労働生産性とは?労働生産性の計算方法・種類・向上のためのポイントを解説
目次[非表示]
- 1.労働生産性とは
- 2.労働生産性の計算式
- 3.労働生産性の種類・種類別計算式
- 4.生産性と労働生産性の違い
- 5.労働生産性と業務効率化の違い
- 6.産業別の労働生産性の違い
- 7.企業規模別の労働生産性の違い
- 8.日本の労働生産性が低い原因は?
- 9.労働生産性が高い企業の特徴は?
- 9.1.事業プロセスの改善に取り組んでいる
- 9.2.技術投資を積極的に行っている
- 10.労働生産性向上のメリットは?
- 10.1.コスト削減
- 10.2.顧客満足度の向上
- 10.3.従業員のモチベーション向上
- 11.労働生産性を高めるためのポイント
- 11.1.業務プロセスを見直す
- 11.2.労働時間を見直す
- 11.3.人材育成・評価を見直す
- 11.4.ITシステムを見直す
- 12.リンクアカデミーの企業研修で生産性向上に繋げる
- 13.リンクアカデミーの研修導入事例
- 14.記事まとめ
- 15.労働生産性に関するよくある質問
近年は政府が「働き方改革」を推進していることに加えて、新型コロナウイルスの影響でリモートワークや時差出勤など、これまでとは違う働き方が求められるようになっています。また、少子高齢化の影響で労働人口は減少傾向にあることからも、企業の労働生産性を向上させる必要性が高まっています。一口に労働生産性と言ってもその種類や基準は、目的や職種によって様々です。本記事では労働生産性の計算方法や種類、向上のためのポイントなどをご紹介します。
労働生産性とは
労働生産性とは、従業員または時間の1単位あたりの付加価値額のことです。 定量的に労働の効率を測る指標として活用されます。公益財団法人日本生産本部による労働生産性の定義は下記のようになっています。
「労働投入量1単位当たりの産出量・産出額」
(出典:公益財団法人 日本生産性本部「生産性とは」)
投入する労働や資源などは「インプット(input)」とも呼ばれ、それに対して生み出された成果や生産量は「アウトプット(output)」と呼ばれます。
※更新日:2022/11/24
労働生産性の計算式
労働生産性は下記のように、「投入する労働や資源の量(インプット)」に対する「生み出された成果や生産量(アウトプット)」で計算されます。
「労働生産性」=「投入する労働や資源の量(インプット)」/「生み出された成果や生産量(アウトプット)」
インプットとして用いられるのは、労働者の数や労働時間、材料の量などが該当します。また、アウトプットとしては生産量だけではなく、付加価値額や定量的な成果などが用いられます。
労働生産性の種類・種類別計算式
労働生産性は、「投入する労働や資源の量(インプット)」と「生み出された成果や生産量(アウトプット)」にどのようなものを用いるかで種類が異なります。その中でも、大きく「物的労働生産性」と「付加価値労働生産性」の2つに労働生産性を分けることができます。
物的労働生産性
物的労働生産性とは、「生産量に物理的な数量や大きさ、重さなどを用いる労働生産性」を指します。製造業で指標とされることが多く見受けられます。変動する要素が多い販売価格や相場などではなく、一定の投入量や時間に対する物的な量を測定して、純粋な生産効率を測ることができます。
物的労働生産性は下記のような計算式で求められます。
・「1人あたりの物的労働生産性」=「生産量」/「労働者数」
・「1人あたりの物的労働生産性」=「生産量」/「労働者数×労働時間」
物的労働生産性を測定することで、生産している物の大きさや個数に対してどれくらいの労力がかかっているかや、時系列で労働生産性がどのように推移しているかなどを評価することができます。
付加価値労働生産性
生産した物の物理的な量ではなく、企業が生み出した商品・サービスに対する金額を基にした労働生産性を、「付加価値労働生産性」と呼びます。「付加価値」とは、仕入れから生産の過程で加工されることで価格が付くことを指しています。そのため、付加価値労働生産性は、売上高から原価や人件費、機会の維持管理費用などを除いたものになります。
付加価値労働生産性は下記のような計算式で求められます。
・「1人あたりの付加価値労働生産性」=「付加価値額」/「労働者数」
・「1人あたりの付加価値労働生産性」=「付加価値額」/「労働者数×労働時間」
付加価値労働生産性を測定することで、実際に企業が生み出している売上に対して、どのようなコストがどの程度かかっているのかを評価することができます。
生産性と労働生産性の違い
