスが低下する可能性が高まります。
適切にストレッチゾーンの目標設定を行うために、自信度を設定・確認して大体半分程度の自信があるレベルに調整することが大切です。
振り返りを高頻度で行い、スコアリングを活用する
OKRの運用を上手くいかせるためには、高頻度での振り返りやスコアリングが不可欠です。振り返りのタイミングが半年ごとや1年ごとになると、OKRによる目標管理は機能しなくなるため、週次や隔週といった高頻度での振り返りを行うことが求められます。
OKRでは、目標の達成に向けて密度の高いコミュニケーションを行いつつ、適宜軌道修正をおこなっていきます。そのため、タイムリーに現状把握を行う必要があるため、短いスパンでObjectiveとKey Resultsのスコアリングを行います。
スコアリングのやり方は様々ですが、一般的にはKey Resultsそれぞれの達成率を0%〜100%で評価します。また、Key Results全体の平均スコアがObjectiveのスコアとなります。この際に注意することは、「OKRのスコアが低かった場合には、それを軌道修正の材料にする」ということです。スコアが低かったことに注目しすぎるのではなく、すぐに次に向けたアクションを考える方へ意識を向けることで、結果としてObjectiveとKey Resultsの達成に対する効果的な活動を行うことができます。
Googleも活用するOKRの6つのメリット
社員の方向性の統一
OKRでは、定量的な目標だけではなく、その目的となる定性的な目標を設定するため、社員全体で目指している方向性やありたい姿に対する認識を揃えることができます。目指す方向性に対する認識がすり合うことで、社員の方向性を統一することが期待できます。
方向性の統一がなされることで、行動基準や判断基準が揃うことになるため、業務に対するムリ・ムダ・ムラを少なくすることができるでしょう。
従業員エンゲージメントの向上
OKRで目標設定や管理を行うことで、従業員エンゲージメントを向上することができます。従業員エンゲージメントとは、従業員と会社の間の相互理解の度合いや共感度合いを指す言葉であり、これが高まることで業績やパフォーマンスの向上につながります。
OKRでは、全社の目標や部署・部門の目標、個人の目標が接続されて設定されており、透明性が高い共有が行われているため、目標に対する納得感が高まります。その結果、会社としての方針に対する理解が深まり、従業員エンゲージメントが向上することが期待できます。
(こちらもチェック:「エンゲージメントとは?ビジネスにおける意味や高める方法を紹介」)
柔軟な軌道修正が可能
OKRは、他の目標管理方法と比較して短期間で目標に対する進捗確認や軌道修正を行うことになります。また、定量目標だけではなくそれを目指す目的が言語化されているため、「本当にこの指標で良いのか」といった会話が多くなります。
目的立脚で行動を考える習慣が生まれることで、本当に目標を達成するために必要なことを考えることが多くなります。その結果、柔軟に軌道修正を行なったり、目標の検討を実施したりといった活動が活発になります。
コミュニケーションが活発になる
OKRは目標管理方法でもありますが、その肝はコミュニケーションインフラを整えることにあります。OKRではObjectiveとKey Resultsが共有されており、その振り返りやスコアリングが短スパンで行われるため、自然と目標に対する会話が多くなります。
仕組みとして目標に関するフィードバックやアドバイス、相談が増えることで、社内のコミュニケーションが活発になります。コミュニケーションが活発になることで、メンバー同士の連携度合いや協力体制が改善することが期待できます。
人材の成長につながる
OKRを運用することで、人材育成や人材の成長を実現することができます。ObjectiveとKey Resultsを設定することで、メンバーは仕事や行動の目的を意識できるようになります。目的を意識した行動が習慣になることで、業務の中でその目的を捉える力を高めることができます。
また、ストレッチゾーンで仕事を行うことで、それまでとは違った工夫を仕事の中で行うことが多くなるため、業務の効率化やスキルの向上といった効果が出ることが期待できるでしょう。
組織のノウハウやナレッジを蓄積できる
