生産性とは?種類・算出方法・向上のポイントを紹介
目次[非表示]
- 1.生産性とは
- 2.生産性向上が重要である背景
- 2.1.日本の生産性は低水準
- 2.2.労働人口が減少
- 3.労働生産性とは
- 4.生産性の種類
- 5.生産性の高い企業と低い企業の違いは?
- 6.生産性が低下する要因
- 7.生産性向上のためのポイント
- 7.1.助成金の活用
- 7.2.人材育成
- 7.3.業務プロセスを見直す
- 7.4.労働時間を見直す
- 7.5.評価制度を見直す
- 7.6.ITシステムを見直す
- 8.生産性向上のためのポイントや具体的な施策は?
- 8.1.生産プロセスの見直し
- 8.2.技術の導入
- 8.3.従業員の育成
- 8.4.データの活用
- 8.5.チームワークの強化
- 9.生産性向上の際の注意点は?
- 10.リンクアカデミーの企業研修で生産性向上に繋げる
- 11.リンクアカデミーの研修導入事例
- 12.記事まとめ
- 13.生産性に関するよくある質問
近年は少子高齢化の影響により、労働人口の減少が問題視されています。その中でも政府が主導して「働き方改革」を推進するなど生産性向上への取り組みが注目されています。生産性の向上は多くの企業が目標としていることでもあり、これまでも様々な取り組みが行われています。一方で、一口に「生産性」といっても種類や計算方法は複数あります。そのため、自社が指標とするべき生産性を間違えると、取り組みにかけたコストに対して効果が出ない可能性があるため正しい知識が必要です。本記事では生産性に関する基本的な知識やその向上のポイントをご紹介します。
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生産性とは
「生産性」とは、労働者の数や労働時間、設備投資、使用した材料の量に対して、どの程度の商品・サービスを生産・提供ができたかといった割合のことを指します。商品・サービスを生産するために、どの程度の労働力や設備、材料などが必要になったかを表しており、コストに対する計画・評価を行う際に活用されます。
一般的に生産性は下記の式で算出されます。
「生産性」=「生産量」/「投入量」
ここで、生産量のことを「アウトプット」、投入量のことを「インプット」と呼ぶこともあります。
生産性を向上させるためには、「生産量を増やす」「投入量を減らす」ことが必要であり、労働時間の縮減や業務効率化などが主な方法として取り組まれています。
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生産性向上が重要である背景
日本の生産性は低水準
総務省が発表した「生産性向上の必要性」では、下図のように海外の主要国と比較して日本の生産性は低水準であることに言及されています。
出典:労働生産性の国際比較(2019年)
また、就業者1人あたりの就業時間の伸び率と労働生産性の伸び率を合計したものを「労働生産性の伸び率」として表すと、2012年〜2019年までで0.2%という結果だと分かっています。
出典:労働生産性の伸び率(2012-2019年)
時間あたりの労働生産性の伸び率は1.0%であり、G7の中ではフランスと並んでトップになっています。一方で、就業者1人あたりの就業時間の伸び率は-0.8%であり、G7の各国の中では最も就業時間を短縮していることがわかります。
しかし、就業者1人あたりの就業時間はG7の中ではイタリア、アメリカに次いで長い結果になっており、時間あたりの労働生産性は、G7の中で最下位になっています。
出典:就業者一人当たりの就業時間(2019年)
出典:時間当たり労働生産性(2019年)
つまり、日本では労働生産性を高めるための取り組みはできていますが、全体的な労働生産性の総量は海外と比較して低い水準にあることが分かります。
労働人口が減少
日本では労働人口の減少が問題になっており、今後も働く世代が少なくなることで全体の労働生産性の低下や国民の負担の増加が懸念されています。
経済産業省が公表している「2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について」の中では、将来人口の予測として下図のように生産年齢人口比率は低下していくことが示唆されています。