労働生産性と同様によく用いられる言葉が、生産性です。「生産性をあげよう」「生産性が低い」というようにビジネスシーンの中でよく耳にするのではないでしょうか。生産性とは、労働以外にも「生産に関する要素をどれだけ有効活用できているか」という意味を持っています。労働生産性とは、生産性の中でも「労働に関するもの」に焦点を当てたものだということに注意しておきましょう。
生産性は労働生産性の他にも、
・資本に対する生産性である「資本生産性」
・生産に必要な全てのものや要素に関する生産性である「全要素生産性」
などが挙げられます。生産性は「投入(インプット)」に対する「産出(アウトプット)」の割合で表され、下記のような計算式で求められます。
「生産性」=「産出」/「投入」
労働生産性と業務効率化の違い
労働生産性と業務効率化は、両者ともに労働に関連する概念ですが、それぞれ異なる意味を持っています。
労働生産性とは、単位時間あたりの生産物やサービスをどの程度の労働力で生産できるかを示す指標です。つまり、同じ時間内により多くの作業をこなせるようになることを目指します。一方、業務効率化とは、業務の遂行方法や手順を改善し、より効率的に業務を行うことを指します。つまり、同じ作業をより短い時間で行うことを目指します。
労働生産性と業務効率化は、密接に関連しています。業務効率化により作業の手順を改善することで、同じ時間内にでより多くの作業をこなすことができます。そのため、業務効率化は、労働生産性の向上に欠かせない要素であり、ビジネスにおいても重要な役割を果たしています。
産業別の労働生産性の違い
労働生産性は産業ごとにその平均値は異なります。下図は中小企業庁が発表した「中小企業の生産分析」で示されている産業別の労働生産性の平均値の分布です。それぞれの産業で「上位25%までの数値」と「下位25%までの数値」も平均値と共に示されているため、産業ごとのばらつきも見ることができます。
(出典:厚生労働省「中小企業の生産分析」)
金融・保険業、電気・ガス・熱供給・水道業、不動産業・物品賃貸業が比較的労働生産性が高い産業だと分かります。鉱業も労働生産性が高いように見えますが、ばらつきが大きいようです。一方で、飲食サービス業、医療・福祉業、教育・学習支援業は、比較的労働生産性が低いことが分かります。
企業規模別の労働生産性の違い
企業規模別での労働生産性はどのような違いがあるのでしょうか。下図は中小企業庁が発表した「中小企業の生産分析」で労働生産性を大企業と中小企業に分けて分布を示した結果です。横軸の右に行くほど労働生産性が高く、それぞれの労働生産性に対して何%の企業が分布しているのかが分かります。
(出典:厚生労働省「中小企業の生産分析」)
左側では、「製造業」で大企業と中小企業の労働生産性を比較しています。これを見ると、製造業では大企業の方がグラフが右側に位置しており、全般的に労働生産性が高いことが分かります。製造業では設備や工場の規模が労働生産性に関わっているため、大企業の方が中小企業に比べて労働生産性が高いということが推察できます。
また、右側は「非製造業」で比較したものです。製造業と比べて大企業と中小企業で労働生産性の差が少ないことが分かります。特に、労働生産性が5.7百万円/人までは中小企業の方がグラフが右側にあるため、労働生産性が高いことが分かります。
日本の労働生産性が低い原因は?
日本の労働生産性が低い原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 長時間労働
- 非効率的な業務プロセス
- 人手不足
- 技術の遅れ
- 企業文化の問題
一方、他国との差ができている原因としては、例えばドイツでは技術力の高さや教育水準の高さが挙げられます。アメリカでは、ベンチャーキャピタルの存在やハイテク産業の発展が挙げられます。中国では、国内市場の拡大や外国企業との提携による技術の吸収が挙げられます。
労働生産性が高い企業の特徴は?
事業プロセスの改善に取り組んでいる
労働生産性の高い企業は、事業プロセスの改善に積極的に取り組んでいます。具体的には、生産ラインの効率化や業務の自動化を進めることで、労働力の生産性を向上させています。例えば、生産ラインにIoT技術を導入することで、生産ラインの稼働状況をリアルタイムで把握し、生産ラインの稼働率を高めることができます。
技術投資を積極的に行っている
労働生産性の高い企業は、技術投資を積極的に行っています。最新の技術を導入することで、生産性を高めることができます。例えば、自動運転技術を導入することで、物流業界における輸送時間の削減やコストの削減につながります。また、AI技術を導入することで、生産計画の最適化や生産ラインの改善につながることがあります。
労働生産性向上のメリットは?
