ピグマリオン効果とは?定義・ビジネスやマネジメントでの活用方法を解説
目次[非表示]
- 1.ピグマリオン効果とは
- 2.「ピグマリオン効果」の由来
- 3.ピグマリオン効果の心理学実験
- 3.1.ネズミを使用した実験
- 3.2.小学校での実験
- 4.ピグマリオン効果と他の心理的行動の違い
- 4.1.ゴーレム効果との違い
- 4.2.ハロー効果との違い
- 4.3.ホーソン効果との違い
- 5.ピグマリオン効果のメリット
- 6.ピグマリオン効果のデメリット
- 7.ビジネス・マネジメントにおいてピグマリオン効果を活用する方法・例
- 7.1.裁量を与える
- 7.2.具体的な期待を伝える
- 7.3.成功体験を積めるようにする
- 7.4.成果だけではなく行動も評価する
- 7.5.過剰な期待をしないようにする
- 7.6.納得感のある評価制度を構築する
- 8.ピグマリオン効果を活用する際の注意点
- 9.人材育成ならリンクアカデミーの企業研修
- 10.リンクアカデミーの研修導入事例
- 11.ピグマリオン効果に関するよくある質問
- 12.まとめ
多くの企業では、人材育成に取り組んでおり、様々な理論や育成体系を学んでいます。その中の1つとして、ピグマリオン効果があります。ピグマリオン効果を活用することで、部下はその期待に応えようとして、仕事に対するモチベーションが向上することが期待できます。本記事では、そんなピグマリオン効果について、その定義や活用方法についてご紹介します。
ピグマリオン効果とは
ピグマリオン効果とは、他者から期待を受けることで仕事の成果が向上したり、成績が上がったりする効果のことを指します。ピグマリオン効果は心理効果であり、他にはローゼンタール効果や教師期待効果といった呼ばれ方をしています。ピグマリオン効果は、アメリカの心理学者であるロバート・ローゼンタールとフォードにより提唱された心理効果です。
2名が行った実験により提唱されたもののため、その実験の再現性や結論に対する批判が生じることがありますが、教育における理論として現在でも知られています。特に、ピグマリオン効果は対象者が自らが学習するといった視点ではなく、期待によりその成果や成績が上がるといった視点であることに対して、現在も議論が行われています。
「ピグマリオン効果」の由来
ピグマリオン効果という言葉は、以下のようなギリシア神話の物語に由来しています。
昔ピグマリオンという名前の王様がいました。ピグマリオンは彫刻で女性像を彫り上げました。その女性像があまりにも美しかったために、ピグマリオンは女性像に心を奪われて恋をしてしまいました。ピグマリオンは、女性像が本物の女性に変わってくれないかといった願いを持っていました。すると、その姿を見ていた神様が女性像に対して生命を吹き込みました。その結果、ピグマリオンはその女性と結婚することができました。
ピグマリオン効果は、この物語のように、「相手に対して期待をかけることで良い結果につながる」といった考え方をもとにしています。
ピグマリオン効果の心理学実験
ピグマリオン効果は、いくつかの心理学実験によりその有効性が確かめられています。ここでは、代表的な実験である「ネズミを使用した実験」と「小学校での実験」についてご紹介します。
ネズミを使用した実験
ネズミを使用した実験は、アメリカの心理学者であるロバート・ローゼンタールとフォードが1963年に行った心理学実験です。ローゼンタールとフォードは大学生の被験者を2つのグループに分けて、ネズミを用いた迷路実験を行いました。実際には個体差のないネズミをそれぞれに分けて渡しました。そして一方のグループには「このネズミはよく訓練された賢いネズミです」と伝え、もう一方のグループには「このネズミはあまり訓練されていないネズミです」と伝えました。
その結果、迷路実験の結果は同じになるはずが、「訓練されたネズミ」と伝えられたネズミの方が良い結果になるといったことが起こりました。また、このグループの方が一方よりもネズミを丁寧に扱っていたということも分かっています。
小学校での実験
ピグマリオン効果は教育現場でもその効果が認められたといった例があります。サンフランシスコの小学校で1964年に行われた知能テストでは、テストの際に学級担任に対して「今後数ヶ月間の間で成績が向上する生徒を抽出するための知能テストです」といった旨のことを伝えました。
そして、テスト後にはその結果とは関係なく無作為にピックアップした生徒の名前を見せて、「この生徒たちが今後成績が向上する生徒です」といったことを伝えました。その結果、学級担任に対して「成績が今後向上する」と伝えた生徒の成績は実際に向上していきました。