出典:経済産業省「2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について」
いわゆる団塊の世代の800万人が75歳以上の後期高齢者となることで、社会福祉の負担増加や企業の廃業増加などが懸念されている「2025年問題」も注目されているように、労働人口の減少は国内経済に大きな影響を与えることが分かっています。
また、「人生100年時代」と言われているように、国内の平均寿命は増加していくことが予測されています。平均寿命が上昇する一方で出生率が高まらないと単純に労働人口比率は低下していきます。その中で、科学技術の発展と活用や企業における業務効率の向上などの取り組みによる労働生産性向上の必要性は更に高まっていくでしょう。
労働生産性とは
生産性の中でも、特に仕事に関する生産性のことを「労働生産性」と呼びます。労働生産性では、労働者1人あたりの生産量や労働時間1時間あたりの生産量などを割合として表します。そのため、「投入量」としては、1人あたりがどの程度労働をしたのかやどれくらいの時間の労働をしたのかが該当します。一方で、「生産量」は生産したものの数や大きさ、重さ、売上などが当てはまります。
また、労働生産性には後述するように「物的労働生産性」と「付加価値労働生産性」があります。物的労働生産性は物質的な量に関する生産性のことを指しており、生産量には生産したものの数や大きさ、重さなどが当てはまります。付加価値労働生産性とは、売上に対してどの程度の原価や人件費などがかかっているかを指しており、粗利として扱われることもあります。
▼労働生産性について詳しい解説はこちら:「労働生産性とは?労働生産性の計算方法・種類・向上のためのポイントを解説」
生産性の種類
人時生産性
人時生産性とは、一定期間内に労働者が生産する付加価値や商品量などを、投入された人的資源(人時)で割った指標です。つまり、単位時間あたりの生産性を測定する方法の一つです。
人時生産性の測定方法には、以下の2つがあります。
- 単純労働時間法 生産された商品の数量や金額を、労働者が費やした労働時間で割る方法です。この方法では、生産性の低下を原因とする人件費の上昇を把握しやすいという利点があります。
- 複合生産要素法 資本、土地、材料などの要素と人的資源(人時)を含めた生産要素を考慮し、生産性を測定する方法です。この方法は、生産プロセス全体を評価することができるため、より正確な生産性の測定が可能です。
物的労働生産性
物的労働生産性は、生産したものの数や大きさ、重さなどに関する生産性です。物的労働生産性は変動する要素が多い価格や相場などではなく、生産したものの物理的な量を測るため、時系列でその生産性の推移を測ることもできます。 物的労働生産性は下記のような式で求めることができます。 ・「1人あたりの物的労働生産性」=「生産量」/「労働者数」 ・「1人あたりの物的労働生産性」=「生産量」/「労働者数×労働時間」 式を見てわかるように、物的労働生産性を高めるためには「生産量」を高めることと、「労働者数」「労働時間」を減らすことが重要です。 物的労働生産性は、労働という視点に立った際に使われる指標であるため、他の見方をすることもできます。例えば、資本という視点から労働生産性を見てみると、「保有している資本の量に対する生産量」という定義ができます。これは企業が保有している土地や機械設備、工場などに対して、どれだけ効率的に生産ができているのかを指しています。
付加価値労働生産性
付加価値労働生産性とは、企業が生産により生み出した金額や付加価値額に関する生産性のことを指しています。ここで「付加価値」とは、原材料の仕入れから加工、販売などの過程の中で人の手が加わり、価値が付与されていくことを表しています。付加価値労働生産性は売上から原材料費や仕入れの費用といった原価を差し引くことで求めることができます。また、付加価値額は売上から原価を差し引いていることから、「粗利(限界利益)」として表されることもあります。 付加価値労働生産性は下記の式で計算することができます。 ・「1人あたりの付加価値労働生産性」=「付加価値額」/「労働者数」 ・「1人あたりの付加価値労働生産性」=「付加価値額」/「労働者数×労働時間」 付加価値として生み出されている金額は、企業の中で人件費や配当金、賞与などの原資として従業員や株主などに分配されることになります。付加価値額労働生産性を計算することで、その分配をどのように行うのかを検討することができるでしょう。 また、付加価値労働生産性も労働という視点からの生産性です。これに対して、資本の視点から付加価値労働生産性を「資本生産性」として見ることができ、下記のような式で計算することができます。 「資本生産性」=「付加価値額」/「保有資本量」 これは、企業が保有している土地や機械設備、工場などに対して、どれだけ効率的に付加価値を生み出すことができているのかを指しています。
全要素生産性
全要素生産性とは、労働生産性を原価や労働力、資本といった生産に関わる全ての要素に対して考える方法です。一般的に全要素生産性は国や企業の成長率や伸び率を表す際に用いられており、近年では国内の経済成長率や労働生産性の向上率を改善していくために注目されています。
全要素生産性では、量的な観点と共に企業のブランディングやビジネスモデル、事業戦略など質的な観点で、その資源をどの程度有効活用できているのかを評価することができます。
全要素生産性は、下記のような式で計算することができます。
・「全要素生産性」=「生産量」 /「投入量(労働者数・労働時間+原価+資本)」
・「全要素生産性」=「付加価値額」 /「投入量(労働者数・労働時間+原価+資本)」
また、経済成長率や労働生産性の向上と全要素生産性の関係は下記のように表されます。
・「経済成長率」=「全要素生産性向上率」+「労働投入量の増加率」×「労働分配率」+「資本投入量の増加率」×「資本分配率」
・「労働生産性向上率」=「全要素生産性向上率」+「労働力に対する資本の比率」×「資本分配率」
生産性の高い企業と低い企業の違いは?
プロセスの最適化
生産性の高い企業は、生産プロセスを最適化することで、労働時間の短縮や材料の無駄遣いを減らし、生産性を向上させています。例えば、生産ラインの改善や物流システムの改良など、生産プロセスのあらゆる面での改善を実施しています。これにより、同じ労働時間でより多くの商品を生産できるようになります。
技術の導入
生産性の高い企業は、最新の技術を導入することで、自動化や省力化を図り、労働時間の短縮や生産性の向上を実現しています。例えば、ロボットやAIを導入することで、単純作業を自動化することができます。また、クラウド技術を活用することで、生産工程の見える化やデータの共有化が可能になり、生産プロセスの改善につながっています。
従業員の育成
生産性の高い企業は、従業員の教育・トレーニングに力を入れており、生産プロセスや技術の変化に柔軟に対応できるようにしています。例えば、新しい技術やシステムの導入時には、従業員に必要なトレーニングを実施することで、スムーズな導入を支援しています。また、生産プロセスの改善に向けたアイデアを積極的に募集し、従業員の意見を取り入れることで、生産性向上につながっています。
生産性が低下する要因
長時間労働
生産性が低下する要因として、長時間労働の常態化が挙げられます。長時間労働が続くことで、疲労やストレスが蓄積していき、結果として集中力や判断能力などが低下すると言われています。集中力が低下することで業務にも滞りが生じてしまうため、更に労働時間が増える場合もあります。そのため、長時間労働が続くと生産性は低下し続けていき、場合によっては労働者の心身の不調に繋がってしまう可能性が高まります。
働き方改革の一環として、長時間労働の是正が進められています。労働基準法では、1日の労働時間は8時間とし、1週間で40時間と定められています。また、「36協定(サブロク協定)」では下記のように時間外労働の上限が定められています。
・時間外労働は年間で720時間以内とする
・休日労働と時間外労働の合計は、月間100時間未満とする
・休日労働と時間外労働の2〜6ヶ月平均は、全て80時間以内とする
・時間外労働が月間45時間以内であり、45時間を超えることができるのは年6ヶ月までとする
役割の複数化
