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タレントマネジメントとは?目的・効果・事例を紹介

目次[非表示]

  1. 1.タレントマネジメントとは
  2. 2.タレントマネジメントが注目される背景
    1. 2.1.少子高齢化による労働人口の減少
    2. 2.2.経済のグローバル化
    3. 2.3.働き方の変化
  3. 3.タレントマネジメントの目的
    1. 3.1.経営目標の達成
    2. 3.2.採用強化
    3. 3.3.人材の育成
    4. 3.4.適材適所の人材配置
    5. 3.5.人材の定着・流出の防止
  4. 4.企業におけるタレントマネジメントの2つのアプローチ
    1. 4.1.包括的アプローチ:全社員向け
    2. 4.2.排他的アプローチ:特定の人材向け
  5. 5.タレントマネジメントの効果
    1. 5.1.エンゲージメント向上
    2. 5.2.能力向上
    3. 5.3.顧客満足度向上
    4. 5.4.採用・育成コストの削減
  6. 6.タレントマネジメントシステムとは
  7. 7.タレントマネジメントの導入ステップ
    1. 7.1.タレントマネジメントの目的を明確にする
    2. 7.2.人材の情報の見える化を行う
    3. 7.3.タレントの分類・特定を行う
    4. 7.4.採用・育成・配置の計画を立てて実行する
    5. 7.5.人事評価やレビューを行う
    6. 7.6.軌道修正を行う
  8. 8.タレントマネジメント導入の注意点
    1. 8.1.手段が目的化しないようにする
    2. 8.2.日本的な雇用形態にこだわらない
    3. 8.3.育成へのコミットメントを持つ
  9. 9.タレントマネジメントの導入事例
    1. 9.1.大手食品メーカーA社
    2. 9.2.アミューズメント企業B社
    3. 9.3.総合商社C社
  10. 10.法人研修のことならリンクアカデミー
  11. 11.リンクアカデミーの研修導入事例
  12. 12.タレントマネジメントに関するよくある質問
  13. 13.まとめ


 近年は少子高齢化の影響や働き方の変化などにより、企業における人材戦略は変化の中に晒されています。そのため、従来のマネジメントだけではなく、より事業成長に効果的な方法を選ぶことへの重要性が高まっています。その中で、現在注目されているマネジメント手法が「タレントマネジメント」です。本記事では、現代の人事戦略を支えることができるタレントマネジメントについて、その目的や効果などについてご紹介します。


タレントマネジメントとは

 タレントマネジメントとは、従業員が持っているスキルや能力に関する情報を経営資源として考えて、採用や育成、人材配置などに活用することを指します。タレントとは、「才能」や「素質」という意味を持つ「talent」からきている言葉であり、タレントマネジメントにおいては「才能を持つ人」といった意味で使われることが多いようです。

 タレントマネジメントの概念は、エド・マイケルズやヘレン・ハンドフィールド=ジョーンズ、ベス・アクセルロッドらによって書かれた書籍である「ウォー・フォー・タレント」で提唱されました。この中では、「タレント」とはマネジメント人材を指しており、あらゆるレベルで企業の目標達成や業績向上を推進する有能なリーダーとマネージャーを意味すると示されています。

 日本においても、近年はタレントマネジメントの概念が広がってきており、取り組む企業が増えてきています。タレントマネジメントは主に優秀な従業員に対するマネジメントでしたが、タレントマネジメントシステムが普及したことにより全従業員を対象とした取り組みとなっています。

 企業ごとにタレントマネジメントの実施内容は異なりますが、タレントマネジメントは人事戦略全般に関わるものであるため、人材に関わることであればタレントマネジメントが関係します。そのため、「この施策をやっているからタレントマネジメントを行っている」といった決まったものではないというのが特徴です。


タレントマネジメントが注目される背景

 そもそも、日本でタレントマネジメントが注目されるようになったのには、どのような背景があるのでしょうか。タレントマネジメントの考え方が広がってきた背景としては、以下のようなものが挙げられます。