対象の生徒に対して期待がこもった目で関わったり、生徒自身も自分が期待されていることを意識したりといった要因が、成績向上につながったと考えられます。
ピグマリオン効果と他の心理的行動の違い
ピグマリオン効果とともに知られている心理効果として、「ゴーレム効果」や「ハロー効果」、「ホーソン効果」といったものがあります。これらとピグマリオン効果の違いについて把握しておくことで、よりピグマリオン効果についての理解を深めることができます。それぞれの特徴や違いについて確認しておきましょう。
ゴーレム効果との違い
ゴーレム効果とは、ピグマリオン効果の逆とも言える心理効果です。ピグマリオン効果が期待に対して結果が変わるといったことを示しているものであるのに対して、ゴーレム効果では期待をしないことで結果が変わるといったことを示しています。
例えば、以下のようなことがゴーレム効果の例として挙げられます。
■特定の人物に対して悪い印象を持って関わった結果、本当にその人にとって悪い影響を与える人になる
■教師が生徒のことを良くない生徒であると思って接した結果、本当にその生徒の成績が下がることがある
このような結果が生まれる原因としては、以下のようなものが考えられます。
■相手に対して与えている悪い印象が、良い印象を打ち消す
■成績が上がらない、良い生徒ではないといった期待の低さがその本人にも伝わってしまい、実際に成績の低下を招く
ピグマリオン効果が、期待に対して結果が向上・改善するといったプラスの連鎖であるのに対して、ゴーレム効果は期待の低さが結果の低迷を招くといったマイナスの連鎖であると言えるでしょう。
ハロー効果との違い
ハロー効果も、ピグマリオン効果とともに知られている心理効果です。ハロー効果とは、相手を評価する際に、特徴的なことに引きずられるように他の評価についてもその結果が変わるといった現象のことを指します。
ハロー効果は、アメリカの心理学者であるエドワード・L・ソーン大工が提唱したものであり、後光効果や光背効果とも呼ばれています。ハロー効果の「ハロー」とは、西洋絵画の宗教画にある成人の頭の上にある光の輪のことを指しており、その後光が差す印象で全体に対する評価も変わるといったことに由来しています。
ハロー効果とは、相手の見た目や肩書きなどによって全体の評価が上がる「ポジティブ・ハロー効果」と、相手への評価が下がる「ネガティブ・ハロー効果」があります。
ハロー効果が生じる要因としては、以下のようなものが挙げられます。
■物事を一方向的な面から判断することで、早とちりに当たる決断をしてしまう
■遺伝的に受け継がれている
人事評価ではハロー効果に気をつけて評価をするべきであるといったことが言われており、ハロー効果はピグマリオン効果とは異なり気をつけるべき効果であるとも言えます。
ホーソン効果との違い
ホーソン効果は、ピグマリオン効果と似ている効果として挙げられます。ホーソン効果は、他者からの期待を受けることで、成果や成績が向上するといった効果です。ホーソン効果は、アメリカのウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場で行われた実験からその名前がつけられました。実験内容としては、物理的な労働条件や経済的な条件よりも、「注目されている」といった意識の方が生産性を向上させるといった結果となっています。
ピグマリオン実験が、他者からの期待によって成果や成績が向上するといった効果であるのに対して、ホーソン効果は他者からの注目や関心によって成果や成績が向上するといった類似点があります。
ホーソン効果は、他者からの注目や関心といった、いわゆる承認欲求がその人のパフォーマンスに影響するといったことから、マズローの欲求階層説とも親和性があると言われています。
ピグマリオン効果のメリット
ピグマリオン効果を活用するメリットとして、ビジネスシーンにおいて人材育成の効果を高めるといったことがあります。ピグマリオン効果を活用することで、部下に対して期待をかけて、その結果仕事のクオリティが向上したり、成長スピードが上がったりするといったことが望めます。
昨今、DX化という言葉がバズワードとして取り上げられるように、時代の変化と共に事業が変化し、個人に求められるスキルもITスキルやデジタルスキルといったように変化をしています。そのため、企業成長のためには社員の成長が必須となり、成長を促す上でもピグマリオン効果は適切に活用すべきなのです。
ピグマリオン効果を上手く活用するためには、部下に対して大きな期待を持って関わることが大切です。期待を持って関わることで、相手は「自分は期待されている」といった意識を持って、目の前のことに対するモチベーションが高くなることが期待できます。そのため、部下がミスをしてしまった時には、それを責めるだけではなくそれが成長の機会であると捉えて、それだけで評価を下げないようにすることをおすすめします。