基本的に同時に複数の役割や業務を遂行することは難しいものです。マルチタスクが得意な人でも、同時に情報やタスクを処理しているのではなく、脳内で処理が切り替えられる頻度が高まっていると言われており、負荷が大きくなると処理が追いつかなくなってしまいます。
日本企業は従来「ジョブディスクリプション(職務記述書)」による「ジョブ型雇用」ではなく、「メンバーシップ型雇用」を採用しています。これは「職務を契約の中で取り決めてそれに沿った業務を遂行する」のではなく、「会社の業務命令によっては、基本的に範囲を問わずに業務を担って遂行する」という雇用形態です。そのため、特に年次を重ねていくと複数の役割(ミッション)を担うことが多くなっていく傾向があります。
主な役割に加えて複数の役割を担うことが多くなると、切り替えが困難になり、業務処理のスピードや質が低下してしまう可能性があります。
業務負担の偏り
職場やチームの中で、人によって仕事のスピードにバラつきが出ることはよくあることでしょう。その際、中には、「できる人に仕事が回っていく」といったように全体の業務量を調整するために、既にできている人に残っている業務を回すことがあるかもしれません。一見、全体の生産量を守っているため、業務の効率を維持しているように見えるかもしれませんが、生産性の向上という観点では業務負担の偏りは生産の帳尻合わせになっているだけだと言えます。
「できる人に負担が増えていき、それが続いていく」といったことは健全な状態ではなく、本人はもちろん職場やチーム全体のモチベーションの低下を招く可能性があります。特にスキルの有無が影響しやすいPC操作等はその典型的な例です。その場での生産量を保つことはできますが、生産性の向上のためには中長期的な目線を持つことが必要です。
「この職場で仕事ができるようになっても、業務量が増えるだけ」「仕事の量が偏っていても給与や評価は同じ」といった意識が広がっていくことで、社内でのキャリアへの不安や職場への愛着心の薄れが生じてしまうことになります。その結果、業務への熱意や会社への貢献意識が低くなることで、生産性は低下してしまうでしょう。
生産性向上のためのポイント
助成金の活用
国内では労働人口の減少が進んでいく中でも経済成長を実現するため、労働生産性を高める取り組みが行われています。その取り組みの1つとして、企業における生産性向上の取り組みへの支援を行っています。支援の方法としては助成金の支給が一般的であり、企業の生産性の向上を図った活動にかかった費用の一部を負担するものが多く見受けられます。
助成金の種類としては、下記のようなものがあります。
・労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース):再就職支援
・中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース):転職・再就職拡大支援
・地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース):雇入れ支援
・人材確保等支援助成金:雇用環境の整備支援
ー雇用管理制度助成コース
ー介護福祉機器助成コース
ー人事評価改善等助成コース
ー若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
ー作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
ー外国人労働者就労環境整備
ー助成コース、テレワークコース
・65歳超雇用推進助成金:雇用環境の整備支援
ー高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
ー高年齢者無期雇用転換コース
・両立支援等助成金:仕事と家庭の両立関係
ー出生時両立支援コース
ー介護離職防止支援コース
ー育児休業等支援コース
ー不妊治療両立支援コース
・キャリアアップ助成金:キャリアアップ支援
ー正社員化コース
ー賃金規定等改定コース
ー賃金規定等共通化コース
ー賞与・退職金制度導入コース
ー選択的適用拡大導入時処遇改善コース
ー短時間労働者労働時間延長コース
・人材開発支援助成金:人材育成支援
ー特定訓練コース
ー一般訓練コース
ー教育訓練休暇等付与コース
ー特別育成訓練コース
ー建設労働者認定訓練コース
ー建設労働者技能実習コース