少子高齢化による労働人口の減少

 近年は少子高齢化の影響により、労働人口が減少傾向となっています。生産年齢人口や労働力人口のそれぞれが減少傾向にあることで、働き手となる人の数が少なくなっていることが分かります。

 その中では、これまでのように新卒社員を多く採用して人員を増やすといった経営方法が難しいものになってきているでしょう。そのため、人を増やして労働力を確保するといった方法から、現在の従業員の生産性を向上するといった方法への変更が求められています。タレントマネジメントは現在の従業員が活躍できる環境をつくる方法でもあるため、注目されています。

経済のグローバル化

 現在は国内での市場だけではなく、世界規模の市場で企業同士の競争が行われています。国内の他企業の動向だけではなく、世界中の企業がどのような商品・サービスを開発・提供しているのかについても把握して、それよりもお客様に選ばれるものを提供することが求められています。

 その中では、時代の流行に合わせて、常に新しいアイデアや商品・サービスを生み出すことが必要となっており、それを可能にする組織づくりが重要です。そのため、従来の終身雇用・年功序列の雇用体系ではなく、より流動的で運動神経が良くなる組織体制をつくるために、タレントマネジメントのような手法が必要です。

働き方の変化

 近年は働き方改革の推進のように、これまでとは異なる働き方をすることが求められています。多様な働き方へのニーズや、長時間労働の是正など、その目的は様々なものではありますが、企業としてはより柔軟な働き方を従業員に対して提供することが大切になってきています。

 一方で、単純に労働時間を短くするだけでは、組織成果をうまく創出できずに、かえって従業員の負担を増やしてしまう結果になってしまう可能性があります。生産性を高めて働き方の柔軟性を向上するためには、タレントマネジメントのように従業員の育成の適正化や人材配置の最適化などを行うことが必要です。


タレントマネジメントの目的

 では、なぜタレントマネジメントを行うのでしょうか。タレントマネジメントを行う目的として、様々なことが挙げられます。ここでは、タレントマネジメントを行う目的の中で代表的なものをご紹介します。

経営目標の達成

 タレントマネジメントを行う目的として、経営目標の達成が挙げられます。タレントマネジメントを行うことで、ミッションや経営理念の実現、事業規模の拡大といった目標を達成することを目指しています。タレントマネジメントはあくまで手段であるため、それを行うことは目的ではありません。あくまで経営目標を達成するために、タレントマネジメントが活用されています。

採用強化

 採用を強化することも、タレントマネジメントの目的として挙げられます。経営目標を達成するためには、事業の運営に必要である人材を確保する必要があります。社内で育成することもできますが、外部の視点を持った人材を採用することで、事業の成長スピードを向上することができます。タレントマネジメントを行うことで、どのような人材が必要であり、どう採用すれば良いのかが分かるようになるでしょう。

人材の育成

 タレントマネジメントを行う目的として、人材の育成につながることも挙げられます。タレントマネジメントでは、従業員のスキルや能力を把握することができるため、どのような育成を行えば良いのかを検討することができます。事業を成長させるためにはどのような人材が必要になるのかについて考えた上で、タレントマネジメントを行うことでより効果的な育成を行うことができるでしょう。

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適材適所の人材配置

 適材適所の人材配置をすることも、タレントマネジメントの目的として挙げられます。経営目標を達成するためには、1人1人のスキルアップだけではなく、どのようなフォーメーションやチームをつくるのかといった点も重要な要素となります。タレントマネジメントでは、それぞれの従業員の特性やスキルなどを把握した上で人材配置を検討することができるため、適材適所の配置を行うことができます。

人材の定着・流出の防止

 タレントマネジメントは、人材の定着や人材流出の防止にも役立ちます。採用した人材に長い期間活躍してもらうことで、より経験を積んでスキルアップをしてもらうだけではなく、社内に多くのナレッジを残すことができるようになります。タレントマネジメントを行うことで、それぞれの従業員のモチベーションのタイプや特性などを把握して、適切な関わり方をすることができます。