ピグマリオン効果のデメリット
ピグマリオン効果を活用する際には、気をつけるべき点もあります。それは、ピグマリオン効果だけに頼りすぎてはいけないということです。ピグマリオン効果は使いやすい心理効果である反面、ピグマリオン効果を無批判に信じすぎてしまうと正しい育成が行えないといったことがあります。
日常的に部下に対して期待をかけることは大切ですが、期待をかけるだけでは効果的な成長にはつながらない可能性があります。漠然とした期待をかけるだけではなく、相手の課題を解決するためのアドバイスやフィードバックなどを与えなければ、結果的に部下の成長を促進することは難しくなってしまうでしょう。
行動を褒める際にも、どのようなポイントが良かったのかや今後どのような期待をしているのかといった、褒め方にも工夫をすることが必要です。
ビジネス・マネジメントにおいてピグマリオン効果を活用する方法・例
ビジネスやマネジメントにおいて、ピグマリオン効果を活用するためにはいくつかの方法があります。ピグマリオン効果を活用するための方法を把握しておくことで、育成などに活かすことができます。ここでは、ピグマリオン効果を有効活用するための方法をご紹介します。
裁量を与える
ピグマリオン効果を活用するためには、部下に対してある程度の裁量を与えることが有効です。ピグマリオン効果は、期待をかけるだけではなく実際の裁量を与えることで、よりその効果を強めることができます。上司から部下に対して裁量を与えることで、実際に責任や権限を任されているといった実感が湧きやすくなります。裁量を与えてその範囲の中で自分で意思決定を行う機会を生み出すことで、部下はより自分にかけられている期待に応えようといった意識が強くなります。
具体的な期待を伝える
ピグマリオン効果を活用するためには、漠然とした期待ではなく具体的な期待を伝えるといったことが大切です。漠然とした期待では、実際にどのようなことを求められているのかが分かりづらくなってしまい、行動につながりにくくなることが考えられます。ピグマリオン効果を高めるためには、具体的にどのような状態になって欲しいのかを伝えて、その行動を要所要所で褒めることが大切です。適切な期待のかけ方をすることで、ピグマリオン効果を上手く活用することができるでしょう。
成功体験を積めるようにする
成功体験を積めるようにすることも、ピグマリオン効果を活用することも大切です。人のモチベーションは以下のような「目標の魅力」と「危機感」、「達成可能性」といったことで構成されていると言われています。
(参考:モチベーションの公式)
期待をかける過程では、目標の魅力を高めることができるとともに、納期や期限を区切ることで危機感も高めることができます。一方で、あまりにも高すぎる期待やゴール設定をしてしまうと、「やれそう」だと感じにくくなります。
まずは達成可能な課題を与えることで、「やれそう」といった意識を生み出すことが大切です。その上で、「できた」という成功体験を積み、新しいゴールの設定を行っていきましょう。
成果だけではなく行動も評価する
ピグマリオン効果の効果を高めるためには、成果だけではなく行動も評価することが大切です。仕事をする中では、目標に対して結果がどうであったのかといった面に目が向きがちですが、ピグマリオン効果を活用するためには、その行動に対しても評価を行いましょう。
部下がどのような行動をしているのかについても把握しておき、その行動の良い点や努力している点などについて褒めることが重要です。部下は自分の行動や能力が褒められたといった意識が芽生えて、自信がついてモチベーションを向上することができるでしょう。
過剰な期待をしないようにする
ピグマリオン効果を期待するあまりに、過剰な期待をしてしまうと逆効果になってしまうことがあります。期待があまりにも大きすぎると、自分がそれに応えられるイメージが湧かず、期待が大きなプレッシャーとなってしまう場合があるため、注意が必要です。
大きな期待をかける際には、どのような道筋でそれを実現するのかといった具体的なイメージを一緒につくり上げておくことが大切です。適切に期待をかけることで、ピグマリオン効果を上手く活用することができるでしょう。
納得感のある評価制度を構築する
ピグマリオン効果をより活用するためには、納得感のある評価制度を構築することが大切です。期待をかけられて努力をしたのに、それに対して納得感がある評価が得られない場合には、部下のモチベーションは下がってしまいます。
納得感が生まれるような評価制度を構築することで、よりピグマリオン効果を活用して部下の成長を促進することができるでしょう。
ピグマリオン効果を活用する際の注意点