コスト削減
労働生産性が向上すれば、同じ時間内により多くの仕事をこなすことができます。これによって、コスト削減につながることがあります。例えば、労働生産性が向上したことで、同じ人数でより多くの製品を生産することができれば、人件費や原材料コストを削減することができます。
また、業務プロセスの改善によって、無駄や不要な手間を省くことができ、コスト削減につながることがあります。
顧客満足度の向上
労働生産性が向上すれば、より多くの仕事をこなすことができます。これによって、顧客からの要望に応えることができるようになり、顧客満足度を向上させることができます。例えば、レストランで労働生産性が向上したことで、より多くのお客様に同時に対応することができ、待ち時間の短縮やサービスの向上につながることがあります。
また、製品の品質やサービスの質を向上させることで、顧客満足度を高めることができます。
従業員のモチベーション向上
労働生産性が向上すれば、同じ時間内により多くの仕事をこなすことができます。これによって、社員のモチベーションが向上することがあります。社員がより多くの仕事をこなせるようになれば、達成感ややりがいを感じることができ、自己肯定感が高まることがあります。
また、社員がより効率的に仕事をこなせるようになれば、残業時間が減少することがあり、ワークライフバランスが改善されることがあります。これによって、社員のストレスが軽減され、健康的な職場環境が整備されることがあります。
しかし、偏った知識により非効率な作業方法を選択していることに気づけていない方も一定数います。業務効率化に繋がる必要なスキルを、改めて学び直しする機会を設けることでも、モチベーション向上にむけた手段として有効だといえるでしょう。
労働生産性を高めるためのポイント
業務プロセスを見直す
労働生産性を高めるためには、まず業務プロセスを見直すことをおすすめします。多くの場合企業の中での業務プロセスは、その時々の必要に応じてカスタマイズを重ねられています。そのため、全体像を把握する機会がない場合には、業務全体で無駄な工程や重複する工程などが生じていることが多く見受けられます。
特に、現場では日々の業務に対応する努力の中で、「やること」を決めて動かすことに集中する傾向があります。一方で、「やめること」を決めることも労働生産性を向上するためには重要です。生産する上で大切なことや、顧客が価値を感じていることは何なのかを検討し、それを生み出す過程の中で「やること」「やめること」を整理すると良いでしょう。昨今では、デジタルトランスフォーメーションの潮流もあり、デジタルシステムを使った業務プロセスの効率化や現状のシステムを見直す会社も増加しております。
労働時間を見直す
働き方改革や労働基準法の見直しに伴い、労働時間を見直して「ノー残業デー」の採用や業務時間の短縮などを実施する企業は多く見受けられます。長時間労働は従業員の心身の負荷を増やして、ストレスを感じることに繋がることがわかっており、ストレスによりパフォーマンスの低下だけではなく、体調不良に発展する可能性があります。
長時間労働によるストレスや体調不良は、該当する本人だけではなくそれを見ている周囲の従業員にも影響します。「この職場はブラックだ」「従業員のことを考えていない」といった意識が芽生えると、会社に対する愛着心・エンゲージメントは低下してしまい、結果として仕事への熱量も低下します。
労働時間を延ばしている要因や、業務内容を見直すと共に、労働時間を短縮することで労働生産性を向上することができます。
人材育成・評価を見直す
労働生産性の向上のためには、適切な人材育成や評価制度が重要です。人材育成の方法を見直して、業務を遂行する上で必要な考え方や、知識やスキルを効率的に身につけることができると、よりパフォーマンスを向上することができます。
また、評価制度の内容も状況に応じて見直すことが大切です。例えば、評価や給与の決め方が「労働時間に対するもの」の要素が強い場合には、効率よく働くことに意識が向きにくい可能性があります。従業員としっかりと「成果」や「望ましい行動」に対する共通認識を取り、それに対して適切な評価を行う制度にすることで仕事に対する意識や働き方を変えることが期待できます。
自社の目指す状態に対して、実際の育成や評価の内容がどのようなものかを確認し、適切に修正・改善すると良いでしょう。
ITシステムを見直す