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企業におけるタレントマネジメントの2つのアプローチ

 企業におけるタレントマネジメントには、包括的なものと排他的なものの2つのアプローチがあります。それぞれのアプローチは、特にタレントマネジメントを誰を対象にして行うのかといった、ターゲットの違いがあります。タレントマネジメントのアプローチの種類を把握しておくことで、自社での活用に役立てることができるため、確認しておきましょう。

包括的アプローチ:全社員向け

 包括的アプローチは、タレントマネジメントのターゲットを全社員とするアプローチのことを指します。つまり、タレントマネジメントを企業として全社員に対して行うことを意味しています。包括的アプローチでは、新入社員から経営幹部といった幅広い層にまでタレントマネジメントを行うことになります。

 包括的アプローチでは、場合によっては正社員だけではなくアルバイトやパート社員までタレントマネジメントのターゲットとして、広い範囲でマネジメントを行います。包括的アプローチを行うことで、社員の適材適所での配置を行うことができるようになります。

 社員1人1人のスキルや能力に加えて、モチベーションのタイプや志向性といったことを把握することで、より活躍できる環境づくりを行うことができるため、配置の最適化だけではなく働きやすさの向上を図ることができるでしょう。これにより、企業として持つポテンシャルを底上げして、事業の成長を促すことができます。

排他的アプローチ:特定の人材向け

 包括的アプローチがタレントマネジメントのターゲットを全社員にしているのに対して、排他的アプローチは特定の人材、特に幹部候補やプロフェッショナル人材にターゲットを絞ってマネジメントを行います。

 排他的アプローチを行うことで、高いスキルや専門性を持っている人材にさらに成長してもらい、キャリアアップを促すことができます。全社員をターゲットにするのではなく、絞ったターゲットに対するタレントマネジメントを行うことで、より企業経営にダイレクトに影響する課題に対してスピーディーにアプローチをすることができます。

 ただし、包括的アプローチと排他的アプローチのどちらが良いかということではないことに注意しておきましょう。包括的アプローチを採用すれば、多様な働き方に対して対応しつつ、全体の配置や育成を最適なものにすることができます。一方で、排他的アプローチを採用すれば経営の旗振りをする人材や自社の競争優位性を高める人材の活躍をより促進することができます。

 どちらかが正しいというわけではなく、現在置かれている状況に応じて、2つのアプローチを使い分けていくことが大切です。


タレントマネジメントの効果

 タレントマネジメントを活用することで、どのような効果があるのでしょうか。タレントマネジメントによる効果を把握しておくことで、自社で活用した際にどのような効果を生み出せたのかを検証することができます。ここでは、主なタレントマネジメントの効果についてご紹介します。

エンゲージメント向上

 タレントマネジメントを活用する効果として、エンゲージメントの向上が挙げられます。エンゲージメントとは、企業と従業員の間での相互理解度合いや相思相愛度合いを指すものです。エンゲージメントが向上することで、労働生産性の向上や離職率の低下といった効果につながります。

 タレントマネジメントを行うことで、それぞれの従業員の特性やタイプに合わせて関わり方を変えることができるため、日々の業務の中でできる喜びや、組織への貢献感を得やすくなり、結果として企業に対する信頼度が高まります。

能力向上

 タレントマネジメントを行うことで、従業員の能力の向上を図ることができます。タレントマネジメントにより、企業が優秀な人材を確保しようといった動きが多くなることで、従業員自体も成長や貢献に対する姿勢が良くなることが考えられます。その結果、能力やスキルの向上に対する取り組みが増えていき、従業員のスキルアップを行うことができるようになります。

 また、それぞれのスキルや特性に合わせた育成を行うことができるようになるため、より効果的な育成を実施できるようになることも、タレントマネジメントの効果だと言えるでしょう。

顧客満足度向上

 タレントマネジメントを行うことで、顧客満足度が向上するといった効果が期待できます。タレントマネジメントを行い、人材育成の効果を向上しつつ、最適な人材配置を行うことで、より顧客に対しての商品・サービス提供のクオリティを向上することができるようになります。また、従業員自身が仕事に対して行うコミットメントも強くなる傾向があるため、顧客との関係性をより良いものにできると言えます。