ー人への投資促進コース
・業務改善助成金:最低賃金引き上げ支援
人材育成
人材育成による生産性の向上は多くの企業で取り組まれています。人材育成とは、「企業の目指す方針や求める人材像に向けて成長を促すこと」であり、知識やスキル、仕事に向き合う姿勢などを身に付けてもらうことです。人材育成の一環としてOJTや研修の実施などを行うことが多く見受けられますが、「OJTをしているから人材育成はできている」「研修を行ったからスキルは身に付く」というわけではないことに注意が必要です。
下記のように、人材が持つ能力の要件として、リンクアンドモチベーションが経済産業省より平成17年度に受託した「社会人基礎力に関する調査」の中で定義した「人材要件フレーム」を見てみましょう。
参考:人材要件フレーム
(モチベーションエンジニアリング研究所,「新入社員時のビジネススタンスと成果の関係」に関する研究結果を公開)
この中で能力には下記の要件があると定義しています。
・モチベーションタイプ:どのような出来事や刺激でモチベーションが左右されるかといったモチベーションの指向性
・ポテンシャル:本人が持っている潜在的な能力や特性
・スタンス:仕事に対する向き合い方や姿勢
・ポータブルスキル:対人力・対課題力・対自分力の3つで構成される、基本的なスキル
・リテラシー:言語やITなどに対する知識やスキル
・テクニカルスキル:専門的な知識やスキル
このように、人材育成についても「どの部分の能力を育成するのか」「現在の育成体系はどの部分に影響しているものなのか」といった対象と効果を明らかにすることが大切です。
業務プロセスを見直す
業務プロセスとは、仕入れや加工、生産、サービス提供など顧客に価値を届けるまでのプロセスを指しています。業務プロセスは時間の中で必要に応じてカスタマイズされていることが多く、全体像を把握するタイミングが無い場合には、プロセスの中で重複するものや無駄なものが生じていることがあります。
特に、現場の従業員は比較的短期視点で自身の業務をどうするのかを考える傾向が強いため、業務を遂行するために各所で「やること」を増やしている場合が多く見受けられます。「やること」を増やすことは業務の中での課題や悩みを解決しているかもしれませんが、環境の変化や最適な業務プロセスの実現のためには「やめること」を決めることも大切です。昨今では、デジタルトランスフォーメーションの潮流もあり、デジタルシステムを使った業務プロセスの効率化や現状のシステムを見直す会社も増加しております。
やめることを決めるためには、自社がどのような価値を提供しているのかや、それを顧客に届けるためにはどのような過程があるのかを整理することが必要です。全体の業務プロセスを俯瞰することで、必要なものとそうではないものを決めるようにすると良いでしょう。
労働時間を見直す
働き方改革や労働基準法の見直しに伴い、「ノー残業デー」の採用や業務時間の短縮などを通じて労働時間の是正に取り組んでいる企業は多いのではないでしょうか。先述したように、長時間労働が続くことで従業員の心身の負荷が増加し、ストレスを感じやすくなることがわかっています。結果として、ストレスの増加はパフォーマンスの大幅な低下だけではなく、心身の不調に繋がる可能性があります。
長時間労働によるストレスの増加や体調不良は、不調をきたした本人はもちろんですが、その周囲の職場やチームの従業員にも大きな影響があります。「体調不良になるまで働かされる」「現場のことを考えてくれていない」といった会社に対する不信感が生まれてしまうと、会社への愛着心(エンゲージメント)や業務へ向き合う姿勢・熱意も薄くなってしまいます。中には、勤怠管理システムを使いこなせず、正しい労務時間の管理を行えていないことを課題としている企業も多くあります。
労働時間を延ばしている原因の追求や、業務の中で生じているムリ・ムダ・ムラを無くすことにより長時間労働を少なくすることは、生産性の向上に繋がるでしょう。
評価制度を見直す
生産性の向上のためには、評価制度の内容も状況に応じて見直すことも大切です。評価制度は単なる賃金を決めるための仕組みではなく、経営から従業員に対するメッセージとなります。例えば、給与の決め方や評価の基準が「労働時間に対するもの」である意味合いが強い場合には、自然と従業員も労働時間への意識が強くなりやすい傾向があります。そのため、「労働生産性」や「業務の効率」といった面に対する意識や取り組みへの積極性は低くなることがあるでしょう。