OKRを運用するメリットとして、組織の中でノウハウやナレッジが蓄積されることが挙げられます。組織全体として挑戦的な目標を設定し、その達成のための活動を行う中では、それぞれが新しい知識やスキルを身につけながら仕事を進めることになります。
また、目標に対するコミュニケーションが活発になることで、情報交換やアドバイスを行う機会が多くなります。それぞれが現場で行なっている工夫が、相互のコミュニケーションの中で交換されることで、組織全体としてのノウハウやナレッジが増えるでしょう。
他の目標管理手法であるKPI・MBOとの違い
OKR以外の目標管理手法として、KPIによる目標管理とMBOが代表的なものとして挙げられます。それぞれの特徴やOKRとの違いを把握しておくことで、自社の目標管理の方法を見直しやすくなるため、その内容を確認しておきましょう。
KPIとの違い
KPIとは、「Key Performance Indicator」の略称であり、「重要業績評価指数」とも言われます。売上目標や営業利益といった最終目標(KGI)を達成するために到達すべき中間目標として設定されることが多く、KPIの進捗状況を確認することで目標との距離を把握することができます。
(こちらもチェック:「KPIとは?KGIとの違いや設定ステップ、目標達成のためのポイントなど徹底解説」)
KPIとOKRの違いとして、以下のような点があります。
■レビュー頻度
KPIのレビュー頻度は企業によって異なり、週次で行うこともあれば月次で行うこともあります。KPIの進捗状況は、最終目標を達成できるかを判断する指標となるため、あまりにも長いスパンでのレビューでは機能しません。
OKRでは3ヶ月程度で達成できる目標を設定するため、レビューの頻度もそれに応じたものになります。それぞれ企業ごとに最適なレビュー頻度があるため、KPIとOKR自体に大きな違いがあるわけではないと言えます。
■測定
KPIは定量的な指標が設定されるため、基本的には定量的な測定・評価が行われます。KPIの達成率でその進捗を評価することが多く、その点ではOKRと同様の測定方法であると言えます。
一方で、OKRではObjectiveとKey Resultsそれぞれの達成度合いを測定するため、Key Resultsの達成率の平均がObjectiveの達成率として扱われます。測定する対象の数や種類については、KPIとOKRは異なります。
■共有範囲
KPIの内容や進捗状況については、基本的に部署や部門といったチームの中で共有されます。他部署や他チームのKPIについては共有されないことも多いため、会社全体のKPIを知っている人はあまりいないでしょう。
一方で、OKRは全体のObjectiveとKey Resultsが共有されており、他部署や他部門の目標についてすぐに知ることができます。
■目的
KPIを設定する目的として、「最終目標であるKGI(Key Goal Indicator)を達成すること」が挙げられます。KGIはKPIと同様に定量目標として設定されることが多く、その中間目標としてKPIが設定されます。
KPIが定量目標の達成のために設定されるものであるのに対して、OKRは定性的な目標を達成するために設定されます。OKRは定量的なものを目指すというよりも、ありたい姿や目指す方向性の達成のために数値を活用するといった点で、KPIとは設定の目的が異なります。
■達成の期待水準
KPIは基本的に100%の達成が求められます。KGIを達成するためには、必ずKPIの達成が必要となるため、100%達成する見通しが立たない場合には軌道修正が行われます。
一方で、OKRは60%〜70%程度の達成で成功だとみなされるため、100%を必ず達成することは期待されていません。
MBOとの違い
MBOとは、「Management By Objectives」を略した言葉であり、直訳すると「目標による管理」と表現することができます。MBOは経営学者であるピーター・ファーディナンド・ドラッカーが提唱した概念として知られており、1960年代にアメリカ企業で広まりました。MBOは多くの日本企業でも採用されている目標管理手法ですが、OKRとはどのような違いがあるのでしょうか。
■レビュー頻度
MBOは人事評価の方法として採用されていることが多く、そのレビュー頻度は半年〜1年といった期間で行われます。目標を設定する際にも、半年または1年で達成する目標が設定されることが多く、中間の振り返りについてもそれほど高頻度では行われないことが多いでしょう。