採用・育成コストの削減

 採用やその後の育成にかかるコストを削減できるということも、タレントマネジメントを行う効果です。タレントマネジメントを行うことで、外部から人材を採用し続けるだけではなく、現在在籍している従業員の能力や意欲の向上を行うことができます。昨今の労働市場の変化に伴い、プロフェッショナル人材の採用による確保はますます困難になっています。そのため、新しく人材を採用するためのコストを抑えながら人材の確保をすることができます。

 また、社内の人材を育成して配置変更を行うことで、外部から来た人よりも組織の風土や雰囲気に馴染みやすくできるといった点もメリットとなります。会社の理念に共感している人材を育成することで、結果として、人材育成にかける時間やコストについても削減することができるでしょう。


タレントマネジメントシステムとは

 タレントマネジメントを行うために役立つものとして、タレントマネジメントシステムがあります。タレントマネジメントシステムでは、従業員の基本的な情報や保有している能力、これまで培ってきた経験などの情報をデータ化して、一元管理するシステムのことを指します。

 タレントマネジメントシステムを活用することで、以下のようなことができるようになります。

■従業員のデータベース構築
 タレントマネジメントシステムを活用することで、従業員のデータを一元管理する仕組みを構築することができます。従業員がどのような能力や特性を持っているのかについて一元的に把握することができると、人材育成やモチベーション向上へのアプローチが行いやすくなります。

■目標や実績の管理
 タレントマネジメントシステムは、目標や実績の管理にも役立てることができます。それぞれの従業員がどのような目標を設定しており、現在どのようなパフォーマンスを発揮しているのかについて管理することで、適切な評価の実施や達成に向けたサポートを行うことができます。

■人員計画の管理
 タレントマネジメントシステムを活用することで、会社の人員計画を管理することができます。部署や職種などの属性ごとに、どのような人材がいるのかを把握することで、今後どのような組織体制にするのかを検討する材料にすることができるでしょう。


タレントマネジメントの導入ステップ

 では、実際にタレントマネジメントを導入するためには、どのようなことを行えば良いのでしょうか。タレントマネジメントを導入するためには、以下のようなステップを踏むことが大切です。それぞれの内容について、確認しておきましょう。

タレントマネジメントの目的を明確にする

 タレントマネジメントを導入するためには、まずは何のためにタレントマネジメントを行うのかといった目的を明確にすることが大切です。目的が明確になっていない場合には、タレントマネジメントを行っても、その効果を発揮することができないとともに、どのような効果をもって成功していると評価することができなくなります。

 会社としてどのような姿や状態を目指すのかといったミッションやビジョンを明確にするとともに、どのようにそれを実現するのかといった経営戦略をまずは明らかにしましょう。その上で、自社でどのような人材が必要かについてや、どのような組織体制が必要かについてなどの人事戦略の策定を行います。

人材の情報の見える化を行う

 タレントマネジメントを行う目的が明確になった後には、人材の情報を収集して、その情報を見えるようにします。人材の情報を見えるようにすることで、自社にどのような人材が存在しており、どのような人材が不足しているのかについて把握することができます。

 人材の情報を収集する際には、氏名や社員番号、部署、職種、社歴といった基本的な情報に加えて、保有しているスキルやそれまで培ってきた経験といったものについても収集します。また、業務面でのスキルや能力だけでなく、モチベーションのタイプや特性、志向性といったことについても情報を収集しておくことで、適切な関わり方やエンゲージメント向上への仕掛けを行いやすくなります。

タレントの分類・特定を行う

 人材のデータを収集した後には、タレントの分類を行います。タレントの分類とは、従業員が保有しているスキルや能力、モチベーションのタイプごとにそれぞれグループをつくり、従業員を適するグループに分類することを指します。特に、従業員の数が多くなってくると、1人1人のデータをそれぞれ確認することが難しくなります。そのため、グループをつくってそれぞれのグループに応じて育成や配置転換などを行うことで、効率を向上することができます。