ここで大切なのは「評価制度にはメリット・デメリットが生じる」ということです。「年功序列的なものではなく、成果重視の評価制度を導入する」といったことは一見良いことに見えます。しかし、導入の仕方に気をつけないと、「自分が成果を出せばいい」といった意識が生まれてしまい、チームワークや従業員同士の連携が弱まる可能性もあります。
自社の強みやらしさを大切にできるような評価制度の見直しを行うようにすることが大切です。
ITシステムを見直す
従業員の育成や評価制度の見直しといった「人へのアプローチ」だけではなく、ITツールのような「システムへのアプローチ」も労働生産性の向上には有効です。システムへのアプローチとして、管理システムやコミュニケーションツールの導入といったITツールの見直しが有効です。
「いつも時間がかかっている業務がある」「自動化することで従業員の負担を低減することができるものがある」といった業務に対して、BIツールで代替することで大幅に業務効率を向上することができます。
ただ、新たにITツールを導入することだけではなく、現在あるツールの活用方法を見直すことも大切です。BIツールを導入したはいいものの、それが正しくまた十分に利活用出来ているかどうかの判断を現場で行うことは難しいです。それならば普段の業務に馴染み深い、Officeソフトのような誰もが知っているようなソフトを使って出来ることを増やしていく方が、システムを導入した後に複雑性が増す、というリスクを避けることもできます。今あるツールの役割や活用方法を見直すことだけでも、生産性の向上を図ることができるでしょう。
生産性向上のためのポイントや具体的な施策は?
生産プロセスの見直し
生産ラインの改善や物流システムの改良、無駄な作業の削減など、生産プロセス全体の見直しを行うことで、生産性の向上を図ることができます。例えば、生産ラインにおける不要な待ち時間の除去や、製品品質に影響を及ぼす不良品の発生原因を特定し改善することが挙げられます。ここでは、やるべきこととやめるべきことを分けて明らかにすることが大切です。
技術の導入
最新の技術やシステムを導入し、自動化や省力化を図ることで、労働時間の短縮や生産性の向上を実現することができます。例えば、ロボットやAIを導入することで単純作業を自動化することができます。また、クラウド技術を活用することで、生産工程の見える化やデータの共有化が可能になり、生産プロセスの改善につながっています。
従業員の育成
従業員のスキルアップや技術習得を支援することで、生産性の向上につなげることができます。例えば、新しい技術やシステムの導入時には、従業員に必要なトレーニングを実施することで活用をスムーズに行うことができるようにしています。
また、新技術の導入に対応していける人材を育成する上では、基礎的なITリテラシースキルの学習から始めることも有効です。基礎知識がない中で新技術のインプットから入るのには抵抗を覚える方も一定数おられますが、まずはExcelなどの業務での使用頻度も高く、操作イメージの沸きやすいソフトからはじめることで、導入ハードルも下げることができます。
その他、育成の際には体系的なトレーニングプログラムを構築することで、属人的な育成体制を少なくすることもポイントです。
データの活用
生産工程のデータを収集し、分析することで、生産プロセスの改善や問題点の発見、改善策の立案などを行うことができます。例えば、生産ラインの稼働状況や製品の品質データを収集することで、生産プロセスの改善点を特定することができます。データをもとにした改善を行うことで、本質的な問題にアプローチすることが期待できます。
チームワークの強化
システムの導入や個人の育成だけではなく、チームワークの強化をすることも生産性の向上には必要です。チームワークを重視し、コミュニケーションや意見交換を促進することで、生産性の向上や問題解決につなげることができます。例えば、プロジェクトごとにチームを編成し、各メンバーが役割分担を明確にすることで、効率的な生産プロセスを構築することができます。
生産性向上の際の注意点は?