一方で、OKRではMBOよりも高頻度でのレビューが行われます。MBOが半年〜1年であるのに対して、OKRは1ヶ月〜3ヶ月といった頻度でレビューの機会を設けます。中間の振り返りについても週次や隔週で行われることが多く、軌道修正を行うタイミングが早いことが特徴です。
こうした早いサイクルのPDCAを回すことで、より高い角度で成長することが見込まれます。
■測定
MBOでは、定量的な測定だけではなく定性的な測定も行われます。特に、人事評価との紐付けの中で行動目標やバリュー評価を行う際には、定性的な測定がメインとなります。組織によって、定量的な測定と定量的な目標を使い分けて活用されているのが、MBOの特徴だと言えます。
これに対して、OKRでは必ず定量的な測定が行われます。ObjectiveとKey Resultsのそれぞれが達成率をもとに評価されており、定量的な測定による軌道修正や目標の修正などが行われます。
勘や経験に頼ることのないデータドリブンな経営が求められる昨今では、定量的な測定や振り返りはより時代に則したものであると言えます。
■共有範囲
MBOで設定された目標や進捗状況は全社的に公開・共有されることは少なく、一般的にはメンバー本人と上司や人事の間で共有されます。これはMBOが人事評価に関連していることも影響しており、目標の進捗度合いやそれに伴う評価についても、上司と部下の間でコミュニケーションが取られることが多いでしょう。
一方で、OKRはObjectiveとKey Resultsの内容やその進捗状況は全社で共有されることが特徴です。それぞれの進捗状況を把握することができるため、目標に対するコミュニケーションもメンバー間で行われています。
■目的
MBOは、その期における人事評価を行なって報酬を決定するために活用される場合が多いでしょう。個人のパフォーマンスに点数をつけることで、人事制度の基準と照らし合わせて評価や報酬が決定されます。
OKRは、人事評価のために用いるのではなく、組織として高い目標を達成するために活用されています。そのため、個人の報酬を決めることを目的として活用されるケースは少ないと言えます。
■達成の期待水準
MBOでは目標の達成度合いが人事評価や報酬の基準となるため、基本的には100%の達成やそれ以上の達成が求められます。100%を超える達成をした場合には、良い評価を得られるのが特徴です。
これに対して、OKRは60%〜70%の達成が期待されています。100%の達成ができる場合には、目標自体が挑戦的なものではなかったという考え方をします。
OKRを人事評価と結びつけてはいけない背景
基本的に、OKRは人事評価と直接結びつけることはおすすめしません。OKRを直接人事評価と結びつける場合には、OKRの達成率が個人の評価の基準となります。その場合、目標の達成率が低いと自身の報酬が悪くなることを懸念して、目標自体を達成しやすいものや基準が低いものにする可能性が高くなります。
目標が挑戦的なものでない場合には、組織やチームが高い目標を目指すことが難しくなり、全体の成長が期待できなくなります。その結果、業績についてもそれまでの延長線上のもの、またはそれまでよりも低いものになってしまうことがあります。
一方で、「OKRは人事評価と関連づけてはならない」というわけではありません。OKRの結果だけを人事評価に反映する場合には先述したデメリットが生まれてしまいますが、MBOやバリュー評価と組み合わせて人事評価に活用することで、組織や個人の成長を促進することができます。
OKR導入・運用のステップ
ここまで、OKRの特徴や他の目標管理手法との違いなどについてご紹介してきました。では、実際に自社でOKRを導入・運用するためにはどのようなステップを踏めば良いのでしょうか。OKRの導入・運用ステップについて確認しておきましょう。
全社のOKRを設定する
まずは全社でのObjectiveとKey Resultsを設定します。この際には、自社のミッションやビジョンといったものとの整合性が取れているのかについて注意をすることで、企業としての一貫性を持つことができます。
フィードバックをもとに全社のOKRを調整する