 また、従業員の分類を行った後には、事業計画や人員計画に応じて育成や配置転換の対象となる従業員を特定します。従業員が持っているスキルや能力、経験などを確認した上で、適切な育成や配置転換を行いましょう。

採用・育成・配置の計画を立てて実行する

 従業員の情報を収集して、グループ分けを行った後には、それぞれのグループに応じて採用や育成、配置の計画を立てます。事業計画に応じてタレントのグループごとにどのような成長をしてほしいかを明確にして、育成の計画を策定します。

 この際に、そもそもの人員が足りていないグループがある場合には、外部からの採用を行うかどうかの検討を行います。また、余剰の人員が出るグループがある場合には、配置転換を検討して、他のグループの補填を行うことを検討します。

 計画を立てた後には、実際に実行に移します。実際に配置転換などを行う際には、従業員に対してしっかりとその目的や背景などを説明して、納得感が生まれるようにすることが大切です。

人事評価やレビューを行う

 しっかりと人事評価を行うことも、タレントマネジメントを導入するためには大切です。人事評価を行う際には、単なる点数をつける作業を行うのではなく、その人がしっかりと成長できるためのサポートを行うことができるような関わり方をします。

 また、人事評価を行った後には、従業員に対してフィードバックを行うことを忘れないようにしましょう。フィードバックを行わないまま、評価だけ伝えてしまうと、評価に対する納得感が薄れてしまい、モチベーションが低下する可能性があります。

 また、タレントマネジメントとして実施した計画についても、その効果がどうだったのかについてレビューを行います。事業成果や人材の成長、組織風土の変化など、多面的な要素があるため、それぞれ評価できるようにしましょう。

軌道修正を行う

 人事評価やレビューを行った結果、事業成果や人材の成長などで不十分な部分があった場合には、改めて採用や育成、配置についての軌道修正を行いましょう。タレントマネジメントは一度実施すれば終わりというわけではなく、各ステップを繰り返してより良いものにすることが大切です。

 軌道修正を行う際には、短期的な軌道修正と長期的な軌道修正をそれぞれ分けておくことが効果的です。短期的な軌道修正は、人材配置や人事評価、人材採用の変更などが当てはまります。一方で、長期的な軌道修正は育成計画や実施内容の変更などが当てはまります。

 PDCAを回し続けて、自社のタレントマネジメントとして最適な状態を見つけられるように、長い目で見ながら活動することをおすすめします。


タレントマネジメント導入の注意点

 ここまで、タレントマネジメントの目的や効果、導入の手順などについてご紹介してきました。タレントマネジメントを導入する際には、ステップを踏むだけではなく、いくつか注意するべきポイントがあります。ここでは、タレントマネジメントを導入する際の注意点についてご紹介します。

手段が目的化しないようにする

 タレントマネジメントの導入ステップでも言及しましたが、タレントマネジメントはあくまで経営目標を達成するための手段です。そのため、「タレントマネジメントをとりあえず行う」というような状態にならないように気をつけましょう。

 何を目的としてタレントマネジメントを行うのかといった、タレントマネジメントで実現したいことを明確にしておき、タレントマネジメントを行うことが目的にならないようにすることで、効果を発揮できるようになります。

日本的な雇用形態にこだわらない

タレントマネジメントを導入する際には、従来の日本型の雇用形態にこだわらないようにすることが大切です。日本型の雇用形態では、終身雇用や年功序列といった習慣が根付いており、「昇進するためには時間が必要」「ポストが空くまでは役割が与えられない」といったことが起こり得ます。

 日本型の雇用形態が根付いている場合には、それにこだわってしまうと、タレントマネジメントを効果的に行うことができません。抜擢人事をすれば良いというわけではありませんが、ある程度柔軟な人材活用を行うことができる風土をつくることも忘れないようにしましょう。