企業の生産性向上は重要ですが、効率化ばかりに目を向けるのではなく、労働者のワークライフバランスを損なわないようにすることが必要です。過度な労働時間拡大は避け、労働者が適切に休息を取れるようにすることが大切です。
また、労働者の能力に応じた業務割り当てを行い、モチベーションと生産性を向上させます。柔軟な労働時間制度やテレワーク制度の導入など、ワークライフバランスを改善する環境を整備することも重要です。
さらに、労働者とのコミュニケーションを活性化し、ストレスや不安を軽減します。これらの取り組みを通じて、生産性を向上させることが求められます。
効率化だけではなく、従業員の能率も向上させることが生産性の向上に繋がることを忘れないようにしましょう。
リンクアカデミーの企業研修で生産性向上に繋げる
リンクアカデミーでは、生産性向上に向けた身近なツールのさらなる活用を支援する研修を実施しております。生産性を向上させたのちの経営戦略をお伺いしながら、独自の診断技術によって一人ひとりの目指すべきレベルを示し、確実な個人の業務効率化をご支援させていただきます。また、グループ会社の組織コンサルティング会社の知見を活かした、実行性の高い研修をご案内させていただいております。
その方法に
・パソコンスキルの講座提供をしてきた㈱アビバ
・資格取得を支援する講座を提供してきた大栄教育システム㈱
・マンツーマン英会話レッスンを提供してきたディーンモルガン㈱
といったキャリアアップに関するサービスをフルラインナップで展開してきました。
この実績と経験を活かして、
・内定者・新入社員の育成
・生産性向上
・労務管理能力向上
・営業力強化
・DX推進
・リスキリング推進研修
といった幅広い課題に対してもソリューションを提供しています。
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リンクアカデミーの研修導入事例
・ネットワンシステムズ株式会社様
・東京建物株式会社様
・株式会社フロム・エージャパン様
・株式会社トーコン様
記事まとめ
労働人口の減少が近年問題視されており、今後も労働人口の比率は減少していくことが予測されています。その中で、企業は労働力の確保が難しくなってくるため、生産性の向上がさらに重要になってきます。生産性は「労働者の数」や「原価」といった投入したものに対する「生産したものの数」や「付加価値額」といった生産量で表されるため、投入を少なくすることや生産量を多くすることで生産性を高めることができます。また、ただ新しいものを取り入れることで生産性を向上させるだけではなく、今ある資産の価値を向上させることも生産性を向上させるための方法の1つといえるでしょう。
生産性に関するよくある質問
Q1:生産性の定義は?
A1:「生産性」とは、労働者の数や労働時間、設備投資、使用した材料の量に対して、どの程度の商品・サービスを生産・提供ができたかといった割合のことを指します。言い換えると、商品・サービスを生産するために、どの程度の労働力や設備、材料などが必要になったかを表しているため、コストの計算を行う際にも生産性は活用されています。
一般的に生産性は下記の式で算出されます。
「生産性」=「生産量」/「投入量」
ここで、生産量のことを「アウトプット」、投入量のことを「インプット」と呼ぶこともあります。
生産性を向上させるためには、「生産量を増やす」「投入量を減らす」ことが必要であり、労働時間の縮減や業務効率化などが主な方法として取り組まれています。
Q2:生産性向上とは?
A2:生産性に関する計算式として、下記のものが挙げられます。
■物的労働生産性
・「1人あたりの物的労働生産性」=「生産量」/「労働者数」
・「1人あたりの物的労働生産性」=「生産量」/「労働者数×労働時間」
■付加価値労働生産性
・「1人あたりの付加価値労働生産性」=「付加価値額」/「労働者数」
・「1人あたりの付加価値労働生産性」=「付加価値額」/「労働者数×労働時間」
■全要素生産性
・「全要素生産性」=「生産量」 /「投入量(労働者数・労働時間+原価+資本)」
・「全要素生産性」=「付加価値額」 /「投入量(労働者数・労働時間+原価+資本)」
式を見てわかるように、物的労働生産性を高めるためには「生産量」や「付加価値額」を高めることと、「原価」「労働者数」「労働時間」を減らすことです。