全社のOKRを設定した後には、部署や部門に対して共有を行い、フィードバックを行います。フィードバックでは、目標がストレッチゾーンであるかについて確認を行います。コンフォートゾーンやパニックゾーンに入っていると考えられる場合には、変更の相談や提案を行います。
部署や部門のOKRを設定する
全社のOKRが決定した後には、部署や部門といったチームのObjectiveとKey Resultsを設定します。しっかりと全社で設定した目標と接続されているのかについて考慮することで、良いOKRの設定を行うことができます。
部署や部門のOKRを調整する
部署や部門のOKRを設定した後には、チーム同士のOKRの比較やメンバーからフィードバックを受けることなどをもとにして、その調整を行います。特に、チーム同士のOKRとして接続が行われているのかについて確認します。
個人のOKRを設定する
全社、チームのOKRと接続して、個人のObjectiveとKey Resultsを設定します。この際には、上司との相談を重ねて目標を設定することで、目標の背景や認識をすり合わせることが大切です。
個人のOKRを調整する
個人のOKRを検討した後には、その調整を行います。チームの目標達成につながる目標になっているのかについて確認を行い、チーム内で共有をします。この際、状況に応じてメンバー間でのアドバイスやフィードバックを行うことで、目標の精度を高めることができます。
(こちらもチェック:「フィードバックとは?本来の意味や目的は?効果的な方法も解説」)
週次でのチェックインを行う
チェックインとは、週の初めにその週に何をするべきかを明確にするミーティングのことを指します。チェックインでは、現在のOKRの達成状況を共有し、その週でやるべきことや相談事項などについて話します。
中間の振り返りを行う
設定したOKRの達成状況について、中間の振り返りを行います。OKRの期間として設定しているものの半分の時点で行うことが多く、全体的なレビューを実施します。この際には、目標についての修正も必要に応じて行います。
最終的な振り返りや評価を行う
設定した期間が終了するタイミングで、最終的な振り返りやOKRの評価を行います。ObjectiveとKey Resultsそれぞれの達成状況を確認し、成功かどうかについて判断をします。
次のOKRを設定する
ObjectiveとKey Resultsの達成率を確認し、達成率が高すぎる、または低すぎるかどうかについて判断します。その判断をもとにして、次のOKRの内容や基準について検討します。
ここまでの内容よりOKRに関して、目標設定と細かい振り返りといったPDCAを回すことが重要となることが分かります。サイクルを回す際には、その進捗を何らかの形で可視化することが効果的です。
OKRに適した組織とは
OKRは様々な組織やチームで活用することができますが、特に以下のような特徴を持っている組織については、OKRを活用することで大きな成果を上げることが期待できます。
■ミッションやビジョンに対する意識を強めたい組織
■イノベーションを起こし、新たな商品・サービスの提供を行いたい組織
■柔軟に軌道修正を行い、環境変化に対する適応を行いたい組織
■コミュニケーションを活発にして、組織内でのノウハウやナレッジの増加・蓄積を目指したい組織
■トップダウン型のマネジメントのみを行なっておらず、比較的ボトムアップの要素が強い組織
一方で、以下のような特徴を持つ組織については、OKRの導入・運用に適さないと考えられます。
■事業内容が固定化されており、保守的な目標を掲げた方が事業成果が出やすい組織
■事業内容が定まっておらず、明確な目標を設定できない組織
■コミュニケーションの閉塞が起きており、相互のアドバイスや指摘がしづらい組織
■組織として情報の透明性が低く、方針や計画を共有していない組織
OKRが適さない組織については「OKRをずっと使えない」ということではなく、OKRの導入よりも先に組織風土や組織体制の改革を行うことが優先であることに注意しましょう。
OKRの導入事例
株式会社メルカリ
フリマアプリ「メルカリ」を運営している株式会社メルカリは、OKRを導入している企業として有名です。メルカリは組織として拡大を行なっているタイミングからOKRを導入・運用しており、絶対評価やバリュー評価と組み合わせて人事評価にも活用しています。