育成へのコミットメントを持つ

 タレントマネジメントを導入して、その効果を発揮するためには、人材育成に対するコミットメントを全社的に持つことが大切です。タレントマネジメントを行うことで、人材の情報を一元化し、その育成計画を立てやすくすることはできます。しかし、上司や周囲のメンバーが育成に対して積極的でない場合には、結果的に人材育成をうまく進めることができなくなってしまいます。

 上司は部下に指示をするだけの立場ではなく、部下の成長に責任を持つ立場であることを理解し、周囲も自分だけではなくチームの成長を促進するような関わり方をすることが大切です。


タレントマネジメントの導入事例

 タレントマネジメントを導入するためのステップや注意点などを理解した次には、実際にどのような事例があるのかについて把握しましょう。ここでは、実際にタレントマネジメントを導入している企業の事例について、いくつかご紹介します。

大手食品メーカーA社

 大手食品メーカーであるA社では、経営目標に紐づいた人事計画を立てて、タレントマネジメントを実施しています。同社では、タレントマネジメントを目的ではなく手段として活用しており、最終的には時価総額の向上を目標として設定しています。

 時価総額を向上するためには、株主や投資家といったステークホルダーに対して、長期的に良好な経営ができることを示す必要があります。特に、現在の経営層だけではなく、今後の経営を担う人材がいるかどうかについては、各ステークホルダーは注目している傾向があります。

 そこで、同社は長期的な事業戦略を実現するために、重要なポジションを担うことができる経営人材を6名増やすといった人事目標を立案しました。経営人材6名といった目標を達成するために、その候補となる経営人材候補を200名選抜できるようにするといった中間目標を立てており、その実現のために以下のようなアクションを実施しました。

■グローバルな経営人材を採用する
■現地の幹部社員を育成する
■経営人材のグローバルスキルを向上する

 タレントマネジメントを目的とするのではなく、しっかりと経営目標に紐づいた人事目標を策定し、具体的な計画を実行した好事例だと言えるでしょう。

アミューズメント企業B社

 メディア事業、アミューズメント事業をフランチャイズチェーンとして展開するB社についても、タレントマネジメントを活用している企業です。フランチャイズによる店舗展開系のビジネスを行っている同社にとって、店長のパフォーマンスが高いものであるのかどうかは、売上を左右する大きな要素です。

 店長のパフォーマンスを向上するとともに、店長候補となる人材をどれだけつくることができるかといったことは、事業の成長性に大きな影響を与えます。店長候補となる人材が少ない場合には、店舗を展開することができずに、売上や利益の向上を図ることができません。店舗をうまく運営して、地域の中で選ばれる存在にできる店長を増やすことで、売上やブランドイメージを向上することができます。

 以前から、アルバイトやパート社員の中から店長候補である社員を登用することに取り組んできた同社では、タレントマネジメントを導入することで以下のような適切な従業員情報の収集、店長としての適正の把握などを行っています。

■パフォーマンスの高い店長の特性を収集する
■アルバイト、パート社員の適性、意欲、スキルなどの情報を収集・更新する

 この取り組みにより、店長候補を検索できる仕組みを整えるとともに、各スタッフへのサポート体制を構築できるようにしました。

総合商社C社

 総合商社であるC社についても、タレントマネジメントを活用して従業員の成長を促進しています。同社はグループ経営を行っている会社であるため、それぞれの会社の経営を担う人材をどれだけ育てることができるかが重要となっています。特に、若手社員を経営領域に登用する方針をとっているため、若手社員をいかに即戦力化できるかどうかが重要な経営テーマとなります。

 一方で、元々が縦割りの組織運営を行っていることで、スピーディーな人材育成や登用が行いにくいといった状態があることにより、従来のマネジメント方法ではスピーディーな経営人材の育成が難しいといった課題を抱えていました。

 そこで、以下のようなタレントマネジメントを実施しました。

■人材のデータベースを構築して、全社の人材や組織の状態を見える化する
■人材の積極的な登用を行うために、人事評価の方法を変更する
■バラバラで管理していた人材の情報、人事評価、設定した目標などを一元的に管理できるようにする
■従業員それぞれが自分の描くキャリアプランについて、上司に共有する機会を設ける
■スキルや経験についての情報だけではなく、性格や特性、チームでの関係性などについても情報を蓄積する
■年次や職種だけに依らずに活躍できる環境をつくる