従業員の育成や評価制度の見直しといった「人へのアプローチ」だけではなく、ITツールのような「システムへのアプローチ」も労働生産性の向上には有効です。特に生産管理や社内のコミュニケーション手段などにITツールを活用することで、業務効率を大幅に向上することができます。現在時間がかかっていることに対して、ITツールで代替できるものはないかを検討して導入すると良いでしょう。
ただ、新たにITツールを導入することだけではなく、現在あるツールの活用方法を見直すことも大切です。ITツールを導入したはいいものの、それが正しくまた十分に利活用出来ているかどうかの判断を現場で行うことは難しいです。それならば普段の業務に馴染み深い、Officeソフトのような誰もが知っているようなソフトを使って出来ることを増やしていく方が、システムを導入した後に複雑性が増す、というリスクを避けることもできます。今あるツールの役割や活用方法を見直すことだけでも、労働生産性の向上を図ることができるでしょう。
※更新日:2022/11/24
リンクアカデミーの企業研修で生産性向上に繋げる
リンクアカデミーでは、労働生産性向上に向けた身近なツールのさらなる活用を支援する研修を実施しております。生産性を向上させたのちの経営戦略をお伺いしながら、独自の診断技術によって一人ひとりの目指すべきレベルを示し、確実な個人の業務効率化をご支援させていただきます。また、グループ会社の組織コンサルティング会社の知見を活かした、実行性の高い研修をご案内させていただいております。
その方法に
・パソコンスキルの講座提供をしてきた㈱アビバ
・資格取得を支援する講座を提供してきた大栄教育システム㈱
・マンツーマン英会話レッスンを提供してきたディーンモルガン㈱
といったキャリアアップに関するサービスをフルラインナップで展開してきました。
この実績と経験を活かして、
・内定者・新入社員の育成
・生産性向上
・営業力強化
・DX推進
・リスキリング推進研修
といった幅広い課題に対してもソリューションを提供しています。
リンクアカデミーの研修導入事例
・ネットワンシステムズ株式会社様
・東京建物株式会社様
・株式会社フロム・エージャパン様
・株式会社トーコン様
記事まとめ
少子高齢化や働き方の変化による人材不足が深刻になっていく中で、労働生産性の向上は多くの企業が抱えている課題です。労働生産性とは、「投入した労働や資源の量に対する成果や生産量」のことを指しており、物的労働生産性や付加価値労働生産性のような種類があります。労働生産性を向上することで、人材不足を解消すると共に競争力の向上や助成金の活用などで経営を安定化させることができます。業務プロセスや労働時間の見直しと共に、人材育成やITシステムの整備を行うことで労働生産性の向上を目指しましょう。
労働生産性に関するよくある質問
Q1:労働生産性の計算式は?
A1:一般的に労働生産性は下記の計算式で求められます。
「労働生産性」=「投入する労働や資源の量(インプット)」/「生み出された成果や生産量(アウトプット)」
また、労働生産性には生産するものの大きさや量などに対する「物的労働生産性」と売上から原価や人件費などの経費を除いた「付加価値労働生産性」があり、それぞれ下記の計算式で求められます。
■物的労働生産性
・「1人あたりの物的労働生産性」=「生産量」/「労働者数」
・「1人あたりの物的労働生産性」=「生産量」/「労働者数×労働時間」
■付加価値労働生産性
・「1人あたりの付加価値労働生産性」=「付加価値額」/「労働者数」
・「1人あたりの付加価値労働生産性」=「付加価値額」/「労働者数×労働時間」
Q2:労働生産性が高いとどうなる?
A2:労働生産性が高いと、下記のようなメリットが生まれます。
■人材不足を解消できる
現在の業務プロセスや設備などを見直すことで労働生産性を向上させると、限られた従業員数や労働時間の範囲内で生産できる量や売上などを上げることができます。
■企業の競争力を向上できる
商品・サービスの生産や供給にかける労働者数や労働時間、資源などを抑えることで、さらに新しい商品・サービスの開発やマーケティングによる販路拡大などに時間をあてることができるようになります。
■「経営力向上計画」による優遇を受けることができる
経営力向上計画に認定されると、下記のような優遇を受けることができます。
・3年間固定資産税が半額になる
・法人税などで特例措置が受けられる
・政策金融機関の低利融資や民間金融機関の融資に対して信用保証などの支援が受けられる
・補助金申請に対する優遇が受けられる
■助成金を受けることができる
業務改善助成金やキャリアアップ助成金、人材開発支援助成金など、労働生産性向上への取り組みに対して支給される助成金があります。