多様な職種や国籍のメンバーが増えている中で、OKRをもとにした目標管理や人事評価を行うことで、メンバーの納得感を高めることに成功しています。
(参考:mercan「メンバーの活躍を“大胆に”報いる──大幅アップデートされたメルカリ人事評価制度の内容と意図」)
株式会社ユーザベース
ニュースメディアNewspicksや、企業データベースSPEEDAを運営している株式会社ユーザベースも、OKRを活用して成長を遂げている企業です。
ユーザベースでは、組織の多様化や組織体制の変化に伴い、OKRを導入することで組織の自律性を高めています。パーパスやバリューと接続された目標設定や管理を行うことで、メンバーが目指す方向性の統一や個人の才能の発揮に取り組んでいます。
(参考:株式会社ユーザベース「Uzabase HR Handbook」)
目標達成する組織のための法人研修ならリンクアカデミー
本記事のテーマであるOKRは、近年のDX化に伴い変化しつつあります。また、DX化の波に際した目標達成の人材戦略の1つとして、リスキリングが注目されています。
しかし、人は変化を嫌う心理傾向があり、定着し効果が出るためには施策を実施することだけではなく、実際にを行う現場の雰囲気の醸成にも注力すべきなのです。
そういった組織の現状を踏まえて、リンクアカデミーでは、「DX」や「リスキリング」を効果的に推進すべく、担当者とのOKRの擦り合わせやスキルの数値化、学習進捗度の可視化など様々な仕組みで支援を行っております。
・㈱アビバが提供してきたパソコンスキルの講座提供
・大栄教育システム㈱が提供してきた資格取得を支援する講座
・ディーンモルガン㈱が提供してきた「ロゼッタストーン・ラーニングセンター」のマンツーマン英会話レッスン
といったキャリアアップに関するサービスをフルラインナップで展開し、数多くの企業様の人材育成にお力添えをさせていただいております。
リンクアカデミーの研修導入事例
・ネットワンシステムズ株式会社様
・東京建物株式会社様
・株式会社フロム・エージャパン様
・株式会社トーコン様
OKRに関するよくある質問
Q1:OKRの目的は
A1:OKRを導入・運用する目的は、人事評価を行うことではなく組織として高い目標を達成することです。定量的な目標だけではなく、定性的な目標であるObjectiveを全社、チーム、個人として掲げることで、目的立脚での行動を促進します。また、Key Resultsについても簡単には達成できないが達成可能であるものを設定することで、組織としての成長や個人のパフォーマンスの向上を狙っています。
Q2:OKRの具体例は
A2:OKRの具体例として、以下のような内容があります。
■全社のOKR
・Objective:大企業を開拓し、業界シェア○位になる
・Key Result①:大企業向けの売上○円
・Key Result②:利益率○%
・Key Result③:サービス認知度○%
■チームのOKR
・Objective:セミナーの積極的な実施により、大企業を徹底的に開拓する
・Key Result①:セミナーの大企業の参加者数各回○社
・Key Result②:受注率○%
・Key Result③:大企業向けの売上○円
■個人のOKR
・Objective:セミナー営業の成功事例創出
・Key Result①:セミナーの大企業の参加者数各回○社
・Key Result②:受注率○%
・Key Result③:大企業向けの売上○円
Q3:OKRとKPI・MBOの違いは
A3:OKRとKPI・MBOの大きな違いとして、コミュニケーションの量と質が挙げられます。MBOが半年〜1年でのレビューや振り返りを行うのに対して、OKRでは週次〜月次でのレビューや振り返りを行います。また、KPIについては定量目標の達成率についてのコミュニケーションを行うのに対して、OKRでは定性目標に対する評価や軌道修正を行います。
まとめ
組織やチームが高い目標を達成し、成長を加速させる目標設定・管理方法としてOKRは有効な手段です。OKRは定量目標のみではなく、組織や個人としてどのような状態になりたいかといった定性目標を設定することで、目標に対する納得感の醸成や一体感の創出を実現することができます。また、OKRを活用することで組織の中のコミュニケーションの量と質を改善することができるため、組織としての風土を変革する際にも、OKRは効果的な方法であると言えます。