 結果として、若手社員が活躍できる機会を増やすとともに、従業員全体に対するサポートを行うことができるようになりました。


法人研修のことならリンクアカデミー

 昨今、労働市場や資本市場の大きな変化に伴い、人材の採用が困難になってきています。また、働く従業員の中でも、急な配置転換などにより働くモチベーションが下がっている方が多くいらっしゃいます。こういった変化に対応するためには、社内のタレントマネジメントや人材育成を、経営層が主体となり、戦略的に取り組んでいく姿勢が必要です。

 リンクアカデミーでは、組織で働く個人の皆様にできる喜びを提供し、働く意味であふれた社会を実現するための幅広いソリューションを展開しております。

 個々人のスキルを可視化する診断ツールや、レベルに合わせた研修コンテンツを設計しております。最適なタレントマネジメントや人材育成を行いたいと考えていらっしゃる方は、弊社コンテンツを是非ご確認下さい。

  課題別研修一覧 | 法人研修・IT研修ならリンクアカデミー 貴社の人事戦略を支援する研修プログラムがリンクアカデミーにはあります。 独自の診断サービスと幅広い形態での研修実績で貴社の問題を解決・支援いたします。 法人研修・IT研修ならリンクアカデミー


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タレントマネジメントに関するよくある質問

Q1:タレントマネジメントとは

A1:タレントマネジメントとは、従業員が持っているスキルや能力に関する情報を経営資源として考えて、採用や育成、人材配置などに活用することを指します。タレントとは、「才能」や「素質」という意味を持つ「talent」からきている言葉であり、タレントマネジメントにおいては「才能を持つ人」といった意味で使われることが多いようです。

 企業ごとにタレントマネジメントの実施内容は異なりますが、タレントマネジメントは人事戦略全般に関わるものであるため、人材に関わることであればタレントマネジメントが関係します。そのため、「この施策をやっているからタレントマネジメントを行っている」といった決まったものではないというのが特徴です。

Q2:タレントマネジメントの目的は

A2:タレントマネジメントを行う目的として、以下のようなものが挙げられます。

■経営目標の達成
■採用強化
■人材の育成
■適材適所の人材配置
■人材の定着・流出の防止

Q3:タレントマネジメントシステムでは何ができる

A3:タレントマネジメントシステムを活用することで、以下のようなことができるようになります。

■従業員のデータベース構築
 従業員がどのような能力や特性を持っているのかについて一元的に把握することができると、人材育成やモチベーション向上へのアプローチが行いやすくなります。

■目標や実績の管理
 それぞれの従業員がどのような目標を設定しており、現在どのようなパフォーマンスを発揮しているのかについて管理することで、適切な評価の実施や達成に向けたサポートを行うことができます。

■人員計画の管理
 部署や職種などの属性ごとに、どのような人材がいるのかを把握することで、今後どのような組織体制にするのかを検討する材料にすることができるでしょう。


まとめ

 タレントマネジメントとは、従業員のスキルや能力、特性などについてのデータを見える化して、人材採用や育成、配置などに活用することを指します。タレントマネジメントを行うことで、エンゲージメントの向上や従業員の能力向上などを実現することができます。タレントマネジメントを行うためには、手段が目的化しないように気をつけることが大切であり、経営目標と人事目標をしっかりと紐付けて、タレントマネジメントの計画を立てることが重要です。

稲冨 健太
稲冨 健太
佐賀県出身。名古屋大学理学研究科にて物理を専攻。「伝統工芸」や「ものづくり」を応援したいという想いで、組織コンサルティング会社に就職し理念浸透・人事制度設計・人材育成・マネジメントなどに従事。独立後、中小・ベンチャー企業へのコンサルティングや商品開発の経験を基に精力的にライティング活動を実施。

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