ピグマリオン効果を活用する際には、ストレッチゾーンを意識した期待をかけるといった注意点があります。
人材育成の考え方の1つとして、「コンフォートゾーン・ストレッチゾーン・パニックゾーン」といった考え方があります。コンフォートゾーンとは、自分のできる範囲での期待がかけられており心地よさを感じる状態です。ストレッチゾーンとは、現状のままでは期待に応えることができないが、努力次第で期待に応えることができる状態です。パニックゾーンとは、あまりにも大きな期待をかけられすぎており、パニックに陥っている状態です。
コンフォートゾーンとパニックゾーンの期待をかけ続けていると、現場に甘んじたりパニックになったりといった状態になるため、育成の効果が高まらない可能性があります。
そのため育成側には、メンバーのストレッチゾーンがどこまでなのか、といったようなスキルの可視化が出来ている状態が望ましいです。
人材育成ならリンクアカデミーの企業研修
ピグマリオン効果は、他者からの期待によって成果や成績が向上する心理効果です。そのため、ピグマリオン効果を用いた人材育成には、育成側の最適な能力把握と現場がある程度の肯定感を伴う必要があります。
昨今の時代の変化に沿った成長を組織全体で推進していくためにも、DXというトレンドに合わせ、育成側が現場のITスキルを理解し、現場の成長実感も共に醸成するような働きかけをしてみるのはいかがでしょうか。
リンクアカデミーは「あなたのキャリアに、本気のパートナーを」をミッションに掲げて個人が「学び」を通じ、できる喜びを感じ、自らのキャリアを磨き上げられる場を目指しています。
そのために
・㈱アビバが提供してきたパソコンスキルの講座提供
・大栄教育システム㈱が提供してきた資格取得を支援する講座
・ディーンモルガン㈱が提供してきた「ロゼッタストーン・ラーニングセンター」のマンツーマン英会話レッスン
といったキャリアアップに関するサービスをフルラインナップで展開してきました。
この実績と経験を活かして、
・内定者・新入社員の育成
・生産性向上
・営業力強化
・DX推進
といった幅広い課題に対してもソリューションを提供しています。
リンクアカデミーの研修導入事例
・ネットワンシステムズ株式会社様
・東京建物株式会社様
・株式会社フロムエージャパン様
・株式会社トーコン様
ピグマリオン効果に関するよくある質問
Q1:ピグマリオン効果のデメリットは
A1:ピグマリオン効果を活用する際には、気をつけるべき点もあります。それは、ピグマリオン効果だけに頼りすぎてはいけないということです。ピグマリオン効果は使いやすい心理効果である反面、ピグマリオン効果を無批判に信じすぎてしまうと正しい育成が行えないといったことがあります。
日常的に部下に対して期待をかけることは大切ですが、期待をかけるだけでは効果的な成長にはつながらない可能性があります。漠然とした期待をかけるだけではなく、相手の課題を解決するためのアドバイスやフィードバックなどを与えなければ、結果的に部下の成長を促進することは難しくなってしまうでしょう。
行動を褒める際にも、どのようなポイントが良かったのかや今後どのような期待をしているのかといった、褒め方にも工夫をすることが必要です。
Q2:ホーソン効果とピグマリオン効果の違いは
A2:ホーソン効果は、他者からの期待を受けることで、成果や成績が向上するといった効果です。ホーソン効果は、アメリカのウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場で行われた実験からその名前がつけられました。実験内容としては、物理的な労働条件や経済的な条件よりも、「注目されている」といった意識の方が生産性を向上させるといった結果となっています。
ピグマリオン実験が、他者からの期待によって成果や成績が向上するといった効果であるのに対して、ホーソン効果は他者からの注目や関心によって成果や成績が向上するといった類似点があります。
Q3:ピグマリオン効果の具体例は
A3:ピグマリオン効果の具体例として、以下のようなものが挙げられます。
■実際に裁量を与えて期待を示す
■適切なレベルの課題を与える
■過剰な期待をかけすぎないようにする
■コミュニケーションをとるようにして、行動を評価できるようにする
まとめ
ピグマリオン効果を活用することで、人材育成の効果を高めることが期待できます。ピグマリオン効果では、他者に対して期待をかけることで、相手はその期待によって成果や成績を向上するといった効果が期待できます。ピグマリオン効果を活用するためには、相手に対して実際に裁量を与えたり、過剰な期待をかけすぎないといったポイントに注意することが必要です。ピグマリオン効果を上手く活用して、自社の人材育成を促進するようにしましょう。